ピーチな夜、ソマリの朝

ゆれ

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ピーチな夜

07

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「あ、だめ、だめ、それよせ、っうあ、もれ……~~ぅうっ!!」

 億斗が、爪先を丸めてぷしゃあっと切っ先からとうめいな体液を吐く。粗相をしたと思い込んで眦から大きな涙をぼろりと零す顔も可愛いけれど出たのは潮だ。そうと教えてもそれはそれで絶望しそうで、まあいいかと後回しにする。

 わけがわかってないうちに垂直に近い挿入で畳み掛ける。やわらかく開いてきゅうっと抱きしめ、ぽってりと熱を帯びて受け止めてくれる億斗のなかは俺のためにこの世に生まれ落ちたんじゃないかと思ってしまうほど、葵をとめどなく甘やかし、ぬくぬくと満たした。

 もういく、と焼け付くように思いつつじゅぼじゅぼと物みたいに無造作に扱って、傲慢に自分の快楽だけを追って行き止まりのさらに向こうへくぐり抜け、思いっきり放出する。意図しない節制生活の成果か自分でもいつもより多いような気がした。長いそれがようやく終わると、億斗はもう湯あたりしたみたいにぐったり潰れていた。

「はあ……腰抜けたわ」

 そのまま白い肢体に絡みついて静かに脱力する。葵の重みを受けても文句が出せないほど億斗は消耗していた。動きだけなら葵のほうがいろいろやって実際に身体も使ったけれど、内から作用を起こされてそれに振り回されるほうがうんと疲れるのだろう。労るようなキスをあちこち降らせて、最後に初めて唇を重ねる。

 心とろかすようなやわさに後戻りはできないと確信に満ちて思った。これは俺のものだ。まだ腰を繋げていて、それでもたぐり寄せるように掻き抱いてくちづけに溺れる。突き入れた舌をぐるりと巡らせ、唾液を啜って、弱い上顎の天井を尖らせた先っちょで執拗に舐る。億斗は背筋を震わせて悩ましい息を洩らした。

「……ん、ッは、……はぁ……」
「すげぇヨかった」

 胸板に頭をのせて尻に手をまわし、ふたたびやわやわと揉み込む。本当に極上の手触りと弾力。飽きることなく一日中でもこうしていられる。

 きちんと脱がないでやってしまったためスーツのパンツがえらいことになっていた。まとめてクリーニングに出せば朝には綺麗になって戻ってくるだろうが、このベッドの惨状といい笑ってしまう。覚えたてでもあるまいに。どんだけ必死だよ。

「……抜きたくねえなあ」
「オイ」
「俺ここに住むわ」
「ざけんな」

 しかし抜いたら抜いたで出したものが別の惨状を生むだろう。バスルームはすぐそこのドア。一等客室はトイレも別だった。
 オシ、と唱えて葵は億斗に腕をまわしたままゆっくりと起き上がる。力に不安はない。

「このまま風呂いくぞ」
「っぁ……や、んんっ!」

 駅弁かよとニヤニヤしながら零れないように押さえて何とか隣へ移動した。名残惜しく降ろして立たせ、傷つけぬよう、注意深く抜き取ると億斗が達した時のような声を上げてうしろから白濁を滴らせる。また勃ちそうになって勘弁してほしかった。彼をバスタブに座らせ、倒れないようにしてから一旦衣類をまとめ、フロントに連絡してベッドメイクも注文する。

 戻っても億斗は動いた形跡がなかった。腕を曳いて立ち上がらせ、つらいならつかまっていいと葵の肩に手を掛けさせてシャワーで流していく。ボディソープを掌に取って泡立てながら肌を撫でた。うつむいて伏し目がちの表情も美しい。やはりそれを商品として売っているだけのことはあって、全然普通じゃないなと改めて彼を頭のてっぺんから爪先まで眺めて思い知った。

「億斗は、モデルか」
「……そー」
「なんでツラ出さねぇんだ?」
「さあ、顔は大したことねぇんだろ。身体ばっか褒められるから」

 泡塗れの手は腰から尻へと滑る。堂々と揉んでいると、何か言いたげな視線を寄越された。だって気持ちいいのだ。ぷりっとして吸いつくような感触。ぎゅっと押し潰して間をこすって達きたい。あとでやってみよう。

「あんたみたいな顔が付いてたらよかったのかもな」
「は? それの何がいいんだよ」
「……陣太は? 何の仕事してんの」

 それを終に訊いてくるか。何となく予想しているのか、まったく思ってもみないのか、億斗の表情からは読み取れなかった。二回して朦朧としている。初体験でもあるだろう。

「ヤクザ」
「……マジで」
「おう」

 答えて背中の龍を億斗にちらりと見せる。腰までびっしり入った刺青だ、お洒落目的じゃないことくらいひと目でわかるだろう。確かめるように指で肌を辿られて、ぞくっと背筋が粟立つ。

 今のところ指を欠くようなヘマはしていない。銃創もない。刺されたことは若い時に一度あって、脇腹に大きくはないが目立つ傷痕がある。両耳にはもうあける場所がないほど穴があいている。どこにも傷のない、ピアスもない億斗のまっさらな身体に比べると汚いものだった。

 だがその美しい男は、葵の身体を見て「きれいだな」と言う。

「変な奴」
「俺みたいなの喰っちまうあんたのほうがよっぽど悪食だと思うけど」
「億斗は綺麗だろうが」

 外さなかった首輪が瑞々しい肌に映える。敢えて何も言わず、葵はいきなり億斗のなかにつぷりと指を沈める。

「んっ、……あ」

 重力に従っておりてきていたローションと体液の混合物をゆっくり掻き出していく。もう一本増やして内壁をずるずる指の腹でこすり、あとからあとから際限なく垂れてくるのに苦笑した。どんだけ中出ししたんだよ。最近ご無沙汰だったのもあってか、夥しい量だ。
 
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