【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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第一章 スパイダー

10.

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 笑香は僕の顔を見た。優しかったはずの僕から初めて放たれた冷酷な視線。有無を言わせぬ迫力に、気圧されたように僕を見つめる。

「今日……休み時間に、急に美優に言われて……新保君も一緒にって」

 そうか。
 僕は舌打ちをした。紹介を僕に断られて、今度は大西に頼んだのか。思ったよりもしつこいな。

「大西は何て言ってた?」
「別に……。映画を見に行くのに、三人じゃおかしいからもう一人誘おうよって……」

 そこまで言って不意にうつむく。

「美優はもう、私達がつきあってるんだと思ってるみたい」

 僕はわずかに目をすがめた。
 笑香は小さく言葉を続けた。

「昨日たまたま手をつないで歩いてる所を見られたみたいで……ちゃんとみんなに言った方がいいって」

 なるほどな。僕はひそかにほくそ笑んだ。そこまでお膳立てされているならますます好都合だ。

「いい友達を持ったね」

 笑顔で言うと、笑香は僕をにらみつけた。僕はさりげなく腕をのばすと笑香のそばに身をよせた。

「それなら、ありがたくその機会を利用させてもらおうか。僕がわざわざ工作しなくても、まわりから円満に仲を認めてもらえそうだ。やっぱり日頃の行いが大事だね」

 近づいて来る僕の体に笑香が大きく目を開く。

「な……何を」
「僕達はもうつきあってるんだろ? 少し健全な交際を進めようかと思って」

 さらに笑香との距離をちぢめる。
 僕が笑香の背中にふれると、笑香は肩を硬直させた。

「し、しろうく」
「大丈夫だよ。絶対に君を妊娠させるような失敗はしない。僕達は大学を卒業した後、まわりに祝福されながら幸せに結婚するんだ。それまではきっちり避妊するさ」

 笑香の顔をのぞき込む。その顔色は青ざめていた。

「な……」

 隠しきれない動揺にそのつややかな唇が開く。僕はかまわず顔をよせ、笑香の頬に唇を押しつけた。
 はじめは軽く、そして強く。笑香の背中が大きく震える。
 そっと自分の唇を離して僕は耳元でささやいた。

「ずっと、夢に見てたんだ」

 笑香の甘い髪の香り。こんなに近くで嗅ぐのは初めてだ。

「ずっと君にこうしたかった」

 もう一度、今度は形の良い耳にキスをする。笑香は固く目を閉じた。長いまつげがぬれている。
 笑香の腰に腕を回して、僕はそのままゆっくりと自分の体重をかけた。

「──え」

 ただ目を閉じて耐えていた笑香がはじかれたように僕を見る。
  押し返そうとする手を捕らえ、僕は笑香をベッドに押し倒した。

「ま……待って史郎君、ここは……!」
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