【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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第一章 スパイダー

20.

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 小さくため息をついた後、大西は気が抜けたように肩をすくめてつぶやいた。

「まったく、あの子も大げさなんだから。水嶋君が心配なのはわかるけど、あんなに落ち込まなくたって。……そうそう、昨日テニス部の部会で『強引なラインの交換等、先輩からの無理な勧誘があった場合は遠慮なく相談して下さい』って言われたの。笑香の時みたいなことが他の部活でもあったらしくて。笑香をさそった例の先輩、かわいそうなくらいしゅんとしちゃって。あれは相当しぼられたね」

 思い出したように告げる大西に僕は微笑んで答えた。

「それならよかった。少し心配だったんだ。笑香にはいざとなれば僕がいるけど、中にはそういうことが言い出せない子もいるからね」
「水嶋君、優しいね」

 大西が感激の表情を作る。

「笑香もぜいたくよね。こんなよく出来た彼氏が不満だなんて。後で一言言ってやらなきゃ」

 親友がこれくらい単純なら、他の友達もだますのは簡単だな。
 僕は余裕の笑みを浮かべた。

     *

 昼休みの終わり頃、僕は五組の中をのぞいた。大西とクラスの女子に囲まれ笑香が何か話をしている。

「笑香。ちょっと」

 僕が外から声をかけると、大西を含めたまわりの女子が一斉に色めきたった。

「ほら、来た」
「意地張ってないで、早く仲直りしなよ」

 笑香はかたい表情で、戸口に立っている僕を見つめた。

「……何なの」
「ここじゃ何だから」

 言って、笑香を外に連れ出す。教室の中で女子がひとしきりさわぐ声が聞こえた。
 僕達は足早に教室から離れた。人気のない専門室棟に入り、今はもう使われていないPC教室の前で足を止める。無言のままでついて来た笑香を僕は中へと連れ込んだ。
 平行に並んだ台からはすでに機材が撤去され、今は奥の準備室が物置部屋になっている。

「こまるな。僕達はつきあってるんだから、あんまりそっけない態度を取られるのは。今は何とかごまかせるけどそのうち不審がられるぞ」

 僕が低い声でとがめると、笑香は顔をそむけて言った。

「昨日、テニス部の先輩にごめんって謝られたわ」

 僕の顔を見ないまま、笑香はしわがれた声音で続けた。

「そんなに迷惑だと思わなかった、もう二度とつきまとわないって。──史郎君、いったい何したの」
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