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第五章 夢の終わり

18.

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 結局僕は祖母にかかわるすべてのことが終わった後で、迎えてくれた湯浅さんにつれられ、墓前に線香だけをそなえた。
 別に望んでなどいなかったのだが、僕の引っ越しの手続きのついでに、湯浅さんがわざわざ僕を墓までつれて行ったのだ。見かけばかりの墓石を眺め、つれて来てくれた湯浅さんの手前、形式的に墓参りをすませると、湯浅さんは僕を車で最寄りの駅まで送ってくれた。

「史郎君、もう高校生なのか。びっくりしたよ。大人になったんだねえ」

 運転しながら湯浅さんが口を開いた。その柔和な横顔が楽しげな笑いの形に変わる。

「史郎君くらいかっこよければ女の子にもモテるだろ? もう彼女とかいるの?」

 どこかうかれた湯浅さんに、僕は思わず苦笑した。仕事のごたごたを抜け出して、僕の用事につきあうことがよっぽどうれしかったらしい。

「いますよ。湯浅さんも話をしたことがあるはずです」
「えっ、いつ?」

 助手席の僕を見る湯浅さんを思わずたしなめる。

「前、ちゃんと見てください。──僕が入院した時に、父の代わりに女の子の電話を受けませんでしたか? その子です」

 湯浅さんは左手で頭をなでた。やや毛髪が薄い頭が指ですかれて地肌が透ける。

「ああ、あの子か! すごくしっかりした受け答えでね。後で社長に高校生だって聞いて、感心した覚えがあるよ。そうか、あの子か」

 なつかしそうな声を出す。

「あんなにちっちゃかったのに、もう彼女がいる高校生になっちゃうのか。早いなあ」
「湯浅さんは、まだ結婚は?」

 からかうようにたずねると、湯浅さんはがっくり肩を落とした。

「それがなかなかね。まず、忙しくて──社長がもう少し休みを取ってくれればいいんだが。でも史郎君がもどってくれば、少しは社長も考えるんじゃないかな」

 父親の話をふられ、僕が黙ると、今度は湯浅さんが苦笑いして言った。

「まあ実際、君も色々あったもんなあ。毎回君が『湯浅さあん』って、泣きべそかいて僕に電話して来ると、本当にどきどきしたよ。今度は何があったんだ? ってね」
「それ、絶対に彼女には言わないでくださいね」

 僕がむっとして念を押すと、湯浅さんは心底おかしそうにうなずいた。

「わかったわかった。僕も君には助けてもらったしね。……そうそう、奥様のお葬式でね、久しぶりに支倉はせくらさんに会ったよ。足はともかく、後はとっても元気そうで、僕が史郎君の話をしたら会いたいって言ってたよ」
「本当ですか?」

 僕は大きく目を見張り、湯浅さんに向き直った。唇が勝手にほころんでいくのがわかる。
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