【完結】インキュバスな彼

小波0073

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第二章 バレた後

19.

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 向かった先は元町だった。

 表通りの角を曲がると、何だか導かれるような形でせまい路地へとたどり着く。いるかどうかは賭けだったのだが老婆はすぐに見つかった。
 前に小さな台を出し、ちょこんと丸椅子にすわっている。深くかぶったストールのせいでその表情は見えなかったが、みのりの存在に気づいたらしく、わずかに顔を上げてみせた。

「──おやおや。今度はお嬢ちゃんかい」
「お婆さん、お願い、これあげる! だから教えて、あの夢の話‼」

 老婆の前におかれた台のせまいスペースにかごを置く。どんと乗せられたアレンジのカラフルな色が台をかざった。淡いピンクやオレンジ、白の花々に彩られた台の上が、一気に明るくはなやかになる。
 思ってもみなかったプレゼントに、どうやら老婆は目を丸くしているらしい。かまわずみのりは言葉を続けた。

「雄基君、何か隠してる。たぶん私に言えないことで、私に迷惑かけたくなくて一人でどうにかしようとしてる。──お婆さん、お願い! 雄基君に何したの」

 焦燥感に胸がざわめく。雄基に指輪を渡した相手をいたずらに責めるわけでなく、「お願い」をしに来たみのりは手みやげの花を押し出した。

「多分、ちょっとだけ何かがまちがっちゃったんだと思う。でなきゃあの雄基君があんなふうにはならないよ。夢の話にかかわることで、何か私が知らないことが……私に知られたくないことがあるんでしょ? それを教えて! お婆さん」

 あっけに取られたような様子で、老婆はストールの影からつぶやいた。

「……あのお兄さんも大概だねえ。あんたに指輪を使ったことがよっぽど後ろめたかったらしい。真面目すぎるのも困りもんだ」

 老婆はやれやれと首をふった。

「お兄さん、結局あんたにはあのことを伝えなかったんだね。ちゃんと説明したんだが。──『インキュバスの指輪』は、使った相手に自分の正体を知られると、リングが男のアレにはまって二度と取れなくなるんだよ。そのまま男の根元をしめて、立っても子種が出せなくなるのさ」
「……はっ?」

 老婆が放った衝撃の言葉に、聞いていたみのりは目が点になった。思わず情景を想像し、一気に顔が熱くなる。
 老婆は苦笑まじりに続けた。

「だから。リングがアレにはまって、二度と子種を出せなくなるんだ。男にとっては大変な事態だろ? リングをはずす方法はただ一つ。指輪を使った夢の相手と現実で性交することさ」

 みのりの口があんぐり開いた。
 なんてえげつない呪いだろう。なるほど、たしかに危険がともなう末恐ろしいアイテムだ。
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