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第七章 雨が降れば必ず土砂降り

153 特別メニュー詰め合わせ ③

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「相良ゼミに参加させてもらえることになって、玲美ちゃんと会う機会が一コマ増えたのがすごく嬉しい!」
「別にゼミ中は喋らないでしょ」
「そうだけど。隣に玲美ちゃんがいてくれるの、とっても心強いし!」
「一年の最初の頃みたい」

 玲美ちゃんとは入学直後のオリエンテーションで知り合った。私はのんびりしすぎていて、いつのまにか全体の流れが見えなくなることが結構ある。面倒見のいい玲美ちゃんは、おろおろしている私をそっと助けてくれることが多かったのだ。

 物言いがはっきりしているから怖がっている人もいるようだったけど、私にとって玲美ちゃんは最初からとっても優しい女の子。当時一緒に住んでいたお兄ちゃんにも、とっても素敵なお友達ができたって、よく話したなあ。お兄ちゃんも、いい友達ができてよかったなって、嬉しそうに言ってくれたっけ。

「若葉の訳、すごく的確で自然だし、内容理解にもつながりやすいから、刺激になってるよ。私ももっと勉強しないと」

 玲美ちゃんから褒められるとなんだか誇らしい気持ちになる。玲美ちゃんは決してお世辞を言わないから。
 一生懸命取り組んでる成果が、少しずつ出ているんだな。もっとがんばろう。

 もうすぐ二限開始のチャイムが鳴る。毎回そのくらいの時刻に相良先生は教室においでになる。そう思った瞬間に扉が開き、相良先生が現われた。相良ゼミ、学習内容も興味深いけど、相良先生のファッションを拝見するのも、実は楽しみの一つだったりする。

 相良先生はとてもおしゃれな方で、小物使いが非常にお上手だ。玲美ちゃんの着こなしと少し似ていて、基本的な色使いはシック。黒、紺、グレー、白あたりのシンプルなデザインのものをよくお召しになっているけれど、ストールなどの巻物かネックレスなどのアクセサリーで必ず綺麗な差し色を入れていて、地味ではなく粋な印象に仕上げてくる。洋服そのものも、仕立てと生地のよさが見ただけでわかるし、眼福。

 今日は紺のスクエアネックのワンピースに七分丈の白いジャケットをお召しだ。首元のワインレッドを基調にしたスカーフがとても効いていて、紺と白の合わせが地味にならず爽やかで粋に見える。大人のマリンルック、なのかな。
 そんなことを思っている間にチャイムが鳴り、ゼミが始まった。
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