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第四章 走る前に歩くことを学べ
098 進め、ボーダーコリー! ②
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「サラダ、ラッシー、ドウゾ」
前菜と飲み物が運ばれてきたので、お礼を言うと、運んできてくださったふくよかな女性はにこにこ笑った。僕の母と同じ年頃であろう、おそらくインドの方。親世代のウケはそこそこいいと思っていたけど、国境を越えても通用するとは。
「「いただきます」」
ひとまず食べることにする。箸とフォークとスプーンがあったから、箸で。
サラダはシンプルで、一口大に切られたキュウリ、食べやすい大きさにちぎられたレタスと水菜、半分にカットされたミニトマト、スライスされたパプリカ、トッピングのカイワレ、そこに濃い朱色のドレッシングがかかっている。
ぱくり。インド料理だし、ドレッシングの色もどぎついし、辛いかな? と、どきどきしながら口に運んだけど、むしろまろやかな味わい。ドレッシングはにんじんをすりおろして調味料を混ぜたものだったようだ。ほのかな甘み。
なんだか若葉ちゃんみたいな。はっきりした鮮やかな色合いだけど、やわらかくて甘く優しい味わい。僕はなんでも若葉ちゃんと関連づけてしまう。
『若葉、愛してるよ』
つい、口にしてしまったけれど。安っぽかったかもしれない。そんな言葉なんかよりも、きちんと行動で愛を表現すべきではないのか。
パプリカを箸でつまむ。黄色い果肉は透けるように薄くて。
「ああ、僕は薄っぺらい人間だなあ」
「なに、その、ザ・大学生って感じの台詞」
「台詞すら凡庸」
僕がそう返すと向井はゲラゲラ笑う。
「そりゃペラペラだろうよ。まだ二十年しか生きてないんだし。むしろこの歳で人間十回目みたいな徳の高さだったら、怖くね?」
それはそうかもしれないけれど。
「つーか、完璧は完璧で息苦しかったりするから、うかつな人間にも存在意義はある」
「レゾンデートル」
「レゾンデートル」
カイワレの辛みがピリリと舌を刺激した。単なる飾りだと思っていたけど、アクセントとして必要だったのか。
前菜と飲み物が運ばれてきたので、お礼を言うと、運んできてくださったふくよかな女性はにこにこ笑った。僕の母と同じ年頃であろう、おそらくインドの方。親世代のウケはそこそこいいと思っていたけど、国境を越えても通用するとは。
「「いただきます」」
ひとまず食べることにする。箸とフォークとスプーンがあったから、箸で。
サラダはシンプルで、一口大に切られたキュウリ、食べやすい大きさにちぎられたレタスと水菜、半分にカットされたミニトマト、スライスされたパプリカ、トッピングのカイワレ、そこに濃い朱色のドレッシングがかかっている。
ぱくり。インド料理だし、ドレッシングの色もどぎついし、辛いかな? と、どきどきしながら口に運んだけど、むしろまろやかな味わい。ドレッシングはにんじんをすりおろして調味料を混ぜたものだったようだ。ほのかな甘み。
なんだか若葉ちゃんみたいな。はっきりした鮮やかな色合いだけど、やわらかくて甘く優しい味わい。僕はなんでも若葉ちゃんと関連づけてしまう。
『若葉、愛してるよ』
つい、口にしてしまったけれど。安っぽかったかもしれない。そんな言葉なんかよりも、きちんと行動で愛を表現すべきではないのか。
パプリカを箸でつまむ。黄色い果肉は透けるように薄くて。
「ああ、僕は薄っぺらい人間だなあ」
「なに、その、ザ・大学生って感じの台詞」
「台詞すら凡庸」
僕がそう返すと向井はゲラゲラ笑う。
「そりゃペラペラだろうよ。まだ二十年しか生きてないんだし。むしろこの歳で人間十回目みたいな徳の高さだったら、怖くね?」
それはそうかもしれないけれど。
「つーか、完璧は完璧で息苦しかったりするから、うかつな人間にも存在意義はある」
「レゾンデートル」
「レゾンデートル」
カイワレの辛みがピリリと舌を刺激した。単なる飾りだと思っていたけど、アクセントとして必要だったのか。
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