【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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第五章 夢の終わり

17.

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「とにかく僕はこれから君に卒業するまで勉強を教える。その上で、僕と同じ大学を一緒に受けてもらうからな」

 僕が笑香に宣言すると、笑香が今度こそ目を丸くした。

「ええっ、だって、どうして」

 僕は再び一癖も二癖もある笑顔を見せた。

「おばさんも正規で働き始めたことだし、君の学費は奨学金がある。給付型の奨学金を受ければ返済は免除されるんだ。ただ、それには優秀な成績で審査に合格しなくちゃならない。──ちょっと調べてみたんだけど、今の学校でも合格した人間がいたよ。どうせいい成績で学校を卒業するつもりだったんだろ? せっかくだから奨学金で大学を卒業した方が、もっといい職につけるだろ?」

 笑香は言葉を失ったまま、僕の言うことを聞いていた。ぱくぱくと口を動かしてやっとの思いで声を出す。

「わ、私の希望とか……」
「もちろん聞くよ。どこに行きたい? 僕は法学部さえあればいいから、後の希望は君にまかせる」

 計算しつくした僕の笑み。
 笑香が追い込まれた顔をする。

「え……えーっと、うーん……。と、とりあえず、英文学部があるところ?」

 笑香の苦しげな返答に、僕は眉尻を上げて見せた。

「英文学部か」

 やっぱりな。

「うん。──英語が好きだから、英語に関わる仕事につきたい……かな」

 予想通りのその言葉に、僕は瞳を細めて言った。

「わかった。じゃあ、それで決まりだ。──今日から同じ大学の英文学部を目標に、僕と一緒に勉強しよう」

 笑香はがっくりと肩を落とした。

「……史郎君の鬼」

 僕は涼しい顔で答えた。

「『最低』って、君にひっぱたかれるよりはましだな」

 上目づかいで僕を見た後、ふと笑香は聞いて来た。

「史郎君は、弁護士になって何かやりたいことがあるの?」
「法律さえ味方につけておけば、何があっても何とかなりそうだと思ってね」

 カップを置きながら僕が言うと、笑香は小さく肩をすくめた。僕は一笑して続けた。

「あえて言うなら、少年犯罪の弁護に少しだけ興味があるな。なんでそんなことをしたのか、家庭環境はどうだったのか、とかね」

 それなら僕の経験も少しは役に立つだろう。
 笑香が何も言わずに僕を見る。その目はどこか優しかった。

「さあ、休憩が終わったら、さっきの続きの応用をしようか。まだ結構先は長いよ」

 僕は再びにっこり笑ってしおれる笑香をうながした。例の笑顔を見返すと、笑香は心底うらめしそうな顔をした。
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