【完結】インキュバスな彼

小波0073

文字の大きさ
上 下
37 / 81
第二章 バレた後

10.

しおりを挟む
 みのりが口元を引き下げると、雄基はしょんぼり肩を落とした。

「リアルで一ノ瀬に会った後、こんなこともうだめだとも思った。こんな、俺のズリネタみたいな夢につきあわせるなんて、考えただけで顔を合わせられなかった。けど、結局はもう一回使ったんだ。もしかしたらただの偶然で、勝手な自分の思い込みで夢を見たかもって考えたのもあったし……。それにやっぱりどうしても、また一ノ瀬に会いたくて」

 二度目にみのりに会った時、そわそわしていたうぶな影は雄基の本心だったのだろう。深く頭を落としてうつむき、雄基はぼそっとつぶやいた。

「それで、また同じことが起こった。偶然じゃない、一ノ瀬に会えたって、その時は本当にうれしかった。でも夢の中で一ノ瀬に、『お前は誰だ』とか、『どうしてこんなことになったんだ』とか聞かれて……。説明しようとは思ったんだ、一応。ちゃんと俺だってバラした上で、その場で謝ろうと思った。でも婆さんに言われたとおり、言葉も通じないみたいだった。話もできない状態で本当に困ったんだけど、一ノ瀬はわけがわからない中でも俺に優しくしてくれて……うれしかった」

 ふせた表情は見えなかったけれど、真っ赤になった両耳が雄基の動揺を示している。
 みのりは自分も恥ずかしくなって、もじもじと膝を動かした。あの時は子供か大型犬にでもなつかれたような気がしたが、実は知性も常識もある立派な同級生だったわけだ。

「後はもう、毎晩夢で一ノ瀬に会えるのが楽しみで。でもリアルで一ノ瀬に会うと、当たり前だけどいつもと同じで……。そう考えると落ちこんだ。夢ではあんなに……なのに、どうしてこうなるんだって自分でもずっと悶々としてたら、それが原因で現実の一ノ瀬に盛大にカン違いされた」

 顔を上げ、苦笑いする。「自分がみのりを嫌っている」──そう思われていたことに気づいた時はショックだったらしい。
 雄基はわずかに体を起こし、真正面からみのりを見た。

「夢で会えても本物と距離ができたら意味がない。そこまで行って、やっと気がついた。だけど、それでもまだ夢での関係がおしくて。やっぱりまた悶々として……今度は夢でも嫌われた」

 再び肩を落とした雄基に、みのりは何だか彼のことが気の毒にさえ思えてきた。その悄然たる風体は、夢でみのりが拒否した際の影そのものの姿だった。

「そりゃそうだよな。夢と本物と、両方とうまくやりたいなんて。そんな自分勝手なやつ、どっちでも嫌われて当然だ。──それで、リアルでもう一度やり直そうと考えて、覚悟を決めて告白したんだ」

 思いを振り切るような動作で雄基は決然と顔を上げ、再度みのりを見直した。

「告白した後、やっぱりどうしてもそっちの反応が気になって。最後のつもりで指輪を使って、話が聞けてふっきれた。今さら言いわけに聞こえるだろうけど、ちゃんと夢の話も言うつもりだった。リアルの方の一ノ瀬は全然様子が変わらないし、もしかして本当に俺だけが変な夢を見てたのかもしれない。でも一応、聞くだけ聞いてみようかと……もしそれで本当に同じ夢を見てたんだったら、今度こそ謝ろうと思ってた。でも、いざそっちから夢の話を切り出されたら、どうしていいかわからなくなって。結局最後まで俺だって全然気づいてなかったし、一瞬、このままただの夢だって押し切れるかもって考えた。だけどそうしたらあっさりバレて」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

処理中です...