【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

文字の大きさ
上 下
286 / 293
番外編3 がっこうのかいだん

1.

しおりを挟む
 秋も深まった十月の終わり。
 放課後、僕達サッカー部の三人は教室でミーティングを行っていた。今後の試合相手が決まり、行っていた練習メニューを見直す必要があったのだ。

「だからフィジカルトレーニング増やせって。いつも力負けしてるだろ?」
「そんなムチャぶりされてもなあ……お前やはらと一緒にすんなよ、そもそもガタイが違うんだから」

 僕が示した練習内容に小柄な桜田さくらだがため息をつく。脇で黙って聞いていた副部長の原が苦笑した。

「基礎練習も増やしたし、とにかくこれでやってみよう。様子を見てまた組み直すから」

 どうにか話がまとまって、三人で帰り支度を始める。その時、僕は唐突に強い眠気に襲われた。

「え」

 あせって頭を強く振り、睡魔を振り払おうとする。だが横にいた桜田がその場に力なく崩れ落ちた。かすむ景色で原の長身が床に倒れているのを認める。

──何だ、もしかして毒物か!?

 床にがくりと膝を着く。対処法を考える前に僕は意識を失った。

     *

水嶋みずしま。おい、起きろって」

 自分の肩をゆさゆさと掴まれ、僕は重いまぶたを開いた。ぼんやりとした視界の中で桜田の顔を確認する。

「なんか様子が変なんだ。教室から出られない」

 困惑した桜田の声に僕はようやく体を起こした。しゃがみ込んでいる桜田の向こうで、原がガタガタと音をたてながら教室のドアを開けようとしている。だが、鍵でもかけられたかのように全く動く気配がない。
 僕はゆっくりと立ち上がり、暗い教室の中を眺めた。
 窓の外はすでに真っ暗で、明かりは一つも見当たらない。割合広い教室も(男ばかりが三十人も肩を並べて授業を受けるから、それでも窮屈に感じるが)照明は全くついていない。しかし、なぜかうすぼんやりと周囲の様子がうかがえる。

 理解できない今の状況に自分の頬を引きしめる。とりあえず原の横へ行き、廊下に通じる窓も真っ暗で外が見えないのを確かめた。しばらく考えを巡らせた後、僕は無言でそばにある椅子をつかむと持ち上げた。

「えっ、おい‼」

 原が僕を止める前に、持ち上げた椅子を思い切り黒い窓へと叩きつける。だが強い力で跳ね返され、椅子がその場に転げ落ちた。まるで防弾ガラスのようだ。

「……無茶するな」

 あきれたように原が言う。僕は思わず腕組みをした。眉間にしわが寄って行く。

「これは夢か?」

 僕が漏らしたつぶやきに、隣の原がため息をついた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

パラサイト/ブランク

羊原ユウ
ホラー
舞台は200X年の日本。寄生生物(パラサイト)という未知の存在が日常に潜む宵ヶ沼市。地元の中学校に通う少年、坂咲青はある日同じクラスメイトの黒河朱莉に夜の旧校舎に呼び出されるのだが、そこで彼を待っていたのはパラサイトに変貌した朱莉の姿だった…。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

羅刹の花嫁 〜帝都、鬼神討伐異聞〜

長月京子
ホラー
【第8回ホラー・ミステリー小説大賞にエントリー中です。楽しんでいただけたら投票で応援していただけると嬉しいです】 自分と目をあわせると、何か良くないことがおきる。 幼い頃からの不吉な体験で、葛葉はそんな不安を抱えていた。 時は明治。 異形が跋扈する帝都。 洋館では晴れやかな婚約披露が開かれていた。 侯爵令嬢と婚約するはずの可畏(かい)は、招待客である葛葉を見つけると、なぜかこう宣言する。 「私の花嫁は彼女だ」と。 幼い頃からの不吉な体験ともつながる、葛葉のもつ特別な異能。 その力を欲して、可畏(かい)は葛葉を仮初の花嫁として事件に同行させる。 文明開化により、華やかに変化した帝都。 頻出する異形がもたらす、怪事件のたどり着く先には? 人と妖、異能と異形、怪異と思惑が錯綜する和風ファンタジー。 (※絵を描くのも好きなので表紙も自作しております) 第7回ホラー・ミステリー小説大賞で奨励賞 第8回キャラ文芸大賞で奨励賞をいただきました。 ありがとうございました!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

処理中です...