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第一章 バレる前
18.
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沈黙が落ちた。
その場に硬直したままみのりは雄基の頭を見下ろして、最後に影と別れた時の情景を思い出していた。もちろん服は着ているものの、膝をついた彼のシルエットはあの時の影、そのものだ。
愕然としているみのりを見上げ、雄基はがっくり肩を落とした。
「もう、無理だな」
重い声と共にため息を吐き出す。そのままゆっくりと立ち上がり、雄基は改めてみのりを見た。頬をゆがめて口を開く。
「──ごめん。本当にごめん。どこから言えばいいのかわからないけど……でも」
悲壮なくらいの表情で、雄基はかすれ声を放った。
「俺、本当に……」
「えええええ‼ 本当に!?」
次の瞬間、思わずみのりが上げてしまった大声に、雄基はたじろいで耳をふさいだ。
「うそおおお!? あたし、雄基君のアレをさわったりにぎったり胸にはさんだり──」
「ばか、やめろっ‼」
みのりが続けた絶叫に雄基が真っ赤になりながら、あわててその口を押さえる。
大きな手のひらで鼻までふさがれ、みのりは息ができなくなった。ふがふがしながらもがいていると、やっと気づいたらしい雄基が動揺しながらも手を離す。
影そのままの腕力でみのりを押さえ込んだ雄基は、声を落として話を続けた。
「も……もうちょっと静かにしろ! 大体お前は恥じらいとかためらいとかが色々と──」
「ゆ、雄基君初めてだったんだよね!? なのにあんな大胆な」
みのりが重ねようとした言葉が再び手のひらで止められた。ゆでタコのようになった雄基がこめかみに強く青筋を立てる。
「まったくお前は本当に──」
「一体何をさわいでるの!」
ばんっと教室のドアが開けられ、店からかつみが現れた。眼鏡をかけたエプロン姿の鬼がずかずかと入って来る。
「もう生徒さん来ちゃってるわよ! 早く準備を」
乱入して来た師匠の姿にあわてて二人が体を離す。今までになかったおかしな空気に、大きく眉をつり上げていた眼鏡の奥の目が点になった。
「……あんた達、いつの間にそんな仲良くなったの」
「え、えええ、いやそれは‼」
あわてふためくみのりを尻目に、脇の雄基がはっきり答えた。
「俺が今、一ノ瀬に告白したんです。『好きだからつきあって欲しい』って」
かつみの眼鏡が鼻からずれた。
「……えっ?」
真剣そのものの彼の言葉に、その場の空気がフリーズする。みのりは彼の爆弾発言に、かつみは二人の急接近に親子ともどもそのままかたまる。
次の瞬間、爆発するような羞恥と共にみのりは叫んだ。
「ぎゃああああ‼ もう信じらんない、原雄基のばかっ‼」
雄基の横から飛びのいた後、ドアに向かって突進する。教室の前で待っていた結構な数のギャラリーにおののき、さらに動揺しながらもみのりは部屋へかけ上がった。
その場に硬直したままみのりは雄基の頭を見下ろして、最後に影と別れた時の情景を思い出していた。もちろん服は着ているものの、膝をついた彼のシルエットはあの時の影、そのものだ。
愕然としているみのりを見上げ、雄基はがっくり肩を落とした。
「もう、無理だな」
重い声と共にため息を吐き出す。そのままゆっくりと立ち上がり、雄基は改めてみのりを見た。頬をゆがめて口を開く。
「──ごめん。本当にごめん。どこから言えばいいのかわからないけど……でも」
悲壮なくらいの表情で、雄基はかすれ声を放った。
「俺、本当に……」
「えええええ‼ 本当に!?」
次の瞬間、思わずみのりが上げてしまった大声に、雄基はたじろいで耳をふさいだ。
「うそおおお!? あたし、雄基君のアレをさわったりにぎったり胸にはさんだり──」
「ばか、やめろっ‼」
みのりが続けた絶叫に雄基が真っ赤になりながら、あわててその口を押さえる。
大きな手のひらで鼻までふさがれ、みのりは息ができなくなった。ふがふがしながらもがいていると、やっと気づいたらしい雄基が動揺しながらも手を離す。
影そのままの腕力でみのりを押さえ込んだ雄基は、声を落として話を続けた。
「も……もうちょっと静かにしろ! 大体お前は恥じらいとかためらいとかが色々と──」
「ゆ、雄基君初めてだったんだよね!? なのにあんな大胆な」
みのりが重ねようとした言葉が再び手のひらで止められた。ゆでタコのようになった雄基がこめかみに強く青筋を立てる。
「まったくお前は本当に──」
「一体何をさわいでるの!」
ばんっと教室のドアが開けられ、店からかつみが現れた。眼鏡をかけたエプロン姿の鬼がずかずかと入って来る。
「もう生徒さん来ちゃってるわよ! 早く準備を」
乱入して来た師匠の姿にあわてて二人が体を離す。今までになかったおかしな空気に、大きく眉をつり上げていた眼鏡の奥の目が点になった。
「……あんた達、いつの間にそんな仲良くなったの」
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あわてふためくみのりを尻目に、脇の雄基がはっきり答えた。
「俺が今、一ノ瀬に告白したんです。『好きだからつきあって欲しい』って」
かつみの眼鏡が鼻からずれた。
「……えっ?」
真剣そのものの彼の言葉に、その場の空気がフリーズする。みのりは彼の爆弾発言に、かつみは二人の急接近に親子ともどもそのままかたまる。
次の瞬間、爆発するような羞恥と共にみのりは叫んだ。
「ぎゃああああ‼ もう信じらんない、原雄基のばかっ‼」
雄基の横から飛びのいた後、ドアに向かって突進する。教室の前で待っていた結構な数のギャラリーにおののき、さらに動揺しながらもみのりは部屋へかけ上がった。
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