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第十章 扉が閉じて別の扉が開く
305 お前の光は今どこにある ②
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三浦先生からメールが届いた。
『就職活動、大変そうですね。無理はしないでください。卒論は締め切りまでもう少し時間がありますし、この三年間の積み重ねがあるからなんとかなります。』
ゼミの欠席と進捗報告の怠りを責められなかったことに却って良心がとがめ、数日経った今も、返事を出せていない。
就職さえ決まればなんとかなるのに。そればかりが脳内で廻り続けている。
この苦しいスパイラルに既視感を覚えた。
私は似た状況を、既に体験したことがある。
片岡くんと付き合っている時、いつも彼の期待に応えられないことが、私は苦しくてたまらなかった。みんなが難なくクリアしていくことを、どうして私はこなせないんだろう。
私には「普通」であることがとても難しい。
いつもとてもがんばっていた片岡くん。彼は誰よりも自分に厳しかった。私が彼ほど努力したとは到底思えなかった。だから、私ができないのは甘えなのだと、ずっとそう思っていた。
片岡くんに未練がある訳ではない。私は今、新くんのことを心から愛していて、本当に大切で、ずっと一緒にいたい。
でも、みんなのように上手くやれない時に、どうしても片岡くんのことを思い出してしまい、少し胸が痛む。
就職課からIT関係の会社を紹介された。職種はプログラマだそう。私はコードを何も知らないし、資格も持っていない。不安を正直に伝えると、未経験者でも、入社前の研修でなんとかなるように鍛えてもらえるのだと教えていただけた。
とても不安だったし、面接での手ごたえも感じなかった。だから落ちただろうなと思っていたのに、まさかの内定通知が届いた。大学からの紹介というのも大きかった気がする。
ただ、嬉しいというより、ようやく終わってほっとした気持ちの方が大きかった。
本当に、本当に疲れた。
でも、まだ卒論がある。全てを終わらせなきゃ。
『就職活動、大変そうですね。無理はしないでください。卒論は締め切りまでもう少し時間がありますし、この三年間の積み重ねがあるからなんとかなります。』
ゼミの欠席と進捗報告の怠りを責められなかったことに却って良心がとがめ、数日経った今も、返事を出せていない。
就職さえ決まればなんとかなるのに。そればかりが脳内で廻り続けている。
この苦しいスパイラルに既視感を覚えた。
私は似た状況を、既に体験したことがある。
片岡くんと付き合っている時、いつも彼の期待に応えられないことが、私は苦しくてたまらなかった。みんなが難なくクリアしていくことを、どうして私はこなせないんだろう。
私には「普通」であることがとても難しい。
いつもとてもがんばっていた片岡くん。彼は誰よりも自分に厳しかった。私が彼ほど努力したとは到底思えなかった。だから、私ができないのは甘えなのだと、ずっとそう思っていた。
片岡くんに未練がある訳ではない。私は今、新くんのことを心から愛していて、本当に大切で、ずっと一緒にいたい。
でも、みんなのように上手くやれない時に、どうしても片岡くんのことを思い出してしまい、少し胸が痛む。
就職課からIT関係の会社を紹介された。職種はプログラマだそう。私はコードを何も知らないし、資格も持っていない。不安を正直に伝えると、未経験者でも、入社前の研修でなんとかなるように鍛えてもらえるのだと教えていただけた。
とても不安だったし、面接での手ごたえも感じなかった。だから落ちただろうなと思っていたのに、まさかの内定通知が届いた。大学からの紹介というのも大きかった気がする。
ただ、嬉しいというより、ようやく終わってほっとした気持ちの方が大きかった。
本当に、本当に疲れた。
でも、まだ卒論がある。全てを終わらせなきゃ。
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