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第十章 扉が閉じて別の扉が開く
258 クーポン返せ、案を送れ ④
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僕と向井がいつものようにくだらない脱線をしていると、藤田さんがそっと訊ねてきてくれた。
「渋沢くん、ご相談ってなんですか?」
「相談というか……」
僕が言い淀むと、向井がすっとフォローしてくれる。
「元々は今日二人が一緒って聞いてたから、親睦を深めるために夕飯でもと思ったんだ。若葉ちゃんが来られないのは残念だったけど、相談といえば情に厚い理奈ちゃんは来てくれるだろうと踏んだ!」
「じゃあ、特に相談らしい相談はないんですか?」
「今日の若葉ちゃんの様子を聞かせてくれたら本来の目的は終了。引き続き、新に俺達のラブラブっぷりを見せつける会を執り行う予定」
「向井、ラッシーのクーポン返せ」
僕達の様子を見て、藤田さんはくすくす笑う。
今日は藤田さんがなんだかいつもよりも綺麗に見える。向井の隣に座っているからかな。好きな相手と接する時に輝いて見えるのは、よいお付き合いができているということなのだろう。
向井も藤田さんと付き合い始めてから、ぽつりぽつりと自分のことを話してくれるようになった。一緒にいることでよい面が引き出される変化は喜ばしいと思う。
「渋沢くんに困ったことが特にないのなら、よかったです」
「なんとなく、若葉ちゃんの様子が今までと違う気がして、ちょっと心配ではあります」
「若葉ちゃんはとても前向きに就職活動をしているように見えます。ただ、私は交流がまだ少ないので、見えてない部分も多いのではないかと」
「今日の若葉ちゃんはどんな感じだったん?」
向井が藤田さんの持っていた紙袋を指し、訊ねる。若葉ちゃんを束縛したいのではないけれど、確かに女子同士の関わりでしか見えない面は、少し気になる。
「お洋服や化粧品をとても丁寧に見立ててくれて嬉しかったです! 若葉ちゃんは似合うか似合わないかだけじゃなく、何が必要かも考えてくれて、気が進まないものは買わずに済むように提案してくれました!」
「若葉ちゃんらしいですね」
「あえて言うなら、スーツを買う時に少し『あれ?』と思ったんですよね。リクルートスーツなら、サイズを合わせるだけだから一人で買えるのに。実際、私は売り場についていっただけで、若葉ちゃんが自分で決めました」
ここでビリヤニが届いた。あつあつのごはんに、鶏肉からじゅわっと溢れ出る旨味。お祝いごとで食べられる料理というのも納得だ。食べているだけで幸せな気分になる。
「少しでも不安がなくなるといいから、何かあるなら言ってほしいという気持ちはわかります。ただ、急かしてしまって追い詰めることもあると思うので、しばらく静観してみてもいいかもしれません」
藤田さんは控えめだけど、真剣に聞いてくれる雰囲気を持っているし、きちんと自分の意見も伝えてくれる。若葉ちゃんも信頼しているのがわかる。
藤田さんの言う通り、ひとまず静観しようと思った。
「渋沢くん、ご相談ってなんですか?」
「相談というか……」
僕が言い淀むと、向井がすっとフォローしてくれる。
「元々は今日二人が一緒って聞いてたから、親睦を深めるために夕飯でもと思ったんだ。若葉ちゃんが来られないのは残念だったけど、相談といえば情に厚い理奈ちゃんは来てくれるだろうと踏んだ!」
「じゃあ、特に相談らしい相談はないんですか?」
「今日の若葉ちゃんの様子を聞かせてくれたら本来の目的は終了。引き続き、新に俺達のラブラブっぷりを見せつける会を執り行う予定」
「向井、ラッシーのクーポン返せ」
僕達の様子を見て、藤田さんはくすくす笑う。
今日は藤田さんがなんだかいつもよりも綺麗に見える。向井の隣に座っているからかな。好きな相手と接する時に輝いて見えるのは、よいお付き合いができているということなのだろう。
向井も藤田さんと付き合い始めてから、ぽつりぽつりと自分のことを話してくれるようになった。一緒にいることでよい面が引き出される変化は喜ばしいと思う。
「渋沢くんに困ったことが特にないのなら、よかったです」
「なんとなく、若葉ちゃんの様子が今までと違う気がして、ちょっと心配ではあります」
「若葉ちゃんはとても前向きに就職活動をしているように見えます。ただ、私は交流がまだ少ないので、見えてない部分も多いのではないかと」
「今日の若葉ちゃんはどんな感じだったん?」
向井が藤田さんの持っていた紙袋を指し、訊ねる。若葉ちゃんを束縛したいのではないけれど、確かに女子同士の関わりでしか見えない面は、少し気になる。
「お洋服や化粧品をとても丁寧に見立ててくれて嬉しかったです! 若葉ちゃんは似合うか似合わないかだけじゃなく、何が必要かも考えてくれて、気が進まないものは買わずに済むように提案してくれました!」
「若葉ちゃんらしいですね」
「あえて言うなら、スーツを買う時に少し『あれ?』と思ったんですよね。リクルートスーツなら、サイズを合わせるだけだから一人で買えるのに。実際、私は売り場についていっただけで、若葉ちゃんが自分で決めました」
ここでビリヤニが届いた。あつあつのごはんに、鶏肉からじゅわっと溢れ出る旨味。お祝いごとで食べられる料理というのも納得だ。食べているだけで幸せな気分になる。
「少しでも不安がなくなるといいから、何かあるなら言ってほしいという気持ちはわかります。ただ、急かしてしまって追い詰めることもあると思うので、しばらく静観してみてもいいかもしれません」
藤田さんは控えめだけど、真剣に聞いてくれる雰囲気を持っているし、きちんと自分の意見も伝えてくれる。若葉ちゃんも信頼しているのがわかる。
藤田さんの言う通り、ひとまず静観しようと思った。
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