【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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第二章 おもちゃの密室

4.

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 僕が笑香の体を奪って二週間の時が過ぎた。

 夏休みも佳境に入り、残りの半月が気になるころだ。新学期が始まったらすぐに学力テストがあるし、生徒会の活動で体育祭の準備があるため、競技に使う備品の資料を先に作っておかなければならない。それから、次の文化祭に向けての資金集めのリストもある。だが、まだまるで手をつける気になれなかった。

 それでも夏は容赦なく、僕達の上を行き過ぎる。
 前にも増して僕は毎晩悪夢に悩まされていた。真夜中過ぎにうなされて、まといつくような夢の内容に汗びっしょりになって目を覚ます。そのまま眠れずに夜を過ごし、重苦しい空気を背負った朝の光を迎えるのだ。

 睡眠不足のせいなのか、僕は言い知れない焦燥感に襲われるようになっていた。自身の感覚が鋭敏になり、ちょっとした刺激でもすぐに勃起してしまう。
 いくら一生の中で一番性欲の強い時期だからって、これは異常だ。
 今にも暴発してしまいそうな、危ういそれの状態は、まるで僕達の関係そのもののようだった。

     *
 
『どうだ。元気か?』

 家の電話を取った僕の耳に、一番聞きたくない声が聞こえた。

「……何の用なんだ」

 僕は舌打ちをおさえて言った。
 しまった。出るんじゃなかった。いつもなら家の電話は着信相手を確認してから出るのに。今日は少々気がせいていたらしい。

『いや。もう、夏休みなんだろう? お盆の間はこっちに来ないか。そっちのお盆は七月でも、こっちは……』
「行かないよ」

 僕はすげなく言い切った。

「学校の生徒会活動もあるし、休みの間は笑香と勇人に家庭教師を頼まれてるから」

 生徒会活動は嘘だ。二学期の初日に会議が決まっているだけだ。

『でもお盆休みくらいあるだろう。こっちじゃ親族がみんな集まるし、お前一人がいないのは……』

 体裁が悪い、か。たたみかけるように続ける声音に、僕は哀願を感じ取った。

『墓参りのこともある。お前が嫌なら別にするから、一度こっちに来てくれないか』

 僕があっさり電話に出てしまったせいか、めずらしくあきらめが悪いな。
 僕はいらだちを押し殺し、低い声でつぶやいた。

「母さんの墓はこっちにあるし、そっちは僕がいないほうが楽だろ?」

──あんな恐ろしい事件にも巻き込まれた子供。
──ここに来てから、一言も口を利かない。あの、目。かわいげのない子だよ。死んだ母親にそっくりだ。

 結局あの時も、その前も、あんたは助けてくれなかった。

「とにかくそういうわけだから。またおばさんに電話して、余計なことを言わないでくれ」
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