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第八章 人の数だけ気持ちがある

183 神が愛すべき者の前奏曲 ③

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 北村さんの家には若葉がいるから、ラブホか私の家かということになり、私の家に来てもらうことにした。単なる模倣にお金をかけさせるのは申し訳ないと思ったから。

 部屋に入るなり服を脱がされ、ベッドに押し倒された。手、早すぎ。

「わー! 玲美ちゃん、おっぱいおっきいね!」
「はあ……」

 めちゃくちゃ嬉しそう。この小学生みたいなテンションにドンビキした元カノもいるに違いない。

「ずっと、すっごいさわりたかった」
「はあ……」

 ずっとヤリたかった。なるほど、少しはオブラートに包んだか。胸を揉みながら言われても、なんだけど。
 行為に慣れているのだろう、愛撫が丁寧。さすが。経験ないけど気持ちいい気がする。

「濡れてきた」
「……口に出すの、やめてください」
「えー? 玲美ちゃんが感じてくれるの嬉しいよ!」

 左様で。
 北村さんは下着を下ろすと紙箱を開け、ごそごそと個包装の封を切る。即行で押し倒されたと思ったのに、すぐ着けられるように避妊具は取り出していたのか。異様に手際がよい。

「挿れるね」
「……はい」

 ちらっと見えたものが、なんだかすごくデカく感じたんだけど。比較対象ないからわからないし、考えると余計痛そうな気がするから、考えるまい。あ、入口にふれ……

「……っいっ!」

 すごく濡れている気がしたから、大丈夫かと楽観視していたけど、やっぱり痛くて、つい、声が出た。北村さんはとてもびっくりした顔をしている。

「玲美ちゃん、その、もしかして……初めて?」
「……だったら、どうなんですか……」
「あ、いや、初めてとは思ってなくて、その」

 明らかに狼狽している。「後腐れなく楽しもうと思ったのに面倒なことになった」ということなんだろうか。

「お、俺、処女とするの初めてで要領わかんないから、痛いかもだけど、なるべく優しくするから……。セーブ利かないかもしんないけど……」

 既に痛いし、いろいろ正直すぎる。

「も、いいです。一思いにやっちゃってください」

 私がそう言うと、北村さんはぶっと吹き出した。

「潔いなあ!」

 北村さんは「ごめんね」と耳元で囁いて、そのまま進めていった。正直、その後、全然セーブ利いてなかった。
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