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第五章 今が一番よいタイミング

118 私の彼氏と素敵な自動車 ①

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 朝ごはんを食べ終え、いつでも出られるように準備を整えたところで、お兄ちゃんから連絡が入った。

「おはよう! ……うん、うん、もういつでも出られるよ。今どこ? ……わかった、下に降りて待っとく!」
「響さんから?」
「そう! たぶん、あと五分かからないくらいで、着くんじゃないかな」
「わかった。出よう」

 新くんと一緒にお兄ちゃんを待っていると、クラクションが鳴った。見慣れた車が停まり、窓が開く。

「おはよう。ボーダーコリー、若葉」

 私が助手席に、新くんが後部座席に乗り込んで、シートベルトをつけたのを確認し、お兄ちゃんは運転を再開する。

「ねえ、お兄ちゃん。なんで新くんのこと、ボーダーコリーって呼ぶの?」
「んー? なんか、語呂がいいじゃん、ボーダーコリー」
「語呂、いいかなあ?」
「響きも格好いいし」

 お兄ちゃんの感覚は、たまによくわからない。

「ボーダーコリーは、ボーダーコリーって呼ばれるの、嫌?」

 お兄ちゃんはバックミラーを見ながら、新くんに訊ねる。

「いえ。むしろ嬉しいです」

 新くんが穏やかに微笑んでいるので、まあいいや。

「ボーダーコリー、中古車がいいってことだったから、俺の親友が勤めてる店に行こうと思ってて」
「ひさしぶりにヤスさんにお会いするのすごく楽しみ! あのね、とってもいい人なの!」

 ヤスさんはよく家にも遊びに来てくれたけど、いつお会いしてものんびりした雰囲気で、優しいところが憧れだった。高校からお付き合いしていたすごく素敵な彼女さんともうすぐご結婚予定らしい。とっても嬉しい。

「大切な方をご紹介してくださり、ありがとうございます」

 お兄ちゃんの車はすいすい進んでいく。信号が青続きなのもあって、全然止まらない。

「ちょ、ちょっと、速くない?」
「これでもボーダーコリー乗せてるから、少し抑えてるんだけどなあ」
「車の運転、お上手ですね」

 新くんの言葉にお兄ちゃんは嬉しそうに笑う。

「ありがとう。俺、運転すごく好きなんだ。だから今日も楽しい」

 そんなことを言っている間に、お兄ちゃんの車は「安田モータース」と書かれたお店の前を通り過ぎ、専用駐車場で止まった。
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