156 / 293
最終章 運命の人
6.※
しおりを挟む
あきれたような笑香の声に僕はちょっとふてくされた。開き直って先を続ける。
「だから、今さらだけどって言っただろ。……僕が前、君にそう言ったのは君をおどしてた時のことだし、逆に君から告白された時は、僕は好きだって言ってなかった。ちょうどいい機会だから、今日ちゃんと伝えておこうと思ったんだよ」
本当は、順番が最後のはずだったのだが。
言いたいことを言ってしまって僕は安堵のため息をついた。すると、横からかすかなすすり泣きの音が聞こえ、僕はぎょっとして笑香を見た。
「え? え、笑香!?」
余計なことを言ってしまったのだろうかと、不安にかられながらも笑香の顔をのぞき込む。
笑香はぽろぽろ涙をこぼしながら、僕ににっこりと微笑んだ。
「うれしい。……ありがとう」
僕は胸がいっぱいになった。わずかに体を後ろにずらし、笑香の背中を抱きしめる。前よりもさらに小さく感じる、制服姿の笑香の背中。
僕は耳元でささやいた。
「一生、僕のそばにいてくれ。君さえいれば、何もいらない」
何もなかった僕を満たして、居場所を作ってくれた人。
僕は優しく、まるで壊れ物を扱うように、そっと両腕を前に回すと笑香の体を包み込んだ。
*
広げた自分の制服の上に笑香の体を寝かせると、僕はなるべく体重をかけないようにのしかかった。軽く開いた笑香の唇に、自身の唇を重ね合わせる。
初めは軽く、ついばむようにふれては離して角度を変える。つややかに散らばる髪をなで、両方の手で笑香の頭を優しく支えてキスをする。笑香はまぶたを閉じたまま、僕の愛撫を受けていた。
笑香の顎に唇をはわせ、僕はそのまま細い首筋へ愛撫の矛先を移して行った。笑香の制服の胸元にある、濃いえんじ色のスカーフが軽く自分の顎にふれる。
僕はふと、それを引き抜くかどうか迷った。今、それをやってしまったら、僕のえげつない妄想に笑香を巻き込むことになる。
顔を離した僕の様子に、笑香がそっとまぶたを開いた。
なあに? と言いたげな優しい笑香のまなざしに、僕は途方に暮れた顔をした。
「……どうやって脱がせればいいかわからない」
素直に僕が伝えると、笑香はにこっと笑って見せた。
「ちょっと待って。自分で脱ぐから」
とまどいながら僕は笑香から体を離した。
笑香はゆっくりと起き上がり、自分でスカーフを引き抜いた。まるで見てはいけないものを見てしまったような気がして、僕は思わず目線をそらした。
どうやら胸元のスナップをはずしているらしい、ぷちぷちと小さな音の後、かすかな衣擦れの気配が続く。
僕は自分の情けなさに頭を抱えそうになった。
どうしてこうなるんだろう。僕が考える想像の中ではもっと簡単なはずなのに。
「だから、今さらだけどって言っただろ。……僕が前、君にそう言ったのは君をおどしてた時のことだし、逆に君から告白された時は、僕は好きだって言ってなかった。ちょうどいい機会だから、今日ちゃんと伝えておこうと思ったんだよ」
本当は、順番が最後のはずだったのだが。
言いたいことを言ってしまって僕は安堵のため息をついた。すると、横からかすかなすすり泣きの音が聞こえ、僕はぎょっとして笑香を見た。
「え? え、笑香!?」
余計なことを言ってしまったのだろうかと、不安にかられながらも笑香の顔をのぞき込む。
笑香はぽろぽろ涙をこぼしながら、僕ににっこりと微笑んだ。
「うれしい。……ありがとう」
僕は胸がいっぱいになった。わずかに体を後ろにずらし、笑香の背中を抱きしめる。前よりもさらに小さく感じる、制服姿の笑香の背中。
僕は耳元でささやいた。
「一生、僕のそばにいてくれ。君さえいれば、何もいらない」
何もなかった僕を満たして、居場所を作ってくれた人。
僕は優しく、まるで壊れ物を扱うように、そっと両腕を前に回すと笑香の体を包み込んだ。
*
広げた自分の制服の上に笑香の体を寝かせると、僕はなるべく体重をかけないようにのしかかった。軽く開いた笑香の唇に、自身の唇を重ね合わせる。
初めは軽く、ついばむようにふれては離して角度を変える。つややかに散らばる髪をなで、両方の手で笑香の頭を優しく支えてキスをする。笑香はまぶたを閉じたまま、僕の愛撫を受けていた。
笑香の顎に唇をはわせ、僕はそのまま細い首筋へ愛撫の矛先を移して行った。笑香の制服の胸元にある、濃いえんじ色のスカーフが軽く自分の顎にふれる。
僕はふと、それを引き抜くかどうか迷った。今、それをやってしまったら、僕のえげつない妄想に笑香を巻き込むことになる。
顔を離した僕の様子に、笑香がそっとまぶたを開いた。
なあに? と言いたげな優しい笑香のまなざしに、僕は途方に暮れた顔をした。
「……どうやって脱がせればいいかわからない」
素直に僕が伝えると、笑香はにこっと笑って見せた。
「ちょっと待って。自分で脱ぐから」
とまどいながら僕は笑香から体を離した。
笑香はゆっくりと起き上がり、自分でスカーフを引き抜いた。まるで見てはいけないものを見てしまったような気がして、僕は思わず目線をそらした。
どうやら胸元のスナップをはずしているらしい、ぷちぷちと小さな音の後、かすかな衣擦れの気配が続く。
僕は自分の情けなさに頭を抱えそうになった。
どうしてこうなるんだろう。僕が考える想像の中ではもっと簡単なはずなのに。
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
パラサイト/ブランク
羊原ユウ
ホラー
舞台は200X年の日本。寄生生物(パラサイト)という未知の存在が日常に潜む宵ヶ沼市。地元の中学校に通う少年、坂咲青はある日同じクラスメイトの黒河朱莉に夜の旧校舎に呼び出されるのだが、そこで彼を待っていたのはパラサイトに変貌した朱莉の姿だった…。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
羅刹の花嫁 〜帝都、鬼神討伐異聞〜
長月京子
ホラー
【第8回ホラー・ミステリー小説大賞にエントリー中です。楽しんでいただけたら投票で応援していただけると嬉しいです】
自分と目をあわせると、何か良くないことがおきる。
幼い頃からの不吉な体験で、葛葉はそんな不安を抱えていた。
時は明治。
異形が跋扈する帝都。
洋館では晴れやかな婚約披露が開かれていた。
侯爵令嬢と婚約するはずの可畏(かい)は、招待客である葛葉を見つけると、なぜかこう宣言する。
「私の花嫁は彼女だ」と。
幼い頃からの不吉な体験ともつながる、葛葉のもつ特別な異能。
その力を欲して、可畏(かい)は葛葉を仮初の花嫁として事件に同行させる。
文明開化により、華やかに変化した帝都。
頻出する異形がもたらす、怪事件のたどり着く先には?
人と妖、異能と異形、怪異と思惑が錯綜する和風ファンタジー。
(※絵を描くのも好きなので表紙も自作しております)
第7回ホラー・ミステリー小説大賞で奨励賞
第8回キャラ文芸大賞で奨励賞をいただきました。
ありがとうございました!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~
柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】
人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。
その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。
完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。
ところがある日。
篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。
「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」
一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。
いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。
合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる