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22 牛肉食系女子の逆襲 ①
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家に着くなり、佐藤は冷蔵庫のコンセントを無言でつないだ。私がコンセントを抜いた時はかろうじて中のあかりが瞬いていたけれど、ついに反応すらしなくなってしまったらしい。
「うん、完璧に壊れてる」
佐藤は淡々と言い、再びコンセントを抜いて、そのまま玄関に向かおうとするので、あわてて行く手を阻む。
「そんな風に引きとめたら、俺、勘違いして、また広瀬、やられちゃうよ?」
佐藤が自虐的な笑みを浮かべ、少し嫌味がかった口調で言うので、なんだか無性に腹が立った。
「のぞむところだ!」
私が叫ぶように言うと、佐藤は目を見開いた。
「……身体目当てでも?」
ようやく絞り出すような声で言った佐藤に、噛みつくように答える。
「それの何が悪い! 私は今日、佐藤の身体が目当てで連れ込んだ!」
「ちょっと、何言ってるの、広瀬……」
「だって、あんなに気持ちよくさせられたことなんかないんだから、佐藤のこと、忘れられなくて当然じゃん!」
大体、本当にナシな男だったら、そもそも部屋になんか入れないのだ。
その証拠に、この部屋に入った男は、佐藤だけだ。就職したと同時に引っ越して、すぐに当時の彼氏と別れたから。この部屋にはもう次の彼氏しか入れない! と何度思ったか。
つまり、部屋に入れてる時点で、私は無意識に佐藤をアリだと判断してたってこと。確かに誘導された部分は大いにあるけれど、身体は頭より先に、この男だとわかってたんだ。
「いくら身体をつなげても、気持ちは縛れない」
「そうだよ! 縛れないから、好きになってほしいとか、一緒にいるのを喜んでほしいって、思うんだよう……」
「広瀬、なんでそんなに怖がってるの」
「女は受け入れる側だし、リスク高いんだから、怖いに決まってるじゃん! 相手が、佐藤が、本気じゃなかったら、つらいし、嫌だ……」
「俺は、行動で示してきたつもりだったけど」
「だったら!」
それでも不安なんだから、してほしいことをきちんと言葉で伝えることにした。
「だったら……私に対する気持ちを言ってほしいし、名前、呼んでほしい……」
「うん、完璧に壊れてる」
佐藤は淡々と言い、再びコンセントを抜いて、そのまま玄関に向かおうとするので、あわてて行く手を阻む。
「そんな風に引きとめたら、俺、勘違いして、また広瀬、やられちゃうよ?」
佐藤が自虐的な笑みを浮かべ、少し嫌味がかった口調で言うので、なんだか無性に腹が立った。
「のぞむところだ!」
私が叫ぶように言うと、佐藤は目を見開いた。
「……身体目当てでも?」
ようやく絞り出すような声で言った佐藤に、噛みつくように答える。
「それの何が悪い! 私は今日、佐藤の身体が目当てで連れ込んだ!」
「ちょっと、何言ってるの、広瀬……」
「だって、あんなに気持ちよくさせられたことなんかないんだから、佐藤のこと、忘れられなくて当然じゃん!」
大体、本当にナシな男だったら、そもそも部屋になんか入れないのだ。
その証拠に、この部屋に入った男は、佐藤だけだ。就職したと同時に引っ越して、すぐに当時の彼氏と別れたから。この部屋にはもう次の彼氏しか入れない! と何度思ったか。
つまり、部屋に入れてる時点で、私は無意識に佐藤をアリだと判断してたってこと。確かに誘導された部分は大いにあるけれど、身体は頭より先に、この男だとわかってたんだ。
「いくら身体をつなげても、気持ちは縛れない」
「そうだよ! 縛れないから、好きになってほしいとか、一緒にいるのを喜んでほしいって、思うんだよう……」
「広瀬、なんでそんなに怖がってるの」
「女は受け入れる側だし、リスク高いんだから、怖いに決まってるじゃん! 相手が、佐藤が、本気じゃなかったら、つらいし、嫌だ……」
「俺は、行動で示してきたつもりだったけど」
「だったら!」
それでも不安なんだから、してほしいことをきちんと言葉で伝えることにした。
「だったら……私に対する気持ちを言ってほしいし、名前、呼んでほしい……」
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