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しおりを挟む立てた膝を寄せ合い何度もちいさく尻を跳ねさせて達し続けている杏里が、何をしてほしいかなどわかりきっている。ガクガクと痙攣のとまらない下半身を明治の手にすりつけるようにして腰をくねらせ、なかもうねうねと被膜を隔てて指をしゃぶる。一度寝た相手には全部こうなのだとしたら、心配すぎて胃がいくつあっても足りそうにない。
どういう道程を辿ってかはわからないがこの子が一生ものの恋に憧れる性格でよかった。もし刹那的な熱情を優先させていたら、今頃とんでもないビッチになっていたに違いない。埒もない考え事をしていなければ限界を超えそうで、明治はふーっと長く息を絞る。それにすら感じて身悶えた杏里が、覚束ない所作で手をのばす。
指でも結びたいのかと思った自分はまあまあロマンチストだった。そう恥じ入らざるを得ないほどあけすけに、痺れを切らした彼は自ら尻を開いて、きゅうっと明治の指を食い締めるのを見せつけるというもう殆どビッチみたいなことをやってのけた。
「ここ、ちょうだい、っ」
「おっ……まえは、……この、いい加減にしろ!」
「ひあ、ッ……~~ンンあっ♡」
ずるりと勢いよく手を引き抜き避妊具を毟り取って、もっと太くて長い硬いものをずぶんと突き入れる。急に質量を失ったことなど自覚させないくらいの立て続けの挿入に根元まで呑んだだけで杏里はまたのぼり詰めた。ビクビクッと大袈裟に撓う痩身を力一杯掻き抱く。ずっとこうしたかった。さすがに明治は挿れただけでは達しなかったけれど、途方もない多幸感に腰が痺れた。
身体は憶えているのだろうか。初めてなのに初めてじゃない相手を。ゆうっくりと大きく円を描き、それ自体のみっしりとした質感をねっとりと内側に味わわせる。表面のおうとつや張り出した傘、一番太ったところ、赤黒くグロテスクに本性を剥き出した明治を孕んで杏里は嬌声をかみ殺して震えている。腿裏に掌を押し当てると縁の肉がさざめくところまでつぶさに見えた。恥知らずに自分で拡げていた彼の手は、今は明治の手に止めたいのか止めてほしくないのか曖昧な力で絡んでいる。
「ふっ、んっ、んんぅ、七緒……すげぇ、硬っ、……ぅぁっ」
「誰と比べてんだ、俺か?」
それならまあ許すが、お褒めの言葉をいただいたのでゆるゆると突き込みを開始した。指で散々いじめた箇所を熱芯でも抉る。引っ掛けるように揺らし、ひときわ声が高くなったらそこを執拗に穿った。待たされた甲斐はあったのかどうなのか、杏里をよがり狂わせたくて仕方ない。延いてはそれが明治をも昂らせる。自分でもいつもより興奮している気がする。
仰向けの体位でも股関節がやわらかいのか杏里は然程苦しそうではなかった。臍の下あたりを外から手で押し込みながら内から切っ先で狙い澄ます。ゆったりとした無理のない律動にふやけた顔をして、口端からよだれを垂らす彼の目の中にハートが飛んでいる。絶えず顫動する壁に締めつけられて明治もだいぶ高まってきた。
「はは、すげえヨさそうだな、杏里」
「……ん、きもちぃ、あぅ」
すれすれまで抜き出して、ぐちゅう、と突き入れる。きゅっと杏里が爪先を丸める。脚に腕をかけて引き寄せると明治はくちの外に出した舌で内腿をなぞった。れーっと線を引いてきつく吸い上げる。そんなことにも敏感に応えて薄い腰を震わせる杏里はとうに液だまりを埋めていた。角度は半ばくらいなのにビクビクして体液を垂らし、明治の動きに合わせて揺れる。
「ぉなか、あつい」
「そうか」
「もっとして、七緒」
自分の台詞に感じたみたいに収縮し、ぎゅうっと明治を食い締める。また達しているからか動きづらくなるほど戒められながら、人工のぬめりを借りて抜き差しを激しく重ねるといっぱいまで杏里のなかに己を食い込ませる。
「っ出す、ぞ、」
「あ、やっ……ふあぁ……っ!」
身体を押さえつけ、服の上から爪を立てて力尽くで動きを封じた杏里の奥にびゅうっと白く迸らせる。吐き出した明治までぐったりするような全身全霊を込めた射精に、受け止めた杏里は眦から涙を落としていた。なまあたたかい感触の広がっていくのに合わせ、早くも新しい熱が皮膚の下で燻りだす。結合部がやや上向くように腰をかかえ直すと、明治はねとねとと種を付けた腹の中をかきまわして具合を確かめた。
嵐のような呼吸がおさまりきらないうちにふたたび劣情に炙られ、さらにやわく、しっとりと従順に明治を呑み込んでくれる杏里に内側から穂先を突きつけて照れわらう。
「もっとしていいよな?」
「う……」
声を聞かせてほしいし縋りついて、泣いて、くちゃくちゃになって嫌がるまで注ぎ込みたい。二度とこの身体から自分の匂いが消えないように。名前を付ける。
全力で起き上がれないようにしてやったつもりだったのに、一時間くらい眠ると杏里はわりと回復していた。散々喘がせただけあって声は嗄れているし体中見えそうなところまで情痕に塗れ、セックスの余韻までは取れてないが不機嫌に明治を睨めつけている。
「七緒に中出しとか初めてされた」
「あっそ」
「……これ歯形」
「キレーに付いたな」
咥え煙草でベッドに座り、水を差し出す明治に横になったままぐちぐち不平をぶつけてくる。ツイと肩の痛々しい痕を指でなぞるとビクッと跳ね、もう見せませんとばかりに上掛けの中に隠れた。怒っているのだろうが随分かわいいのに笑ってしまう。
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