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ピーチな夜
04
しおりを挟む「えっ」
信じがたいのも無理はない。潮の匂いも客室ではしないし波の揺らぎを感じるほどちゃちな船じゃない。海の上のマンションと呼んでも差し支えない。男も冗談をしたとでも思ったのか、ふはっと気の抜けた笑い声を洩らした。その隙を突いて前戯を再開する。
ちゅぶちゅぶと破裂音を伴って出入りする指に合わせて縁が盛り上がり、一瞬めくれそうになるのが途轍もなくいやらしい。早く別のもので試したかった。やわやわと入り口を揉み込むと中からにゅるんと垂れてきて、女みてえだなと葵は目を細める。
伸ばしてあわく開いていた脚が、半端に逃げようとして膝を曲げた所為で尻が若干持ち上がり、見せつけるようなポーズがずるかった。男に意図はないにしてもだ。敢えてそのまま動けなくしたので、ついでとばかりに写真に撮る。いいネタになるだろう。複数の意味で。
「あんた誰だよ、っなあ、こんなこと、やめてくれ、」
「は? まだ何もしてねえだろうが」
「だって今、あんた」
「俺様が何だ」
言ってみろ、と促す。わかりやすいようひときわ激しく、速い動きで指を往復させるとくちの周辺がヒクついた。よもや非処女じゃねえだろうな。いちいち反応がえろすぎて疑わしくなってくる。
「お、れの、ケツに、ゆっ……ゆび、いれ」
「何本だ?」
「えっ……そんなの、わかんねぇ……」
「三本だわ。このガバマンが」
「なっ、」
裸のうなじあたりまで男がカッと肌を染めた。言葉に対する反応を見るにやはり不慣れな印象もするか。だとすると、とんでもない逸材を見いだしたのかもしれなかった。いくらこの界隈でもさすがに男が男に奉仕するシノギは聞いたことがない。まあ下げ渡すつもりも今はないので、考えるだけだけれど。
「男に変な言葉使うな、バカッ」
「あぁ? この俺に向かってバカだと? 死にてえのかてめえ」
「どうせそのつもりなんだろ!」
たしかに、目覚めたら海の上に連れてこられ、裸で押さえつけられて、尻の穴をほじくられればそんな気にもなるかもしれない。これで誕生日パーティーに特別ご招待しただけですなどと言われても説得力のかけらも感じられないだろう。
だが葵がこの男に突きつけたいのはドスでもなければ、チャカでもない。服の中で窮屈そうに出番を待ち続けているけなげな己の分身だ。その一心で、女にもしないほど丁寧に丹念に、下準備をしているというのに。
「変な言葉じゃねえよ。ただの事実だ」
「……はあ?」
相手がヤクザと知らないからか男の受け答えは遠慮がない。恐怖心も過ぎると開き直って胆力になる。その境地にいるのだろう。
最後にもう一回ローションを足して自身にもたっぷりとまぶしつけて。
「ここに、俺がブチ込むからよ」
「うっ」
薄赤く色づいた窄まりが、押しつけられた切っ先にそって伸びながら拡がる。周辺の肉が侵入してくる器官のみっしりした質量にどかされて変形する。張り出した部分さえくぐれば呑み込むのだろうが、ここで強引にしないのが得策だとは直感で理解していた。
男の締めつけは指で感じるよりもっと強く、思ったより手前で動けなくなる。声も出せない相手もさぞや痛いのだろうが葵もきつい。一気に汗がにじんで、邪魔くさいのでシャツを脱ぎ捨てた。あらわになった背には飛龍の刺青が躍っている。
「痛……いたい、っあ、やめ」
「やめねえよ。落ち着いて、息しろ。まだ動かねえから」
というより動けない。万力で締め付けられるようだ。ほんのすこし萎えた気がしたが、挿入のために自分が彼の尻を押し広げている事実に、光景にグンと育ってしまった。そしてやばいくらい手触りがいい。すべすべと撫でてむにゅむにゅ揉む。また硬くなる。
「うあぁ、……っでか、……くるし、ぅっ」
「悪い」
でもこいつも悪くないか、こんなえろい尻を見せつけてきて。早く根元まで突っ込んで下腹で弾力を愉しみたいのだが、そこまで到達するにはどう頑張っても相手の協力が必要不可欠だ。葵は仕方なく、男の腹に手をまわして萎えて押し潰されている性器を握り、強めに扱き始めた。
尻は好きでもここにはできることなら触れずに終わりたかった。他人の男性器など見るのもテンションがさがるし同性にさわられるほうもおなじだろう。この男も、目を塞がれているので無防備に許しているがもし見えていたら全力で抵抗したに違いなかった。筋違いではあるけれどいくらか同情する。
しかし今は、身体からこわばりを解いてもらうため、或いはこの行為を快楽と上書きしてもらうために必要な手段だ。是非とも感じてほしい。幸い背後からしているので自分を慰める感覚で施せる。男が頭をもぐらせ、上体を丸め込んでくると枕を取り去って腰を持ち上げ、膝立ちで尻を掲げる体勢をとらせた。手がつけないので不安定だが他の枕を傍に置いて埋めてやると噛んで声をこらえていた。徐々に快感を拾って、男も勃ちあがっている。
先端から溢れる体液を全長に塗りたくり強めの加減で指の輪を上下させる。傘の部分を指で弾いたり巻きつけて擦るといっそう呻き声が顕著になった。びくびくと腹が波打っている。ここもうっすらと割れていてうすっぺらく、縦型のへそが綺麗だった。誰かに見せる、見られるという意識がこの男を常に磨いているのだろう。
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