【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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最終章 運命の人

21.

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 僕は今まで気づかなかった笑香の秘密を知った気がした。
 我知らず苦笑が浮かぶ。笑香もけっこう、僕に隠してることがあるじゃないか。他にも知らない笑香の顔がきっとたくさんあるのだろう。

「ほら、史郎君、早く行こう」

 笑香はかんぬきに手をかけて、軽く水嶋家の門を開いた。
 明るい街灯の光の下で笑香の満面の笑顔を見ながら、僕は次第に自分の口元がほころんでいくのを感じていた。

     *

『ほら、史郎君、早く行こう』

 僕をうながす声の後、笑香の満面の笑顔に重なり、ピピピ、という電子音が鳴り響く。
 僕は耳元で鳴る目覚ましに重いまぶたをゆっくりと開いた。

──ああ、夢か。

 枕元のスマホに目をやって、今の時刻を確認する。
 午前七時五十分。
 僕は枕に頭を落とした。後十分。もう少し……。何だか長い夢を見ていた気がする。昔自分が住んでいた家の夢。そして、僕は初めて笑香と……。

「ちょっと史郎君。いい加減に起きないと遅刻するわよ」

 聞き慣れた声が降って来て、僕は再びまぶたを開いた。夢の中よりも大人びた笑香が僕を上から見下ろしている。
 背中にかかる長い髪が、僕の目の前に落ちて来た。僕はゆっくりと手をのばし、笑香の髪を軽く握った。

「……髪が長い」

 半分寝ぼけた僕の言葉に笑香があきれ顔をする。
 この春、僕達は同じ大学に無事入学を果たしていた。大学の近くにアパートを借りて、僕は一人暮らしを始めていた。笑香は家族と住んでいる家から僕のアパートを経由して、ほぼ毎日のように一緒にキャンパスへと通ってくれる。

「もう。少しは片付けなさいよ。いつも部屋をきれいにしてた、あの史郎君はどこに行ったの?」

 笑香は僕のベッドから離れ、肩をすくめて周囲を見渡した。
 床に脱ぎ捨てられたままの服に、一杯になった本棚からあふれ出し、ベッドの脇に積み重ねられた本。空き缶や飲みかけのペットボトルがいくつも転がっている。男の一人暮らしをそのまま体現した汚い部屋だ。

 ついに念願の一人暮らしを手に入れ、僕は自堕落な生活を心の底から満喫していた。昔、あれだけ几帳面に行っていた幾多の家事も、今は手を抜けるだけ抜いて笑香に全てを任せている。
 何もしなくていいなんて、まるで夢のような生活だ。

「先に行くから」

 最近、やや冷たく感じる笑香の態度が声から透けて、僕はあわてて体を起こした。

「わかった、起きる。起きるから待ってくれ」

 着ていたTシャツをその場に脱ぎ捨て、干しっぱなしの洗濯物から新しい服を選び出す。

「ちょっと、もう。いつまでもそんな格好でいないでよ」
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