【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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第四章 文化祭

15.

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 結局、僕も最後は笑香のお人好しに救われるのだ。
 僕は少しだけ意地悪く言った。

「焼きそばから違うものに変えろって言った手前、僕にも責任があるからね」

 笑香は頬を赤くした。

「もう。それはいいから」

 笑香はわずかにうつむくと、どこか照れくさそうに続けた。

「仲林さん、年上の彼氏がいるんだって。仕事しながら教えてくれた」

 肩をすくめて言葉を継ぐ。

「あの後テントにもどったら、仲林さんに『何か誤解してない?』って言われて。それで少しだけ話を聞いてもらったの。そうしたら、『何でもできる人が彼氏だと、ついていくのが大変だよね』って。でも無理してついていかなくても、待っててあげればいいんじゃない? って言われた。何もしてあげられなくたって、こうやって話を聞くだけでもいいんだよ、って教えてくれて。──なんか感動しちゃった」

 僕は黙って床を見た。ぽつりとつぶやくように言う。

「何でもなんてできないよ」

 深々と息を吐き出す。

「君のそばにいるために、ずっと努力してただけだ。……今だって、君に嫌われないようにするだけで精一杯だ」
「うん。わかってる」

 笑香は微笑んだ。

「だから、今度は私にも手伝わせてね。何でも私に相談して。私がアドバイスした方が、失敗する確率が高くなるかもしれないけど。でもたまには史郎君が失敗するところも見てみたいから」

 僕はくすりと笑いを漏らした。
 そうか。僕は今まで笑香に何も聞かなかった。笑香のことは考えていても、笑香の気持ちはたずねなかった。
 僕は笑香を見つめると、おだやかな口調で約束した。

「今度は僕も君に聞くよ。何をしていいか、ちゃんと先に確かめる。その方が僕も一人で考えすぎないみたいだ」

 手をのばし、僕は笑香のリュックを持った。以前のように肩にかけると、リュックのクマのマスコットが揺れる。

「行こう。もう鍵を閉めないと」
「そうだ、私も何か夕飯になるものを買って来てって頼まれてた」

 教室から出て明かりを消す。二人きりで廊下を歩きながら、僕は聞いた。

「──今、君にさわってもいい?」

 笑香がはにかんで答えた。

「うん。いいよ」
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