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第七章 雨が降れば必ず土砂降り
155 特別メニュー詰め合わせ ⑤
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「玲美ちゃんもおひさしぶり」
「……おひさしぶりです」
「元気?」
「……元気です」
「それはよかった」
一年の最初の頃、何度かうちに連れてきたから、玲美ちゃんとお兄ちゃんは面識がある。お兄ちゃん、玲美ちゃんみたいな女の子なら、上手くいきそうな気がするのにな。割といつもお兄ちゃんにパーフェクトな期待を抱くタイプと付き合っちゃうから、幻滅されて振られちゃうんだよね。玲美ちゃんみたいに自立心がある人の方が合いそうなのに。
「ねえねえ! お兄ちゃんもお昼一緒に食べようよ! あ、玲美ちゃん、お兄ちゃんも一緒でいいよね?」
「かまわないけど……」
「じゃあ、お言葉に甘えてご一緒しようかな」
お兄ちゃんは玲美ちゃんの隣の席に荷物を置かせてもらうと、お昼を買いに行った。
「急にごめんね! お兄ちゃんに会えることあんまりないから、つい」
「それはいいけど……」
玲美ちゃんが選んだのは日替わり定食だ。今日のメニューはピーマンの肉詰め。とってもおいしそう。日替わり定食、メニューのローテーション、読めないんだよね。今度いつ出るかわからないから、自分で作って食べよう。
そんなことを考えているうちに、お兄ちゃんが戻ってきて、私の隣に座った。
「お帰り! あ、お兄ちゃんも日替わり定食にしたんだ!」
「玲美ちゃんが食べてるのがおいしそうだったから」
「だよねえ! 私もおいしそうだなって思ってたとこ!」
「鯵の塩焼きも旨そうだけど」
「おいしいよ! フィッシュボーンにしてると、ついお魚が食べたくなっちゃって!」
そうだ! お兄ちゃんにも自慢しよう!
「ねえ! お兄ちゃん! 見て見て!」
「何?」
「これ! 新くんからもらった誕生日プレゼント! とっても気に入ってるの!」
「へえ。よかったな」
「うん!」
私とお兄ちゃんが話している間、玲美ちゃんはひたすらガツガツ食べ続けていた。基本的にいつも私達は食べ終わるまで無言。食べ終えてからゆっくりお話しするのが好きだし、私は二つのことを同時にできないから、喋ると完全に食事が止まってしまう。案の定、私一人、お昼ごはんが進んでいない。三限もあるし、早く食べなきゃ。
私が「喋ると食事が止まっちゃうから黙るね」と宣言して食べている間、お兄ちゃんは最近お仕事でどんなことがあったのか、いくつかのエピソードを話してくれた。お兄ちゃんの話はたまに突拍子もないところに飛ぶけれど、ユーモアがあって飽きさせない。人を惹きつける魅力って大事だなあ、なんて思いながら聞く。
その間も玲美ちゃんはやっぱり無言だった。玲美ちゃんは問われたらきちんと受け答えするし、自分の意見も持っているけれど、印象よりも人見知りだ。面識があるとはいえ、無理にお兄ちゃんとお昼を一緒にしたのはよくなかったかもしれない。私は親しい人相手だと遠慮がなくなってしまって、いいと思ったらつい勝手に判断してしまう。親しき仲にも礼儀ありだし、もっと考えて行動しないと。
私が食べ終わると、お兄ちゃんは「そろそろ行かないと」と言って席を離れた。お兄ちゃんはいつも突然現れて突然去っていく。まあ、通常運転だけど。でも、ひさしぶりに会えて、なんだか嬉しかったな。
「……おひさしぶりです」
「元気?」
「……元気です」
「それはよかった」
一年の最初の頃、何度かうちに連れてきたから、玲美ちゃんとお兄ちゃんは面識がある。お兄ちゃん、玲美ちゃんみたいな女の子なら、上手くいきそうな気がするのにな。割といつもお兄ちゃんにパーフェクトな期待を抱くタイプと付き合っちゃうから、幻滅されて振られちゃうんだよね。玲美ちゃんみたいに自立心がある人の方が合いそうなのに。
「ねえねえ! お兄ちゃんもお昼一緒に食べようよ! あ、玲美ちゃん、お兄ちゃんも一緒でいいよね?」
「かまわないけど……」
「じゃあ、お言葉に甘えてご一緒しようかな」
お兄ちゃんは玲美ちゃんの隣の席に荷物を置かせてもらうと、お昼を買いに行った。
「急にごめんね! お兄ちゃんに会えることあんまりないから、つい」
「それはいいけど……」
玲美ちゃんが選んだのは日替わり定食だ。今日のメニューはピーマンの肉詰め。とってもおいしそう。日替わり定食、メニューのローテーション、読めないんだよね。今度いつ出るかわからないから、自分で作って食べよう。
そんなことを考えているうちに、お兄ちゃんが戻ってきて、私の隣に座った。
「お帰り! あ、お兄ちゃんも日替わり定食にしたんだ!」
「玲美ちゃんが食べてるのがおいしそうだったから」
「だよねえ! 私もおいしそうだなって思ってたとこ!」
「鯵の塩焼きも旨そうだけど」
「おいしいよ! フィッシュボーンにしてると、ついお魚が食べたくなっちゃって!」
そうだ! お兄ちゃんにも自慢しよう!
「ねえ! お兄ちゃん! 見て見て!」
「何?」
「これ! 新くんからもらった誕生日プレゼント! とっても気に入ってるの!」
「へえ。よかったな」
「うん!」
私とお兄ちゃんが話している間、玲美ちゃんはひたすらガツガツ食べ続けていた。基本的にいつも私達は食べ終わるまで無言。食べ終えてからゆっくりお話しするのが好きだし、私は二つのことを同時にできないから、喋ると完全に食事が止まってしまう。案の定、私一人、お昼ごはんが進んでいない。三限もあるし、早く食べなきゃ。
私が「喋ると食事が止まっちゃうから黙るね」と宣言して食べている間、お兄ちゃんは最近お仕事でどんなことがあったのか、いくつかのエピソードを話してくれた。お兄ちゃんの話はたまに突拍子もないところに飛ぶけれど、ユーモアがあって飽きさせない。人を惹きつける魅力って大事だなあ、なんて思いながら聞く。
その間も玲美ちゃんはやっぱり無言だった。玲美ちゃんは問われたらきちんと受け答えするし、自分の意見も持っているけれど、印象よりも人見知りだ。面識があるとはいえ、無理にお兄ちゃんとお昼を一緒にしたのはよくなかったかもしれない。私は親しい人相手だと遠慮がなくなってしまって、いいと思ったらつい勝手に判断してしまう。親しき仲にも礼儀ありだし、もっと考えて行動しないと。
私が食べ終わると、お兄ちゃんは「そろそろ行かないと」と言って席を離れた。お兄ちゃんはいつも突然現れて突然去っていく。まあ、通常運転だけど。でも、ひさしぶりに会えて、なんだか嬉しかったな。
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