【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

文字の大きさ
上 下
204 / 293
番外編1 柳沢笑香の完璧な恋人

32.柳沢笑香の完璧な恋人 32

しおりを挟む
「それから、電話する時間を八時にしない? 私は別に問題ないし、それならおじさんももっと早く帰って来られるでしょ?」

 笑香が笑って続けると史郎は素直にうなずいた。

「わかった。それなら僕も今より早く電話できるし」

 ペットボトルの水を飲み、その飲み口にふたをする。
 ボトルをソファの上に置くと史郎の腕がのびて来た。先ほど部屋にいた時のように笑香の頬にふれて来る。
 眼鏡の奥の目を細め、史郎はそのまなざしに陶酔したような色を浮かべた。

「──さっきは凄かった。もし仲林に先に聞いてたんだったら、ちょっとショックな面もあるけど、まあ一応、仲林に感謝だな」

 史郎が浴室での一連の行為を言っていることに気がついて、笑香は一気に赤面した。そういえばすっかり忘れていた。今さらどんな顔をして会おうかなんて、考えるのは遅すぎる。

「でも、先走ってあんまり色々知りすぎないでくれよ。これから僕が教えるから。そういう意味でも僕はこの先が楽しみなんだ」

 史郎がさらりと凄い話を自分に語っているのがわかり、笑香は眉間にしわを寄せた。
 どうやら史郎は普通の勉強だけでなく、そういった卑猥な方面でも笑香を教育したいらしい。自分好みに育て上げようと画策しているのが見て取れて、心の底からむくむくと反発心がわき上がった。

「だって、史郎君だって他の人に私のことを話してるじゃない。私だって千夏ちゃんに色々と相談したいんだけど」

 笑香が唇をとがらせると、そう来るとは思わなかったのだろう。明らかにむっとした顔で史郎が頬から手を離す。

「別に僕は君のことを相談してる訳じゃない。ただ、僕達のことを理解してもらえるように、色々とやりやすいようにしてるだけで……。君だって聞きたいことがあるなら僕に直接聞けばいいだろ?」
「史郎君のことで史郎君に相談したら、相談にならないんだけど」

──まさかこの先、私に何をするつもりかなんて、本人に聞ける訳がない。

 笑香は思わず想像して、首を左右に振ってしまった。十中八九、史郎に実地で教えてやると言われるに決まっている。
 二人の間に不穏な空気が漂った。口元をへの字に曲げた史郎に、笑香が一歩も引かないつもりで彼のまなざしを見上げると、史郎はああ、といったようにうめいて再びその口を開いた。

「別に君と口ゲンカしたい訳じゃないんだ。こんなことで今の時間を使ってるのが惜しい。……僕が悪かったよ。とにかく、わかった。仲林のことは君にまかせる。だから……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

パラサイト/ブランク

羊原ユウ
ホラー
舞台は200X年の日本。寄生生物(パラサイト)という未知の存在が日常に潜む宵ヶ沼市。地元の中学校に通う少年、坂咲青はある日同じクラスメイトの黒河朱莉に夜の旧校舎に呼び出されるのだが、そこで彼を待っていたのはパラサイトに変貌した朱莉の姿だった…。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

羅刹の花嫁 〜帝都、鬼神討伐異聞〜

長月京子
ホラー
【第8回ホラー・ミステリー小説大賞にエントリー中です。楽しんでいただけたら投票で応援していただけると嬉しいです】 自分と目をあわせると、何か良くないことがおきる。 幼い頃からの不吉な体験で、葛葉はそんな不安を抱えていた。 時は明治。 異形が跋扈する帝都。 洋館では晴れやかな婚約披露が開かれていた。 侯爵令嬢と婚約するはずの可畏(かい)は、招待客である葛葉を見つけると、なぜかこう宣言する。 「私の花嫁は彼女だ」と。 幼い頃からの不吉な体験ともつながる、葛葉のもつ特別な異能。 その力を欲して、可畏(かい)は葛葉を仮初の花嫁として事件に同行させる。 文明開化により、華やかに変化した帝都。 頻出する異形がもたらす、怪事件のたどり着く先には? 人と妖、異能と異形、怪異と思惑が錯綜する和風ファンタジー。 (※絵を描くのも好きなので表紙も自作しております) 第7回ホラー・ミステリー小説大賞で奨励賞 第8回キャラ文芸大賞で奨励賞をいただきました。 ありがとうございました!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

処理中です...