【完結】インキュバスな彼

小波0073

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最終章 なんとか卒業できそうです

2.

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 なにしろ今まで見ていたものは表情もわからなかったのだ。ドアップでせまる雄基の顔は思っている事も丸わかりで、彼の視線の動きからどこを見ているのかもわかってしまう。
 みのりはじたばたと手足を動かし、雄基の腕のすきまから逃げた。ベッドの上で後ずさる。

「ううう、ちょっ、ちょっと待って! なんか夢の中と違ってすっごく恥ずかしいんだけど!」

(夢だったんだから当たり前だが)現実感のない今までと異なり、今いる場所は彼の部屋だ。舞台も小道具もばっちりだし、お相手は雑すぎる設定のあやしい黒い影なんかじゃない。昔からよく知っている、名門校の制服を着た同級生の立派な男子だ。意識しない方がどうかしている。

「だ、だいたいよく考えたらずっと走ってたから汗くさいし──今日の下着はかわいくないよ、全然おそろいでもないし‼」

 言い訳しながら距離を取るが、逃げ場がなくなり壁に背をつく。
 この期におよんで珍しく往生際の悪いみのりに、雄基が楽しげな顔で笑った。

「いまさら何言ってんだ。早くしないとまにあわないかもしれないだろ。協力するって言ったよな?」

 そう言いながら距離をつめる。後ろの壁に手をつかれ、周囲を腕に囲まれた。雄基の熱っぽいまなざしがすぐ目の前にせまっていた。

「あ……」

 みのりは強く肩をちぢめた。自分でも信じられないくらいに心臓がバクバク言っていて、なんだか頭がくらくらした。
 雄基の右手が頬にふれ、再び顔が近づいた。ぎゅっとまぶたをかたく閉じると笑った息が口にかかる。

「そんなに緊張しなくても。大丈夫、いつもと同じだ」

 ささやく言葉が唇にふれた。
 ついばむようなキスをしながら、雄基の大きな手のひらがみのりのブラウスに乗せられる。軽く胸のふくらみをさぐって、あまりかざりけがない制服の唯一のポイントであるリボンをさわった。ごそごそリボンをはずしていたが、なれない手つきでキスをしながら服を脱がすことをあきらめたらしく、顔を離す。

「──これ、けっこう大変だな。いろいろやりながら服を脱がすのって、思ったよりむずかしい」

 真面目な口調でそう言われ、一瞬吹き出しそうになる。
 雄基がむっとした表情で続けた。

「夢では服なんて着てなかっただろ。こんな経験、初めてだし」

 すねたような彼の答えに少しだけみのりの緊張がほぐれた。
 後はひたすらだまったままで雄基にボタンをはずされて、ブラウスやスカートを脱がされる。まるで小さな子供のように他人に服を脱がされることに、おちつかなくてもじもじした。最後にシンプルな白のブラジャーとピンクのショーツだけになる。

 ベッドの上に寝転がる下着姿のみのりを眺め、雄基がちょっと赤くなった。
 全裸は何度も(夢で)見ているはずなのだが、下着姿は見なれないためにどうやら新鮮だったらしい。
 何だか雄基が可愛くなって、みのりはそっと自分から彼の首へと腕を回した。雄基の体がびくっと震え、反射的に抱きしめて来る。

「一ノ瀬……!」

 服を通してもわかる体が彼が影だと物語り、あの夢の中と同様にみのりの思いを呼び起こした。彼のシャツから立ち上る汗の匂いを感じ取る。なぜか体が反応し、雄基がふれている箇所が急に敏感になってしまう。
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