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第五章 今が一番よいタイミング

114 私と彼氏の甘やかな時間 ②

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 お風呂場の椅子に腰かけて、まずは髪をゆっくりブラッシングする。服を着たままだと脱ぐ時にまたぼさぼさになってしまうし埃もつく。服を脱いでからお風呂場の外でだと寒い季節はつらい。試行錯誤の末これに落ち着いた。この時間が私は結構好き。たまに毛先が絡まっていたりするし、髪を丁寧に梳かすと気持ちも解れる気がして。

 梳き終えたら洗面器にお湯を張って、髪を浸す。この時入浴剤の匂いがふんわり漂うのも、のんびりした気持ちになって好き。日によって入浴剤を変えるから、楽しいんだよね。今日は爽やかなレモングラスの香り。

 美容師さんに「シャンプーは直接つけずに泡立ててから乗せるといい」と勧められてから、ネットで泡立てるようになった。間違わないように、ピンクのネットをシャンプー用、白を身体用と色分けしている。新くんに「どうしてネットが二つあるの?」と訊ねられて、そう答えたら、びっくりされた。

 シャンプーを泡立て、髪につけ、洗う。洗浄というよりも頭皮をマッサージする感覚で、気持ちも解れていく。すすぎ残しがないように丁寧に流し、毛先からトリートメントをつける。シャンプーとトリートメントは優しい花の香り。控えめなところが邪魔にならなくて気に入っている。

 トリートメントが染み込むのを待つ間に身体を洗う。ネットで泡立てた泡を転がす感じ。私は石鹸をクリームみたいにきめ細かく泡立てるのが楽しくて好き。
 新くんはボディソープにボディタオルで擦る派だから、シャンプー類の横に新くん用のボディソープのボトルを置いて、ネットの横に新くん用のボディタオルを掛けている。新くんがいない時でも、ボディソープとボディタオルを見ると、なんだか和む。

 髪と身体をシャワーで洗い流し、ヘアゴムで軽くまとめ、湯船に浸かった。ふう。
 すっきりして、いい匂いがして、温まって。お風呂に入るとリラックスするし、悩みがある時もずいぶん楽になるから、とても好き。

「若葉ちゃん」

 新くんだ!

「はあい」
「入っていい?」
「どうぞ」

 ガチャリとガラス戸が開いて、新くんが入ってくる。当然だけど裸だから、なんだか照れてしまって、思わず目をそらす。

「別にかまわないのに」
「う、うん……」

 新くんが眼鏡を掛けていないのも、不思議な気分。ラーメンとか眼鏡が曇るものを食べる時と眠る時以外はほとんど掛けたままだから、なんだか違う人みたい。
 私は新くんの素顔を見て一目惚れしてしまったけれど、今は眼鏡を掛けているのがあたりまえになっているんだなあ。
 私がぼんやりそんなことを考えている間に、新くんは髪を洗い、タオルで身体を擦り、シャワーで流した。

「すごくてきぱきしてる」
「うん。あんまり見えないから、流れ作業というか、手順決めてる」

 手早さに納得すると同時にはっとする。ということは、ものの位置を変えたら、新くん困っちゃうのか。お掃除の時注意しよう。
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