【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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最終章 運命の人

1.

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 笑香のおじさんの四十九日は、笑香達三人の家族と僕だけでひっそりと行われた。

 今回湯浅さんは自分の仕事が忙しく、この街を訪れることができなかった。丸々ひと月、僕の面倒をみるために使い果たしてしまい、本来するべき仕事がとどこおって積まれた書類が山になるどころか雪崩を引き起こしていたのだ。

『本当にすみません』

 わがまま放題にすごしていた自分に罪悪感を覚えて謝ると、湯浅さんは破顔した。

『史郎君が謝ることじゃないだろう? ……少しは大人に甘えなさい』

 同じ言葉をかけられながらも、かける人物と状況によってこうも心持ちが変わるのか。僕は殊勝な思いを胸に湯浅さんの言葉を聞いていた。

 僕は法事に出るにあたって、どちらの制服を着るか迷った。今の学校のブレザーで行くのがきっと本来の筋なのだろうが、前の制服の方が何となくしっくりくるような気がした。
 寺の境内で会った笑香は、少し大き目のダッフルコートに身を包み、微笑んで僕を出迎えた。すらりとのびるタイツの足が前より長くなった気がする。僕が自分のコートを脱ぐと、笑香は以前の制服姿に何だか喜んでくれた。

「また、史郎君のその格好が見られるとは思わなかった」

 そう言われ、僕はこちらの制服で正解だったことがわかった。

 四十九日の法事が終わって昼食を済ませた僕達は、それぞれ二人ずつ二組に分かれた。おばさんと勇人は位牌とともに一度住んでいるアパートにもどって、その後勇人が必要な学用品を買いに行くことになっていた。
 僕は笑香とバスを乗りつぎ、以前住んでいた家に向かった。
 久しぶりに目にした二つの家は、前と変わらずそこにあった。急に冷え込んできた空の下、二件はまるでよりそうように寒さをわかち合っていた。ぶ厚いコートを着ていても手足がかじかむ空気の中、まず僕達は笑香の家の方に向かった。

 勇人を連れたおばさんや、笑香自身も何度か足を運んでいるため、別段家の中の空気はこもっているようには思えなかった。
 笑香と僕は笑香の部屋だった場所に入った。必要な品は今の住居に運び込まれていたために、その印象は今までと違って殺風景なものだった。それでも変わらない雰囲気に僕は何となく安心した。

「これ。ずっと渡したかったの」

 戸棚の中を開けた笑香に紙包みを渡されて、僕は大きく目を見張った。

「これ……」

 クリスマスプレゼント仕様とわかる、緑色をした紙包み。笑香ははにかんで続けた。

「前から準備してたんだけど、渡せなくなっちゃって。一か月遅くなっちゃったけど史郎君へのクリスマスプレゼント。──開けてみて」

 僕がそっと包装紙を開くと、中からそろいのマフラーと手袋が出て来た。茶色と緑を基調にした、使い勝手のよさそうな品物。

「長野はここより寒いかなと思って、あったかそうなものを選んだの。もし良かったら使ってね」

 僕は口元をほころばせた。実際住んでいる場所は思ったよりも冷え込みがきつくて、僕はあわてて通学用に厚いコートを買い込んだのだ。だがマフラーと手袋は中学からの物を使っていて、特に手袋が小さくなっていた。
 僕は手袋を実際にはめてみて、その十分な余裕をたしかめた。
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