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第四章 文化祭

5.

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 僕が深々と頭を下げると、新保は唇のはしを曲げた。

「どういう意味だ?」

 その時、僕の目の前にどんと大盛のラーメンが置かれた。

「お待たせしました。ネギ味噌チャーシューメンの大盛です!」

 はりつめていた空気がやわらぐ。新保が苦笑いして言った。

「まあ、とりあえず食ってみな。食いきれなかったら俺も大将に謝ってやるから」

 僕は口元をほころばせた。

     *

 それから三十分たって、僕と新保は近くのコンビニの前にいた。日が落ちるのが早くなり、照明が目立つコンビニの店先にはおでんののぼりが立っている。
 僕がペットボトルのお茶を飲み干すと、新保は面白そうにたずねて来た。

「いつの間にあんなに食えるようになったんだ?」
「あの後、練習したんだ」

 つとめて冷静に答えるとこらえきれなくなったように吹き出す。自転車のカゴにバッグを放って、新保は缶コーヒーを開けた。

「前とくらべてずいぶん冗談がわかるようになったな。柿崎の影響か? そういえば、最近柿崎も明るくなったみたいだな。一組にもしょっちゅう遊びに来るし」
「よく見てるな。……笑香とは仲直りしたんだ」

 僕はおだやかに答えた。新保が僕の顔を見る。

「君のおかげだ。色々あったけど、僕も反省した。全部話すわけにはいかないけど──君には迷惑をかけたと思ってる」
「愛の力か。さすがだな」

 新保は僕の双眸を見すえた。
 僕は黙って見返した。
 数秒後、すっと新保の視線が抜けて、僕は自分の両肩に力が入っていたことに気づいた。

「お前ら、一体何なんだ」

 大きな体をのそりとゆらし、缶コーヒーを一口飲むと新保は再び僕にたずねた。

「お前も柿崎もおかしいし、お前達の関係は異常だ。お前の正体も、柿崎の反応も、全部ひっくるめて狂ってるとしか思えない」

 僕は再び微笑んだ。新保はあきれたように首をすくめた。

「だけど、柿崎にふられた時点で俺にはもう関係ない。聞きたいことは山ほどあるが、聞かない方がいいんだろう。お前の本当の姿をバラしたって誰も信じやしないしな。……そういうわけで、お前に礼なんか言われる筋合いはない」
「──ありがとう」

 僕の答えに天を仰ぐ。

「だから礼なんか言うなって言ったろ。もてるヤツは余裕があるな。俺なんて同じ人間に二度もフラれたんだ。かっこ悪いったらありゃしねえ」
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