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第四章 走る前に歩くことを学べ
101 進め、ボーダーコリー! ⑤
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「手助けしてもらった気がした。ボーダーコリーに」
「何を?」
「その……。僕、ずっと、渋沢って呼ばれてきたから、ボーダーコリーってあだ名をもらって、ちょっと嬉しかったんだ」
敵は作らない。でも、すごく親しい人間もいないし、友達も多くない。
自己紹介で名字の話しかしないのも、名字を覚えてもらえなかったら認識すらされないからで。
面倒だから目立ちたくはない。でも、それと認識されなくていいのは、違う。
向井は少しぽかんとした顔をしていたけど、口を開き、言った。
「なんだ。じゃあ、これから新って呼ぶから」
「え」
「新、馴れ馴れしいの嫌がるかと思ってたから自重してたけど、遠慮なく呼ぶ」
「嫌がりそうに見えた?」
「うーん、なんか踏み込まれるの嫌いそうじゃん。お前の人当たりのよさは、拒絶の時もあるだろ」
思っていたよりも観察されていた。しかも当たっている。
「俺は前々から名前呼びを画策していたから、ちょうどいい機会だし、俺のことも裕也って呼んでいいんだぜ?」
「向井」
「この流れでそれかよ! そして、なんで振られた気分になってるんだろ、俺」
ちょっと拗ねた表情の向井が面白かったけど、誤解をさせてはいけないと思うから、きちんと言う。
「向井は向井の方が向井らしいと思うから、向井」
「なんだ、その理由になってない理由は!」
向井は晴れ晴れとした表情でゲラゲラ笑った。
「何を?」
「その……。僕、ずっと、渋沢って呼ばれてきたから、ボーダーコリーってあだ名をもらって、ちょっと嬉しかったんだ」
敵は作らない。でも、すごく親しい人間もいないし、友達も多くない。
自己紹介で名字の話しかしないのも、名字を覚えてもらえなかったら認識すらされないからで。
面倒だから目立ちたくはない。でも、それと認識されなくていいのは、違う。
向井は少しぽかんとした顔をしていたけど、口を開き、言った。
「なんだ。じゃあ、これから新って呼ぶから」
「え」
「新、馴れ馴れしいの嫌がるかと思ってたから自重してたけど、遠慮なく呼ぶ」
「嫌がりそうに見えた?」
「うーん、なんか踏み込まれるの嫌いそうじゃん。お前の人当たりのよさは、拒絶の時もあるだろ」
思っていたよりも観察されていた。しかも当たっている。
「俺は前々から名前呼びを画策していたから、ちょうどいい機会だし、俺のことも裕也って呼んでいいんだぜ?」
「向井」
「この流れでそれかよ! そして、なんで振られた気分になってるんだろ、俺」
ちょっと拗ねた表情の向井が面白かったけど、誤解をさせてはいけないと思うから、きちんと言う。
「向井は向井の方が向井らしいと思うから、向井」
「なんだ、その理由になってない理由は!」
向井は晴れ晴れとした表情でゲラゲラ笑った。
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