【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

文字の大きさ
上 下
114 / 293
第四章 文化祭

29.

しおりを挟む
「それなら、早く治して退院しないと」

 浮きたつ気分を抑えて言うと、笑香がからめた小指を放した。僕のパジャマの胸からのぞくコルセットにそっと指でふれる。
  かすかな感触に反応し、僕は思わず吐息を漏らした。目の前で笑香の髪が揺れ、甘い匂いが鼻をくすぐる。

「──史郎君が倒れた時、あなたが死んじゃったらって思ったら、息もできなかった」

 ささやくような笑香の声。
 離れようとした指を捕らえて僕はその手を引きよせた。笑香の顔が僕に近づく。
 僕達は互いの唇で相手の感触を確かめ合った。一度離して、もう一度重ねる。笑香の背中に手を回し、僕は腕の力を強めた。さらに深いつながりを求め、笑香の柔らかな唇の間に自分の舌を差し入れる。
 笑香の肩が一瞬震える。だが、抵抗しなかった。固い歯をわり、温かく濡れたその内側を僕はとがらせた舌でさぐった。

「……う」

 僕はうめいた。背中の痛みももう限界だが、これ以上したら理性がふっ飛ぶ。

「大丈夫!?」

 笑香があわてて僕から離れる。僕はさりげなく前かがみになると、怪我をかばうような姿勢を見せた。ここの所、禁欲的な生活をしていた僕には刺激が強すぎる。

「退院までには何とかするから。……色々と」

 こらえ性のない自分自身に苦笑いしながらつぶやくと、笑香は不思議そうな顔をした。

     *

 その後、僕達は時間が許すまで互いの近況を語り合った。

「あのね。今日、剣道部の見学に行ってきたの」

 うれしそうに話す笑香に僕は目を丸くした。

「剣道部?」
「うん。仲林さん、剣道部に入ってるの。私が経験者だって言ったら、ぜひ一度見学に来てって言われて。部員が足りないんだって」

 僕は思わず笑いをこらえた。

「小学生の頃からやってたのに、一回も勝てたことがないって言わなかったのか?」
「中学では英語研究会だったとは言ったけど」

 笑香が恥ずかしそうに答える。
 昔おじさんの影響で、笑香は近くにある剣道場に通っていた。だが今一つやる気がなくて才能が発揮されなかったのだ。練習でできるはずのことが本番ではできないらしく、よくおじさんに発破をかけられていた。

「でも、今日行ったらすごく楽しそうだったし、歓迎してくれたからまた始めてもいいかなって。……お父さんも喜びそうだし」

 なんとなく言葉に含みを感じて、僕はたずねた。

「笑香。おじさんに何かあったのか?」

 笑香はわずかに視線を落とした。

「今、僕達の交際におじさんが反対なのはわかってる。正直に話してくれないか」

 僕が改めて問いかけると、笑香の瞳に影が下りた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

パラサイト/ブランク

羊原ユウ
ホラー
舞台は200X年の日本。寄生生物(パラサイト)という未知の存在が日常に潜む宵ヶ沼市。地元の中学校に通う少年、坂咲青はある日同じクラスメイトの黒河朱莉に夜の旧校舎に呼び出されるのだが、そこで彼を待っていたのはパラサイトに変貌した朱莉の姿だった…。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

羅刹の花嫁 〜帝都、鬼神討伐異聞〜

長月京子
ホラー
【第8回ホラー・ミステリー小説大賞にエントリー中です。楽しんでいただけたら投票で応援していただけると嬉しいです】 自分と目をあわせると、何か良くないことがおきる。 幼い頃からの不吉な体験で、葛葉はそんな不安を抱えていた。 時は明治。 異形が跋扈する帝都。 洋館では晴れやかな婚約披露が開かれていた。 侯爵令嬢と婚約するはずの可畏(かい)は、招待客である葛葉を見つけると、なぜかこう宣言する。 「私の花嫁は彼女だ」と。 幼い頃からの不吉な体験ともつながる、葛葉のもつ特別な異能。 その力を欲して、可畏(かい)は葛葉を仮初の花嫁として事件に同行させる。 文明開化により、華やかに変化した帝都。 頻出する異形がもたらす、怪事件のたどり着く先には? 人と妖、異能と異形、怪異と思惑が錯綜する和風ファンタジー。 (※絵を描くのも好きなので表紙も自作しております) 第7回ホラー・ミステリー小説大賞で奨励賞 第8回キャラ文芸大賞で奨励賞をいただきました。 ありがとうございました!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

処理中です...