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しおりを挟む「麗一」
「うん」
「……俺」
羞恥で掻き消えたくなる自分を奮い立たせるのは、最上級の快楽と、相手のひたひたに満たされた顔だ。その味を知っている。逸って喉が鳴る。どうしようもなく渇いている。
「れ、たい」
出っ張りできもちよくなるはずの空護が、泣きながら顔を真っ赤にして呟く。羽織った黒いシャツの下で麗一の肌がそそけだつ。思わず口元がゆるんで、悪い笑みが浮かんだ。慌てて強くうつむいて隠すと、空護のむきだしの太腿から引き締まった腹、うすっぺらい胸へかけて掌を這わせる。
尖った乳首に指先をわざと引っ掛けると腫れぼったい縁がヒクヒク応えた。もうこんな身体になって、女の子は抱けないかもしれない。仄暗い悦びを覚えて目を細める麗一に、焦れて空護がもう一度、呻くように命じた。
「いれろよ、麗一」
顰め面の髪のあわいで、正直な耳が、焼け落ちそうに色づいていた。どちらからともなく顔を寄せ合い、視線を交わして、空護が舌を突き出して麗一の唇をかるく舐める。許しを得てくちづけは深いものへ変わっていった。
多忙に阻まれ触れ合わずにいた代償がこの爛れた生活だ。麗一の回復のみに没頭できる環境を用意したと言われたので、別荘の主である波知乃には織り込み済みなのかもしれないが、本当にプレイするか食べるか眠るしかしていなくて眩暈がする。家でもない場所でこれは無かった。すくなくとも空護の感覚ではそうだ。
仕事は当然行けていない。麗一もときどきリモートで指示を送るけれど、基本は部下に任せているらしい。今日で何日目になるのか、とりわけ寝室では昼夜の区別すら曖昧で、ただずっと微温湯のような快楽に浸されている。
「は、あ……っ」
「イイ……おく、きてる……」
汚さないよう空護もスキンをつけてもらってから、服で散らかる座面に膝立ちになって背後から麗一を受け入れる。既にほぐれてひと息に最奥を明け渡すと空護は長い息を吐いた。麗一の腕が腰にまわる。一度強く突き上げられて、嵌まるとそのまま捏ねるようになかを刺激された。
あの夜痛めつけられた以外にも色の異なるすこし古い痣が麗一の腕や太腿にはあった。プレイ中にしつこく尋ねると、自分でしてしまうのだとしぶしぶ教えてくれて、Domとしてまるでケアできてなかったことを空護は心から悔いた。
だからというわけでもないけれど、コマンドを使えばどうにでもなるし嫌なら撥ね退ければいい行為も、付き合ってやりたくて最大限協力している。空護をきもちよくさせたいと励む麗一の好きにさせてあげることで、償いの気持ちを示しているつもりだった。
それにしても本能に突き動かされているためか知らないが、麗一のタフさにはびっくりする。空護のほうが若いのに、役割が違うので比べても無意味かもしれないけれど、くたくたで、その原因に気が付いてちょっとだけ悲しくなってしまった。
(あ、また)
逞しく張り出した部分を弱点に引っ掛けられて、慣れない感覚が疼きだす。反応が変わるのか麗一の呑み込みが早いのか、逆に空護に眠れる才能があったのか。予感を拾って思わず身構える。
時間をかけて前後動を繰り返し、感じるところは念入りにかきまわす。挿し込んでいる麗一でなく、おさめている空護の快感を優先する動きに覿面に高められる。内壁が熱芯を不規則に締めつけて、まるで何かを促しているようで居た堪れない。
「あっ、……ん、」
「空護すごい、きつい、ッ」
「……だって、イキそ……っ」
腰をつかんでいた麗一の手が前に降りてきたが、そこは然程逼迫してないのを覚ってまた元の位置に戻った。胎内から強めに刺激されて今度は声が洩れる。腿がこわばる。反射的に縁に力がこもって、肩口に歯を立てられた。その痛みにすら今の空護は昂奮した。
感じていることを言葉におろすのも無理になって、壊れたように喘いでいた。ソファの背凭れに覆いかぶさるようにしがみつき、強烈な官能の波に目をきつく閉じる。こすられることによって生まれた熱が、空護を内から押し上げる。もう止まらない。
肌が鳴るほど打ちつけられて膝が衝撃を支えきれなくなっていた。恰も逃げようとするみたいにずれていく腰を麗一に抱え込まれ、片足を持ち上げられて、不安定な体位はより深くまで彼の侵入を可能にした。
「ぁつい、……ぅ、あ」
「空護」
「うん、イイ、よぉ、もっと」
いつもより奥まで届いているような気がして、すこし怖かった。決して乱暴にはせず、ふたたび思いやるような速度に戻って硬いまま擦りつけられて、あっと思う間もなく唐突に空護はのぼり詰める。
ひくっと喉がわななき、震えながら突っ張った身体とは打って変わって活発に顫動する内壁に、麗一もとびきりの締め上げを食らってうすい被膜の中にたっぷりと迸らせた。
「っは、あ、……はあっ」
「空護?」
「うっ……く、ァ」
快感がおさまらず、達したのにまだヒクついて麗一を舐めしゃぶる粘膜に空護のほうが困惑していた。重だるい手足にはろくに力も入らないくせ内臓が勝手に快楽を貪る。
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