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第十章 扉が閉じて別の扉が開く

291 沈みかけたテセウスの船 ①

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 二度目のクリスマスは若葉ちゃんの好きなお店でコンパクトミラーを買った。最初のクリスマスの靴べらもだけれど、おしゃれな若葉ちゃんには身だしなみに関わるものがよいかなと思ったのだ。我ながら可愛いものを選べたと思う。
 今年の誕生日こそは、もう少し高価なアクセサリーをプレゼントしたい。教えてもらったお店はお手頃価格すぎるのだ。けれども、僕は他のお店を知らない。
 どうしようかと思っていたら、あっさり解決した。

「そうか。じゃあ、今度理奈ちゃんを誘って、今時の女子がどういうアクセサリーを好むのか、アドバイスをもらいながら選ぼう」
「助かるけど、そこまで頼るのは申し訳……」
「すまん。俺は今、新をダシにしようとしている」
「それはいつものことだけど、何のダシに」
「さらっと手厳しいな。理奈ちゃんの誕生日が六月だから、どういうものが好きなのか探りを入れたい」

 まさかの、向井と僕の利害の一致。

 藤田さんは快く引き受けてくれ、憧れていたお店に案内してくれるというので、向井と三人で行った。「ネックレスなら何本持っていてもいいのでは?」という意見になるほどと思ったので、プレゼントはネックレスに絞ることにする。

 藤田さんの「シンプルなものだったらいろいろ使い廻しがきいてよさそう」というアドバイスに従って、チェーンにペンダントヘッドがついているタイプのデザインを見比べた。直線的なものよりも、少し曲線的なデザインが若葉ちゃんには似合うと思ったので、花を模したペンダントヘッドのものに決めた。小さなダイヤモンドがきらりと光って綺麗だ。地金はホワイトゴールドを選んだ。銀よりも明るくやわらかな色合いが、若葉ちゃんらしい気がして。

 こうして僕は、誕生日プレゼントのネックレスを手に入れることができた。
 若葉ちゃんはとても喜んでくれて、「幅広い場面で着けられそうで嬉しいし、就職活動でもお守りがわりに着けていくね!」と言ってくれた。よかった。
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