愛してしまうと思うんだ

ゆれ

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一生一緒にいてあげよう

05

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 よくわからないところで闘志に火を点けてしまったようだ。まあ仕事にやる気を燃やすのはきっといいことなのでその言葉は有り難くいただき、勿体ぶらずに開き直って全部脱ぐ。ヘッドボードの棚から八色が取ったゴムは箱に入っていなくて、「めちゃくちゃまとめ買いした」などと言うのでどういう反応をすればいいのか途方に暮れる。

「どうせ使うだろ」
「……まあ、はい」

 言いながら早速ひとつ破くと指に嵌めて龍のうしろにゼリーを塗り込めだした。揉みほぐして、ぬくめたローションを中に入れる。同時に指も浅くいれられ、ぐるりぐるりと回転させながら人工の滑りをまぶしていく。この段階は自分で済ませることが多くなっていたため、うつぶせの姿勢で尻を弄られながら居た堪れなさに身悶えする。

 間隙がわりと長かったのですっかり狭くなっているなかを、優しく押し開かれながらたまに弱点を掠められてびくっと腰を震わせる。寝具も寝台も買い換えたようで最早知らない部屋だが、ふと横を向いてあの大きなパンダがひとり掛けのソファに座らせてあるのに気づき、龍は秘かに口元を緩めた。捨てられなくてよかった。

「あ、んっ……んん、な、香もこっち、きて?」
「ンでだよ」
「俺ばっか、やだ」
「お前、ここだけは痩せてねえの、逆に目立ってエロすぎるわ」
「ンッ」

 尻の頬を揉みこまれて反射的に壁がヒクついてしまう。八色も指でそれを感じて、何か言いかけたがやめて舌なめずりした。ぐーっと指を開いて掻き分けたり縁を描く動きだったのが、ちゅこちゅこと抜き差しを始める。
 こすられると不埒な熱と痺れにも似た快感が急激に強まった。音が立つのはわざとだろう。見えないのに聴覚と触覚を刺激されて昂っていく。腰が動いてしまうのが自分でもわかる。早くこっちへ来てほしいのに、龍も八色をよくしたいのに何故か今夜は叶えてくれない。

 指を曲げて腹に隠していたスイッチを押され、ビクビクと腰がわなないた。一瞬意識が飛びかける。甘イキしたのか多幸感が強くなる。まだざわめいている内壁を容赦なくぬるりとかき混ぜられ、また下腹が波打った。吐く息が短く熱く炙られていく。
 こういう状況で何もせずただ寝転んでいて許されるのは美女くらいのもので、だから落ち着かなくて身体が無意識にずりあがって逃げようとする。八色に引き戻されてさらに責めを浴びる。呻く龍に、彼は献身的に施しながら「きもちいか」と素敵な声で訊いてくる。わかっているくせに意地が悪い。

「龍、ヤッてるときいつも俺の反応ばっか窺うよな」
「はっ、あ、……んで」
「まるで気にしねえのもヘタだが、お前は気にしすぎ。元彼がそうさせてたのか?」
「んっあぁっ」

 腹の下が湿ってつめたい。長々と内から高められているのに決定打が貰えず、わだかまっている熱を解放したくてシーツにこすりつけているとうしろの責めが核心を外される。越えてしまわないようにコントロールされている。ちいさな絶頂が絶えず続くと感覚が鈍って朦朧としてくる。濡れた内側を撫でつける指がまた一本増えているのに、龍はすっかり弛緩して従順に呑み込んだ。

 歩がどうだったかなんてもう憶えてない。もとより理性のあやしい時間だ、それに比べるようなことはマナー違反だから内心ではともかく、詳細に八色に教える気など毛頭なかった。緩くかぶりを振る。ぐりっ、とひときわ大きく抉られてピクンと尻が跳ね上がった。縋るものをさがしてシーツを握り込む。枕に指先が掠ったらそちらをたぐり寄せた。

「まあいい、俺は俺の好きなようにやるし、龍も好きにしろよ。接待してんじゃねえんだぞ」
「……ァ、ぃままでだって、俺、好きなよ、に、してたけど、っ」
「そうだな、させてやってたわ。年下の彼氏かわいい一心でよ」

 でも今日は、と不穏に続くので思わず肩越しに振り向こうとして、ころんと裏返される。気が利くじゃねえかとばかりに枕を取り上げられ、腰の下に入れられて、八色がようやく性器を取りだした。かるく擦っただけでガチガチに勃ちあがり、涼しい顔して本当はこれでもかと自制をかけていたのだと思うと、どうして何もさせてくれなかったのかもどかしい。
 悔しいので爪先でツツ、となぞりあげたら睨まれた。そのまま先端を足で撫でようとして「こら」と窘められる。ゴムをかぶせる手つきはスムーズで、八年の間に何人の恋人が八色を通り過ぎたのだろうと過去に嫉妬した。年上は、だからちょっと嫌いだ。心情に率直に脚を閉じる。

 天井を眺めるのはあまり好きじゃない。この隙にもぞもぞと腹這いに戻ろうとして、ガシッと腰を掴まれた。

「えっ」

 そのまま臍を見せる姿勢で押さえつけられ、腿に手をかけられて、強く押し込まれると尻が浮き上がる。ほぐされた場所が八色の眼前にさらされて恥知らずな龍でもさすがに頬が火照る。切っ先を宛がわれると反射的に縁がヒクついて食むような動きをした。

「エロい身体だな……」
「香、これ嫌だ、バックがいい」
「やだね」
「うっ……ん、んんんんッ!」

 硬く張り詰めた器官がずぶっと突き刺され、熱く潤んだ壁をこすりあげてひと息に根元まで嵌め込まれる。久し振りの交合でも丁寧な前戯の御蔭で痛くはなかったが腹が苦しくて、異物を締め出そうという動きに上から八色が感じ入った声を洩らした。もっと、膝が胸元にくっつくまで折り曲げられて腰全体で彼が圧し掛かってくる。
 
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