【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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番外編1 柳沢笑香の完璧な恋人

34.柳沢笑香の完璧な恋人 34

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──今度は何をする気なんだろう? 

 先ほど理解したように、どうやら史郎は周到な計画を立てて、笑香をここに迎えるための入念な準備をしていたらしい。
「初めて彼氏の家に行くのに彼が色々と気を使ってくれた」という初々しい喜びよりも、むしろ史郎の望む罠にかかってしまったような気分で、笑香は全く違う理由で胸をどきどきさせていた。これでは、まるでホラーだ。

 史郎の腕が背中に回り、そのままゆっくりと倒される。笑香の緊張が伝わったのか史郎が唇を離して聞いた。

「なんで、そんな初めてみたいに肩に力が入ってるんだ?」

 不思議そうな声の響きに笑香は思わず言葉につまった。何をされるかわからないせいで、ちょっと怖い気がする、なんて言えない。
 史郎は小さく笑みをこぼすと笑香の頬に口づけた。次第に顎へとその唇を下ろして行きながらささやく。

「初めて君にキスした時は、思いっきり殴られたけどな」

 面白がっている口ぶりに史郎の余裕が感じられ、笑香は一瞬かちんときた。

「私、あれが初めてじゃないから」

 視線をそらしてつぶやいてみる。
 史郎がその顔を上げた。両目がわずかに細められている。

「──なんだって?」

 あ、しまった、と思った時にはもう遅かった。真上から笑香の顔を見下ろし、史郎が低い声音で言った。

「それなら、初めてっていつ? ……誰と?」

 その言い方がまるで詰問するようで、笑香は逆に意地になった。

「教えない。それなら、史郎君だってあれが初めてじゃないんじゃないの? 何だか色々と慣れてるような言い方だけど」

 何の気なしに伝えた問いに、史郎がふっと黙り込んだ。笑香は目を見開いた。

「本当に初めてじゃないの?」

 胸の奥がちりっと焦げたようになる。

「それなら、いつ? 誰と?」

 笑香が同じ言葉を返すと、史郎はふいと顔をそむけた。

「もういいだろ。そんなこと」

 それだけ言って、再び唇を重ねようとする。笑香がのけぞってそれを避けると、史郎は小さくため息をついた。

「正直に言ったら、君も話すか?」

 ためらいを含んだその表情にうしろめたさを感じ取り、笑香は唇を噛みしめた。
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