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第二章 バレた後
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雄基の自宅は閑静な住宅街の奥にあり、このあたりでは一番広い敷地の大きな家だった。
両親は共働きで、一人息子を有名な私学に入れられる程度には裕福だ。みのりも場所は知っているし、子供の頃は母親と何度か入ったこともある。しかしさすがに家の中まで足をふみ入れるのは数年ぶりで、思った以上に緊張した。
リビングで話をするのかと思ったら、みのりの荷物を持ったまま、雄基は二階の自室までそのままずんずんと進んで行く。予想以上のきわどい事態にみのりの頬が引きつった。
──こんなの、まんまカモネギだ。
それとも「飛んで火にいる夏の虫」か。どっちの表現が合っているのか動かない頭で考えていると、雄基は部屋のドアを開けた。階段の途中でとまどっているみのりを見下ろしながら言う。
「一応ドアは開けておくから。まあ、気休めにもならないだろうけど。……リビングは掃除してないから、絶対に一ノ瀬に見せるなってお袋に言われてるんだ」
苦笑交じりに伝えられ、そう言えば彼の母親は片づけが苦手な方だったな、と思い出す。確か広かったリビングの半分が、彼女がついついポチったという通販のダンボール箱でうまっていた。
みのりはそこまで考えて、ふと疑問点に気がついた。
「おばさん、私がここに来るかもって知ってるわけ?」
「俺が話した。先生にも、昨日の教室の人達にも『ちゃんと二人で話し合え』って嫌になるくらい言われたから」
淡々とした彼の返答になんだか頭がくらくらする。
──やっぱり夜の生徒さん達に色々聞かれたんですね……。
案の定の展開に思わずため息がもれた。根掘り葉掘り聞かれた上で、恋愛相談にまで乗ってもらったらしい。
「で、おばさんにはなんて言われたの」
「同じだ。ちゃんと話し合えって。後は一応『責任を取れないようなことはするな』ってクギ刺された。──そんなのもう今さらだけどな」
皮肉気な目でつぶやいた雄基に、みのりは思わずどきっとした。本当に今さらながら、彼が何度も体を重ねた例の影だったと気づく。
いつも始めは遠慮がちなのに、タガが外れると強引なくらいに夜ごとみのりをむさぼった。どこか切なげで愛情深い影の印象と雄基が重なる。
いきなり襲いかかって来た大波のような恥じらいに、みのりは一気に赤面した。夢と現実はもちろん違うが体感したことは実にリアルだ。このまま彼の部屋へと入り、夢の中の時のように二人っきりになっていいものか、今改めて逡巡する。
もじもじしながらみのりはたずねた。
「あ、あ、あのう、そのー、ちょっと」
「何だ、またトイレか?」
「違うって‼ あのー、つまり雄基君、もちろん覚えてるんだよね? 夢の中で、私としたこと」
みのりが問いかけた内容に、雄基の目元が赤く染まった。露骨に顔をそむけながらもはっきりうなずいて言う。
「ああ。そっちは俺だって全然気づいてなかったけど。……夢で一ノ瀬に会えるけど、俺が誰だかはわからないし、こっちが何か言おうとしても伝わらないって話だった」
──夢で会える? けど伝わらない?
今までの疑問に迫る言葉にみのりの眉が深くよる。
雄基が小さく息をついた。
「とりあえず部屋の中に入ってこの荷物を置いていいか。一ノ瀬が嫌ならここで話すけど」
二人分の荷物を抱えた雄基の姿に気がついて、みのりは腹をくくるとうなずいた。
「いいよ。ちゃんと中で聞く。最初からちゃんと説明して」
雄基も真面目な顔でうなずき、みのりを部屋へと招き入れた。
両親は共働きで、一人息子を有名な私学に入れられる程度には裕福だ。みのりも場所は知っているし、子供の頃は母親と何度か入ったこともある。しかしさすがに家の中まで足をふみ入れるのは数年ぶりで、思った以上に緊張した。
リビングで話をするのかと思ったら、みのりの荷物を持ったまま、雄基は二階の自室までそのままずんずんと進んで行く。予想以上のきわどい事態にみのりの頬が引きつった。
──こんなの、まんまカモネギだ。
それとも「飛んで火にいる夏の虫」か。どっちの表現が合っているのか動かない頭で考えていると、雄基は部屋のドアを開けた。階段の途中でとまどっているみのりを見下ろしながら言う。
「一応ドアは開けておくから。まあ、気休めにもならないだろうけど。……リビングは掃除してないから、絶対に一ノ瀬に見せるなってお袋に言われてるんだ」
苦笑交じりに伝えられ、そう言えば彼の母親は片づけが苦手な方だったな、と思い出す。確か広かったリビングの半分が、彼女がついついポチったという通販のダンボール箱でうまっていた。
みのりはそこまで考えて、ふと疑問点に気がついた。
「おばさん、私がここに来るかもって知ってるわけ?」
「俺が話した。先生にも、昨日の教室の人達にも『ちゃんと二人で話し合え』って嫌になるくらい言われたから」
淡々とした彼の返答になんだか頭がくらくらする。
──やっぱり夜の生徒さん達に色々聞かれたんですね……。
案の定の展開に思わずため息がもれた。根掘り葉掘り聞かれた上で、恋愛相談にまで乗ってもらったらしい。
「で、おばさんにはなんて言われたの」
「同じだ。ちゃんと話し合えって。後は一応『責任を取れないようなことはするな』ってクギ刺された。──そんなのもう今さらだけどな」
皮肉気な目でつぶやいた雄基に、みのりは思わずどきっとした。本当に今さらながら、彼が何度も体を重ねた例の影だったと気づく。
いつも始めは遠慮がちなのに、タガが外れると強引なくらいに夜ごとみのりをむさぼった。どこか切なげで愛情深い影の印象と雄基が重なる。
いきなり襲いかかって来た大波のような恥じらいに、みのりは一気に赤面した。夢と現実はもちろん違うが体感したことは実にリアルだ。このまま彼の部屋へと入り、夢の中の時のように二人っきりになっていいものか、今改めて逡巡する。
もじもじしながらみのりはたずねた。
「あ、あ、あのう、そのー、ちょっと」
「何だ、またトイレか?」
「違うって‼ あのー、つまり雄基君、もちろん覚えてるんだよね? 夢の中で、私としたこと」
みのりが問いかけた内容に、雄基の目元が赤く染まった。露骨に顔をそむけながらもはっきりうなずいて言う。
「ああ。そっちは俺だって全然気づいてなかったけど。……夢で一ノ瀬に会えるけど、俺が誰だかはわからないし、こっちが何か言おうとしても伝わらないって話だった」
──夢で会える? けど伝わらない?
今までの疑問に迫る言葉にみのりの眉が深くよる。
雄基が小さく息をついた。
「とりあえず部屋の中に入ってこの荷物を置いていいか。一ノ瀬が嫌ならここで話すけど」
二人分の荷物を抱えた雄基の姿に気がついて、みのりは腹をくくるとうなずいた。
「いいよ。ちゃんと中で聞く。最初からちゃんと説明して」
雄基も真面目な顔でうなずき、みのりを部屋へと招き入れた。
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