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番外編3 がっこうのかいだん
1.
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秋も深まった十月の終わり。
放課後、僕達サッカー部の三人は教室でミーティングを行っていた。今後の試合相手が決まり、行っていた練習メニューを見直す必要があったのだ。
「だからフィジカルトレーニング増やせって。いつも力負けしてるだろ?」
「そんなムチャぶりされてもなあ……お前や原と一緒にすんなよ、そもそもガタイが違うんだから」
僕が示した練習内容に小柄な桜田がため息をつく。脇で黙って聞いていた副部長の原が苦笑した。
「基礎練習も増やしたし、とにかくこれでやってみよう。様子を見てまた組み直すから」
どうにか話がまとまって、三人で帰り支度を始める。その時、僕は唐突に強い眠気に襲われた。
「え」
あせって頭を強く振り、睡魔を振り払おうとする。だが横にいた桜田がその場に力なく崩れ落ちた。かすむ景色で原の長身が床に倒れているのを認める。
──何だ、もしかして毒物か!?
床にがくりと膝を着く。対処法を考える前に僕は意識を失った。
*
「水嶋。おい、起きろって」
自分の肩をゆさゆさと掴まれ、僕は重いまぶたを開いた。ぼんやりとした視界の中で桜田の顔を確認する。
「なんか様子が変なんだ。教室から出られない」
困惑した桜田の声に僕はようやく体を起こした。しゃがみ込んでいる桜田の向こうで、原がガタガタと音をたてながら教室のドアを開けようとしている。だが、鍵でもかけられたかのように全く動く気配がない。
僕はゆっくりと立ち上がり、暗い教室の中を眺めた。
窓の外はすでに真っ暗で、明かりは一つも見当たらない。割合広い教室も(男ばかりが三十人も肩を並べて授業を受けるから、それでも窮屈に感じるが)照明は全くついていない。しかし、なぜかうすぼんやりと周囲の様子がうかがえる。
理解できない今の状況に自分の頬を引きしめる。とりあえず原の横へ行き、廊下に通じる窓も真っ暗で外が見えないのを確かめた。しばらく考えを巡らせた後、僕は無言でそばにある椅子をつかむと持ち上げた。
「えっ、おい‼」
原が僕を止める前に、持ち上げた椅子を思い切り黒い窓へと叩きつける。だが強い力で跳ね返され、椅子がその場に転げ落ちた。まるで防弾ガラスのようだ。
「……無茶するな」
あきれたように原が言う。僕は思わず腕組みをした。眉間にしわが寄って行く。
「これは夢か?」
僕が漏らしたつぶやきに、隣の原がため息をついた。
放課後、僕達サッカー部の三人は教室でミーティングを行っていた。今後の試合相手が決まり、行っていた練習メニューを見直す必要があったのだ。
「だからフィジカルトレーニング増やせって。いつも力負けしてるだろ?」
「そんなムチャぶりされてもなあ……お前や原と一緒にすんなよ、そもそもガタイが違うんだから」
僕が示した練習内容に小柄な桜田がため息をつく。脇で黙って聞いていた副部長の原が苦笑した。
「基礎練習も増やしたし、とにかくこれでやってみよう。様子を見てまた組み直すから」
どうにか話がまとまって、三人で帰り支度を始める。その時、僕は唐突に強い眠気に襲われた。
「え」
あせって頭を強く振り、睡魔を振り払おうとする。だが横にいた桜田がその場に力なく崩れ落ちた。かすむ景色で原の長身が床に倒れているのを認める。
──何だ、もしかして毒物か!?
床にがくりと膝を着く。対処法を考える前に僕は意識を失った。
*
「水嶋。おい、起きろって」
自分の肩をゆさゆさと掴まれ、僕は重いまぶたを開いた。ぼんやりとした視界の中で桜田の顔を確認する。
「なんか様子が変なんだ。教室から出られない」
困惑した桜田の声に僕はようやく体を起こした。しゃがみ込んでいる桜田の向こうで、原がガタガタと音をたてながら教室のドアを開けようとしている。だが、鍵でもかけられたかのように全く動く気配がない。
僕はゆっくりと立ち上がり、暗い教室の中を眺めた。
窓の外はすでに真っ暗で、明かりは一つも見当たらない。割合広い教室も(男ばかりが三十人も肩を並べて授業を受けるから、それでも窮屈に感じるが)照明は全くついていない。しかし、なぜかうすぼんやりと周囲の様子がうかがえる。
理解できない今の状況に自分の頬を引きしめる。とりあえず原の横へ行き、廊下に通じる窓も真っ暗で外が見えないのを確かめた。しばらく考えを巡らせた後、僕は無言でそばにある椅子をつかむと持ち上げた。
「えっ、おい‼」
原が僕を止める前に、持ち上げた椅子を思い切り黒い窓へと叩きつける。だが強い力で跳ね返され、椅子がその場に転げ落ちた。まるで防弾ガラスのようだ。
「……無茶するな」
あきれたように原が言う。僕は思わず腕組みをした。眉間にしわが寄って行く。
「これは夢か?」
僕が漏らしたつぶやきに、隣の原がため息をついた。
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