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第六章 まだ願いごとが叶った頃
146 私と彼氏の初めての旅行 ⑥
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どうして私は本音を隠すことができないんだろう。
新くんが私の目をじっと見るので、正直に言うことにした。
「その……。私、新くんが選んでくれたプレゼントをもらえるんだって、期待しちゃってたの……」
ああ、新くんが困った顔をしてる。
プレゼントは厚意なんだから、本当はもらえるのがあたりまえのものじゃない。お祝いしてくれるというだけでも、とってもありがたいことなのに。
新くんは優しくて、いつでも私の望みを叶えてくれるから、私はすっかりわがままがあたりまえになってしまっていた。
「若葉ちゃん。僕は何もわかってなくて、ごめんね」
「……私こそ、わがままでごめんなさい」
「ううん。改めて、僕が選んだものをプレゼントするから」
新くんは精一杯お祝いしてくれたのに。謝らせたくなんかなかったのに。
「あ……。じゃあ、これ、今使うね」
私が「若葉ちゃんの願いをなんでも一つ叶える券」を差し出すと、新くんは手で制した。
「ううん。これは取っておいて」
「でも……」
「せっかく作ったから、とっておきの時に使ってほしい」
新くんがにっこり笑ってそう言ってくれたので、うんと頷いて、ありがたく受け取ることにした。
帰りの車の中でも、私はずっと考えていた。
新くんは「何が欲しい?」って訊ねてくれてた。私は新くんが何を選んでくれるのかが楽しみだったから、少しはぐらかしてしまったところがある。
私はずるいことをしてしまった。ものと気持ちと、二つプレゼントを要求したようなもの。
そんなことを考えているうちに、道路が渋滞してきて、新くんが車を止めた。
「若葉ちゃん」
「……なあに?」
私を気遣うような優しい声。ずっとぐるぐる考えてしまっていて、ラジオが流れているのをいいことに、車に乗ってから私は何も喋っていなかった。申し訳ない気持ちになる。
「何かアクセサリーをあげようかなって、最初は考えていたんだ。恋人らしい気がして。でも、若葉ちゃんはおしゃれだし、僕はセンスがないから、どんなものをあげたらいいのか、見当もつかなくて」
「新くんからアクセサリー贈られたら、宝物にする!」
私が勢い込んで即答すると、新くんは少し困ったように笑んだ。
「……僕、本当に女の子のアクセサリーについて、全然知らなくて。どのお店に行けばいいのかすら、わからなかったんだ」
それは、仕方ないかもしれない。男の人でアクセサリーのお店に詳しいって、知り合いの伝手があるか、贈り慣れているか、そんなところだろうから。
「だから、若葉ちゃんがよくアクセサリーを買うお店を紹介してほしいんだ。そしたら、そのお店で僕が選ぶから」
「……新くん」
せっかくのプレゼントにけちをつけるような形になってしまったのに。新くんは私の願いを叶えるために、自分ができることをいろいろ考えてくれた。
「うん。私の大好きなお店に案内する」
「よかった」
「ありがとう。すごくすごく嬉しい」
私がお礼を言うと、新くんは笑った。とびきり明るく、素敵に。
新くんはいつでも私を大らかに受け入れてくれて、わがままを言ってもなんとか叶えようとしてくれる。なんて優しいんだろう。
新くんは世界で一番素敵な男の子。
新くんが私の目をじっと見るので、正直に言うことにした。
「その……。私、新くんが選んでくれたプレゼントをもらえるんだって、期待しちゃってたの……」
ああ、新くんが困った顔をしてる。
プレゼントは厚意なんだから、本当はもらえるのがあたりまえのものじゃない。お祝いしてくれるというだけでも、とってもありがたいことなのに。
新くんは優しくて、いつでも私の望みを叶えてくれるから、私はすっかりわがままがあたりまえになってしまっていた。
「若葉ちゃん。僕は何もわかってなくて、ごめんね」
「……私こそ、わがままでごめんなさい」
「ううん。改めて、僕が選んだものをプレゼントするから」
新くんは精一杯お祝いしてくれたのに。謝らせたくなんかなかったのに。
「あ……。じゃあ、これ、今使うね」
私が「若葉ちゃんの願いをなんでも一つ叶える券」を差し出すと、新くんは手で制した。
「ううん。これは取っておいて」
「でも……」
「せっかく作ったから、とっておきの時に使ってほしい」
新くんがにっこり笑ってそう言ってくれたので、うんと頷いて、ありがたく受け取ることにした。
帰りの車の中でも、私はずっと考えていた。
新くんは「何が欲しい?」って訊ねてくれてた。私は新くんが何を選んでくれるのかが楽しみだったから、少しはぐらかしてしまったところがある。
私はずるいことをしてしまった。ものと気持ちと、二つプレゼントを要求したようなもの。
そんなことを考えているうちに、道路が渋滞してきて、新くんが車を止めた。
「若葉ちゃん」
「……なあに?」
私を気遣うような優しい声。ずっとぐるぐる考えてしまっていて、ラジオが流れているのをいいことに、車に乗ってから私は何も喋っていなかった。申し訳ない気持ちになる。
「何かアクセサリーをあげようかなって、最初は考えていたんだ。恋人らしい気がして。でも、若葉ちゃんはおしゃれだし、僕はセンスがないから、どんなものをあげたらいいのか、見当もつかなくて」
「新くんからアクセサリー贈られたら、宝物にする!」
私が勢い込んで即答すると、新くんは少し困ったように笑んだ。
「……僕、本当に女の子のアクセサリーについて、全然知らなくて。どのお店に行けばいいのかすら、わからなかったんだ」
それは、仕方ないかもしれない。男の人でアクセサリーのお店に詳しいって、知り合いの伝手があるか、贈り慣れているか、そんなところだろうから。
「だから、若葉ちゃんがよくアクセサリーを買うお店を紹介してほしいんだ。そしたら、そのお店で僕が選ぶから」
「……新くん」
せっかくのプレゼントにけちをつけるような形になってしまったのに。新くんは私の願いを叶えるために、自分ができることをいろいろ考えてくれた。
「うん。私の大好きなお店に案内する」
「よかった」
「ありがとう。すごくすごく嬉しい」
私がお礼を言うと、新くんは笑った。とびきり明るく、素敵に。
新くんはいつでも私を大らかに受け入れてくれて、わがままを言ってもなんとか叶えようとしてくれる。なんて優しいんだろう。
新くんは世界で一番素敵な男の子。
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