【R18】人の好みは説明できない

第十章 扉が閉じて別の扉が開く

286 五月の薔薇を忘れないで ②

　私が的外れな行動を取っている間も、新くんの行動は、全く無駄なく的確だった。

　新くんは宣言通りTOEICを受けた。スコアがとてもよくて、すごいなと思う。私は英語が得意だと思って、油断して、初回はさんざんな結果だったのに。新くんはビギナーズラックだよと笑うけれど、少し複雑な気持ちになる。

「SPIの模擬試験も、いい点、取れてるよね」
「参考書を読んでなんとなく要領がわかったし、答に迷ったらとりあえず印をつけて先に進んだんだ。後の方に得意分野の出題があるかもしれないし」
「そういうやり方するんだ……」
「うん。SPIは全問解けない量が出題されるから、いかに一問にかける時間を短くするかが勝負だって、参考書にも書いてあった」

　私はそういうのが苦手で。一度躓くとそこで延々と時間を使ってしまう。語学検定でずいぶん慣れた気でいたけれど、やっぱりそれは得意な英語というフィールドだからなんだ。不得意な分野だと弱点がもろに出ちゃうなあ。

　就職活動も新くんは順調に進めている。新くんのお姉さんの彼氏さんが第一志望の会社に勤めているそうで、情報を流してくれるらしい。インターンシップも行ったと言っていた。正直、いいな、と思う。

「僕達二人の就職活動が一段落したら、一緒にごはんを食べに行こうって言われた」
「わあ！　楽しみ！　早く終わらせなきゃ！」

　本当に、早く終わらせたいな。