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74.耽溺 3

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 あおりたてられた劣情からかしゃがれ声でグラタスが責める。喉の奥から嬌声をまき散らし、ミラは絶頂に達した。が、汗ばんだ彼の体はミラの手足を捕らえたままだ。背後から強くからみつかれ、中でしごくような形で激しく抜き差しされる。

「いや……だめ……もう……また、いっちゃ……あ、あああ──‼」

 はちきれそうにふくらんだ中にあるものを締めつけて、ミラは何度目かの高みに昇った。勢いよく出されたものを愉悦の中でしぼり取る。
 目もくらむような絶頂の中、ミラは意識を失った。

     *
 
 一晩明けて、グラタスは寝台にミラを寝かせたまま、休日の拝礼に出て行った。彼の匂いが残る毛布の中に包まれ、ミラは思った。

──次に会う時、リアトリスにどう言い訳すればいいのかしら?

 サイランから結婚について知らされ、さらに拝礼までもサボったミラへの反応が恐ろしい。

 休日の朝の拝礼はいつも親友と待ち合わせ、二人並んで説法を聞くのが今までの習慣だったのだ。前の師教の時はそのまま仲良く居眠りをしていたが、さすがにグラタスに代わった後で眠ってしまったことはない。けっこう話が面白いし、説法をしながらグラタスが無作為に質問を投げるので、のんびり寝ている暇がないのだ。

 女神に祈りをささげるために、表に面した拝礼所の方で人の気配が集まりつつある。ミラはぼんやりまぶたを閉じた。神に一番近い場所で、清らかであれと説法をする人間に真逆のことをされ、ミラは眠りの中に落ちた。

 後で聞いた話によると、情事の熱もさめないままに拝礼に出たグラタスは、それこそ淫魔も顔負けの色気をたれ流していたらしい。どこかけだるい空気をまとった彼の視線が向けられるたび、前に座った女性陣から甘いため息がもれたという。
 師教が朝の拝礼で女性を誘惑してどうするのか。夫の悪行を親友に明かされ、ミラは深く頭を抱えた。

     *

 ミラが再びまぶたを開くと、部屋の窓から入る光は夕暮れの色を帯びていた。
 だるい体をおして起き上がり、足腰に響く鈍痛にうめく。二度目とはいえ、前回以上に激しい行為の後遺症だ。再会した時の宣言通りに同じことを繰り返されてしまった。

 脇の机に用意されていた水差しとうつわに気づく。喉の渇きをいやした後、おそるおそる自身の状態を調べた。腰のあたりまでのびている自分の髪を確認する。前回術を使った時より伸びた長さが短いのは、魔性のものの力量と関係があるのかもしれなかった。

 きしむ体に目をやると、首筋と胸と太腿の内側がものすごいことになっていた。紫色の愛撫の跡があらゆるところについていて、おかしな病気にかかったみたいだ。しかし汚れたはずのシーツは新しいものに替えてあり、ぬるぬるしていた足の間はぬぐわれたようにきれいだった。

 ミラは思わずこめかみを押さえた。誰がやったかと言えば、この部屋の主に決まっている。自分の意識がないうちに一体何をされたのか、ちょっと想像するだけでぎゃあっと叫び出したくなる。
 心を落ち着け、とりあえず服を着ようと周囲を見回す。とんとんとノックの音が響き、あわててそばの毛布をかぶった。

「ミラ? 大丈夫ですか」

 扉を開けて入って来た夫は穏やかな表情を浮かべていた。休日らしく、普段着ふうに洗いざらしのシャツを着ている。
 術で疲労が取れたのか、軽快な身ごなしで歩く姿はいつもよりさわやかな印象だ。どう考えても昨夜襲われた淫魔とは全くの別人である。

「先ほど部屋をのぞいた時はよく寝ていたようなので……。食事の用意ができました。少しは食べられそうですか?」

 彼が語った解釈の相違にミラは口元を引き下げた。全然大丈夫じゃないし、「気を失っていた」の間違いだ。
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