306 / 352
第十章 扉が閉じて別の扉が開く
305 お前の光は今どこにある ②
しおりを挟む
三浦先生からメールが届いた。
『就職活動、大変そうですね。無理はしないでください。卒論は締め切りまでもう少し時間がありますし、この三年間の積み重ねがあるからなんとかなります。』
ゼミの欠席と進捗報告の怠りを責められなかったことに却って良心がとがめ、数日経った今も、返事を出せていない。
就職さえ決まればなんとかなるのに。そればかりが脳内で廻り続けている。
この苦しいスパイラルに既視感を覚えた。
私は似た状況を、既に体験したことがある。
片岡くんと付き合っている時、いつも彼の期待に応えられないことが、私は苦しくてたまらなかった。みんなが難なくクリアしていくことを、どうして私はこなせないんだろう。
私には「普通」であることがとても難しい。
いつもとてもがんばっていた片岡くん。彼は誰よりも自分に厳しかった。私が彼ほど努力したとは到底思えなかった。だから、私ができないのは甘えなのだと、ずっとそう思っていた。
片岡くんに未練がある訳ではない。私は今、新くんのことを心から愛していて、本当に大切で、ずっと一緒にいたい。
でも、みんなのように上手くやれない時に、どうしても片岡くんのことを思い出してしまい、少し胸が痛む。
就職課からIT関係の会社を紹介された。職種はプログラマだそう。私はコードを何も知らないし、資格も持っていない。不安を正直に伝えると、未経験者でも、入社前の研修でなんとかなるように鍛えてもらえるのだと教えていただけた。
とても不安だったし、面接での手ごたえも感じなかった。だから落ちただろうなと思っていたのに、まさかの内定通知が届いた。大学からの紹介というのも大きかった気がする。
ただ、嬉しいというより、ようやく終わってほっとした気持ちの方が大きかった。
本当に、本当に疲れた。
でも、まだ卒論がある。全てを終わらせなきゃ。
『就職活動、大変そうですね。無理はしないでください。卒論は締め切りまでもう少し時間がありますし、この三年間の積み重ねがあるからなんとかなります。』
ゼミの欠席と進捗報告の怠りを責められなかったことに却って良心がとがめ、数日経った今も、返事を出せていない。
就職さえ決まればなんとかなるのに。そればかりが脳内で廻り続けている。
この苦しいスパイラルに既視感を覚えた。
私は似た状況を、既に体験したことがある。
片岡くんと付き合っている時、いつも彼の期待に応えられないことが、私は苦しくてたまらなかった。みんなが難なくクリアしていくことを、どうして私はこなせないんだろう。
私には「普通」であることがとても難しい。
いつもとてもがんばっていた片岡くん。彼は誰よりも自分に厳しかった。私が彼ほど努力したとは到底思えなかった。だから、私ができないのは甘えなのだと、ずっとそう思っていた。
片岡くんに未練がある訳ではない。私は今、新くんのことを心から愛していて、本当に大切で、ずっと一緒にいたい。
でも、みんなのように上手くやれない時に、どうしても片岡くんのことを思い出してしまい、少し胸が痛む。
就職課からIT関係の会社を紹介された。職種はプログラマだそう。私はコードを何も知らないし、資格も持っていない。不安を正直に伝えると、未経験者でも、入社前の研修でなんとかなるように鍛えてもらえるのだと教えていただけた。
とても不安だったし、面接での手ごたえも感じなかった。だから落ちただろうなと思っていたのに、まさかの内定通知が届いた。大学からの紹介というのも大きかった気がする。
ただ、嬉しいというより、ようやく終わってほっとした気持ちの方が大きかった。
本当に、本当に疲れた。
でも、まだ卒論がある。全てを終わらせなきゃ。
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる