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番外編1 柳沢笑香の完璧な恋人
31.柳沢笑香の完璧な恋人 31
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笑香は何だか、史郎のことが可愛くなった。
壊されるのはごめんだが、男の子っぽい悩みを抱える彼は本当に人間らしい。一時期笑香が得体のしれない彼の感情を相手にしていた頃にくらべれば、むしろ好感が持てるくらいだ。
笑香は封の開いていないペットボトルを持ったまま、腕組みをして考えた。
「それじゃ、少しルールを変える?」
ミネラルウォーターに口をつけていた史郎は、笑香の顔を見直した。
「ルール?」
「そう。……私の家に来た時に、お母さんと勇人がいる時は絶対そういうことをしないってルール。最近お母さんの夜勤が増えて、史郎君が家にいる時の方が安心だからって、金曜日か土曜日の夜、夜勤にしてることが多いでしょ? 勇人は九時には寝てるし、その後だったら──」
史郎はまばたきを繰り返した。笑香が自らそんな提案を自分にして来たということが、少し信じられないらしい。
笑香の母親である初音は、自宅近くの病院で看護師の仕事をしている。勇人の出産をきっかけに一度退職していたのだが、去年からなじみの病院で再び仕事を始め、今では常勤で働いている。夜勤の時は朝の交代が終わるまで帰って来ないのだ。
「それから……その、どうしても二人がいて、まとまった時間が取れない時は……。さっきみたいに……ええと」
どうしても具体的な行為名が言い出せなくて、真っ赤になって口ごもる。
史郎は笑香をのぞき込むようにして言葉を継いだ。
「さっきみたいにフェラしてくれるのか? 本当に?」
その真剣極まりない表情に、笑香は思わず吹き出した。
「だっていきなり後ろから襲われるよりはましでしょう。私にだって、気持ちの準備ってものがあるし。──そんなにつらいとは思わなかった。もっと早く、ちゃんと言ってくれればよかったのに。男の子って大変だね」
「そんなこと、言える訳ないだろ」
史郎はすねて見せた後、安堵のものらしいため息をついた。肩に力が入っていたらしく、持っていたペットボトルを床に落としそうになる。
笑香がくすくすと笑うと史郎は仏頂面で口を開いた。
「君とやりたくて、今にも襲いそうだなんて言ったら、前の君なら逃げるだろ? それに僕だって一応プライドが……」
再びため息をついて史郎は言った。
「ああ、もうどうでもいいよ。プライドなんて君の前じゃとっくに粉々だ。とにかく、わかった。そのルールなら多分大丈夫だと思う。──ありがとう」
笑香を見つめ、目元に優しげな笑みを浮かべる。本人は気づいていないだろうが、これは以前の史郎と同じ優しい兄のような微笑みだ。
その笑顔に魅了され、笑香はあらためてこの人が好きだと思った。欠点をあげつらえばきりがないが、今の史郎にはそれを上回るものがあった。
──あれ? ということは、私は結局この人の顔が好きだってこと?
笑香は一瞬、眉をよせた。基本的に自分が面食いだということが、今何となくわかってしまった。
──まあいいか。史郎君だって私の胸が好きなんだし。
笑香はすぐにそう考えて、自分自身を納得させた。史郎が自分を気に入っている中の一つの要因が、この、本人は少し恥ずかしいとさえ思っている豊満な胸であることくらい、笑香にだってわかっていた。
壊されるのはごめんだが、男の子っぽい悩みを抱える彼は本当に人間らしい。一時期笑香が得体のしれない彼の感情を相手にしていた頃にくらべれば、むしろ好感が持てるくらいだ。
笑香は封の開いていないペットボトルを持ったまま、腕組みをして考えた。
「それじゃ、少しルールを変える?」
ミネラルウォーターに口をつけていた史郎は、笑香の顔を見直した。
「ルール?」
「そう。……私の家に来た時に、お母さんと勇人がいる時は絶対そういうことをしないってルール。最近お母さんの夜勤が増えて、史郎君が家にいる時の方が安心だからって、金曜日か土曜日の夜、夜勤にしてることが多いでしょ? 勇人は九時には寝てるし、その後だったら──」
史郎はまばたきを繰り返した。笑香が自らそんな提案を自分にして来たということが、少し信じられないらしい。
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「それから……その、どうしても二人がいて、まとまった時間が取れない時は……。さっきみたいに……ええと」
どうしても具体的な行為名が言い出せなくて、真っ赤になって口ごもる。
史郎は笑香をのぞき込むようにして言葉を継いだ。
「さっきみたいにフェラしてくれるのか? 本当に?」
その真剣極まりない表情に、笑香は思わず吹き出した。
「だっていきなり後ろから襲われるよりはましでしょう。私にだって、気持ちの準備ってものがあるし。──そんなにつらいとは思わなかった。もっと早く、ちゃんと言ってくれればよかったのに。男の子って大変だね」
「そんなこと、言える訳ないだろ」
史郎はすねて見せた後、安堵のものらしいため息をついた。肩に力が入っていたらしく、持っていたペットボトルを床に落としそうになる。
笑香がくすくすと笑うと史郎は仏頂面で口を開いた。
「君とやりたくて、今にも襲いそうだなんて言ったら、前の君なら逃げるだろ? それに僕だって一応プライドが……」
再びため息をついて史郎は言った。
「ああ、もうどうでもいいよ。プライドなんて君の前じゃとっくに粉々だ。とにかく、わかった。そのルールなら多分大丈夫だと思う。──ありがとう」
笑香を見つめ、目元に優しげな笑みを浮かべる。本人は気づいていないだろうが、これは以前の史郎と同じ優しい兄のような微笑みだ。
その笑顔に魅了され、笑香はあらためてこの人が好きだと思った。欠点をあげつらえばきりがないが、今の史郎にはそれを上回るものがあった。
──あれ? ということは、私は結局この人の顔が好きだってこと?
笑香は一瞬、眉をよせた。基本的に自分が面食いだということが、今何となくわかってしまった。
──まあいいか。史郎君だって私の胸が好きなんだし。
笑香はすぐにそう考えて、自分自身を納得させた。史郎が自分を気に入っている中の一つの要因が、この、本人は少し恥ずかしいとさえ思っている豊満な胸であることくらい、笑香にだってわかっていた。
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