329 / 352
最終章 ジャックにはジルがいる
327 ピーターラビットの末裔 ⑥
しおりを挟む
楽しい時間はいつでもあっというまだ。向井と別れる時が来た。
帰りはピーターラビット号で向井を実家まで送ることにした。ドライブがてら、少しでも一緒に過ごせたらいいと思って。次にいつ会えるのか、わからないから。
もうすぐ着くという頃になって、向井が思い出したように口を開いた。
「ああ、そうだ」
「どうかした?」
「新への伝言、忘れてた」
「誰からの?」
「片岡。あいつも教員採用試験、去年まで落ちてるから、今年こそは受かるって」
「片岡と連絡とってたの?」
教職課程で一緒だったとはいえ、二人は科目が違うし、キャラ的にもそこまで合いそうな感じがしないから、正直、意外だった。
「うん。卒論の時に助けてもらったんだ。あいつ、シェイクスピアを専門にしてたから、自分自身の勉強にもなっていい、なんて言ってさ。そこから個人的に話すようになった」
「ふうん」
「渋沢と仕事できるくらい立派な教員になるのが、目標の一つになったって。教科書の執筆を依頼されるには、相当実力がないと駄目だからって」
「……向井、今度片岡に連絡取る時に伝えて」
「なんて?」
「一緒に仕事できる日を、僕も楽しみにしてるって」
向井は晴れやかな笑顔で頷いてくれた。
向井を降ろした後、僕は一人家路につく。
ピーターラビット号。我ながら咄嗟にいい名前をつけたと思う。
オフィーリアのように、悲劇を避けられないことは、残念ながらあるのだろう。
でも、現代の僕らにはもっとたくさんの選択肢がある。仲間と知恵を武器にすれば、ピーターラビットのように、強く逞しくあれるのだ。
帰りはピーターラビット号で向井を実家まで送ることにした。ドライブがてら、少しでも一緒に過ごせたらいいと思って。次にいつ会えるのか、わからないから。
もうすぐ着くという頃になって、向井が思い出したように口を開いた。
「ああ、そうだ」
「どうかした?」
「新への伝言、忘れてた」
「誰からの?」
「片岡。あいつも教員採用試験、去年まで落ちてるから、今年こそは受かるって」
「片岡と連絡とってたの?」
教職課程で一緒だったとはいえ、二人は科目が違うし、キャラ的にもそこまで合いそうな感じがしないから、正直、意外だった。
「うん。卒論の時に助けてもらったんだ。あいつ、シェイクスピアを専門にしてたから、自分自身の勉強にもなっていい、なんて言ってさ。そこから個人的に話すようになった」
「ふうん」
「渋沢と仕事できるくらい立派な教員になるのが、目標の一つになったって。教科書の執筆を依頼されるには、相当実力がないと駄目だからって」
「……向井、今度片岡に連絡取る時に伝えて」
「なんて?」
「一緒に仕事できる日を、僕も楽しみにしてるって」
向井は晴れやかな笑顔で頷いてくれた。
向井を降ろした後、僕は一人家路につく。
ピーターラビット号。我ながら咄嗟にいい名前をつけたと思う。
オフィーリアのように、悲劇を避けられないことは、残念ながらあるのだろう。
でも、現代の僕らにはもっとたくさんの選択肢がある。仲間と知恵を武器にすれば、ピーターラビットのように、強く逞しくあれるのだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
93
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる