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第四章 走る前に歩くことを学べ

085 雨だれはショパンの音色 ④

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 ごまかすようにガツガツ食べ始めた玲美ちゃんを見て、あわてて弁解する。

「あ、ごめん、違うの! その……詮索したいとかじゃなくて、玲美ちゃんが幸せそうで嬉しいなって思ったの!」
「……私が?」
「うん!」

 だって、玲美ちゃんは今、恋する乙女の表情をしているもの。本人は自覚がなかったみたいで、私の台詞にびっくりしたのか、一瞬目を見開いたけど。
 余計なお世話かもしれないけれど。どうしても伝えたい。

「玲美ちゃん!」
「……な、何?」
「私、玲美ちゃんのお相手がどんな人であれ、玲美ちゃんを傷つけるような真似をしなければ、応援するから!」
「ふぁ?」

 玲美ちゃんのお箸が止まる。

「だから、気が向いたら、ぜひ紹介してね! 玲美ちゃんの大切な人は、私にとっても大切な人だから!」
「……う、うん……」
「あと、ノロケたくなったら、いつでも言ってね! 楽しみにしてる!」

 私がそう言うと、玲美ちゃんはやっぱりちょっぴり困った顔をしていたけれど。さっきとは違って、どこか雰囲気がやわらかい気がした。結構照れ屋さんだから、恥ずかしかったのかもしれない。

 玲美ちゃんはカツ丼をかきこみ続け、食後のお茶を飲み、ふうと息をつくと、私に訊ねた。

「渋沢くんは? 元気?」
「たぶん」
「たぶん?」

 玲美ちゃんは少し眉を寄せる。

「うん。連絡は取ってるけど、しばらく会ってなくて」
「春休みだからべったりしてるかと思ってた」
「ううん。なんか、バイトしてるらしくて。バレンタインにひさびさに会うの」
「そうなんだ」

 玲美ちゃんはちょっと意外そうな顔をした。
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