【完結】インキュバスな彼

小波0073

文字の大きさ
上 下
25 / 81
第一章 バレる前

16.

しおりを挟む
「──え」

 思ってもみなかっただろう言葉に、雄基の瞳がまん丸くなった。そりゃそうだろうなあ、と思いつつ、自分が妙に冷静に観察していることに気づく。どうやら緊張を通り越し、ブチ切れて腹がすわったらしい。
 はあっとため息をついたみのりは肩をすくめてつぶやいた。

「なんかさ。最近欲求不満なのかもしれないんだけど、変な夢を見るんだよね」
「!」

 みのりが伝えた内容になぜか雄基がのけぞった。今までの余裕はどこへ行ったのか、大きく頬を引きつらせる。
 みのりは首をかしげながらも次の句を選びつつ言った。

「こんなの、男の子に話しちゃっていいのかよくわかんないんだけど……。夢で顔もわからない人とえっちなことをするんだよね。しかも一回だけじゃなくて、けっこう何回も続けてさ」

 多分真面目な雄基には想像もつかない世界だろう。見る見るうちに赤くなり、額に汗までにじませ始めた。

「そんな夢、今まで一度も見たことがなかったし、何回も続けて見るなんてやっぱり欲求不満かなあ。つまり今、自分がそういうことに興味があるってことなのかな。……どう思う?」

 みのりがわりと真剣に雄基の顔を見上げると、黙って話を聞いていた彼は露骨に視線を泳がせた。

「え……まあ、その……俺も、よくわからないけど──」

──そうだよねえ。

 みのりは深くうなずいた。彼は目線を上に向け、顔を合わせないようにして言った。

「だって、とりあえず夢なんだろ? とにかく、それはただの夢で……。それに、そのう──多分男は、そういう方が喜ぶと思う」

 どこか煮え切らない雄基の返事に、みのりはきょとんとして聞いた。

「そういう方って?」

 雄基は首筋をかきながら、低くぼそぼそとつぶやいた。

「だから。そういう──女の子の方が。少なくともエロいことに興味がないよりは、あるほうがうれしい……と、俺は思う」
「え? 雄基君、そういうことに興味あるの?」

 みのりが思わずたずねると、雄基はますます顔を赤くした。

「当たり前だろ。ない方がおかしい。俺だって一応男だぞ。それに……」

 思い切ったように目線をもどして真剣な声で告げて来る。

「好きな子だったらなおさらだ。近づきたいし、さわりたい。それだけが目的だと思われたくないけど──むしろ、そういうことが目当てなのかって変に潔癖に思われるよりは、興味があってくれた方がうれしい」

 意外だった雄基の反応に、みのりは気分が明るくなった。ぱっと笑顔になったみのりに雄基がまぶしげな顔をする。

「なんだ、そうなの。雄基君すっごく真面目だから、そんな恥ずかしいことなんて絶対苦手だと思ってた。欲求不満な女子なんか、多分嫌なんだろうなと思って。それで──」
「それで始めに言ったのか。つきあう前に、俺に嫌がられるかもって」

 そこまで言うと、雄基はあらためてすぐそばにいるみのりを見つめた。
 強く色づいたまなざしを向けられ、みのりの心臓がどくんとはねた。明確に自分を意識している彼の熱っぽい視線を感じる。
 みのりは思わず後ずさりした。
 夏服姿に変わった彼のむき出しになった腕の太さや、シャツからうかがえる広い肩の線など、よく知っているはずの雄基に露骨に異性を覚えてしまう。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

処理中です...