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第三章 カバーで本を判断するな
067 僕と彼女とメンテナンス ②
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「若葉ちゃんは本当に持ち物を丁寧に整備するよね」
僕は若葉ちゃんの部屋に来ている。今日は水曜で、お互い木曜の授業は午後からだから、特に何もなければどちらかの家に泊まるようになっていた。週の真ん中を一緒に過ごすと、後半もなんとかがんばれる。充電。
一緒にいてもそれぞれ好きなように過ごすことはよくあって、今、若葉ちゃんは服と小物のメンテナンスをしている。繕ったり、磨いたり。
「私、そそっかしくて、転んだり、引っかけたりで、よく細かい部分を壊しちゃうから……」
直した部分を見せてもらう。スカートの飾りが取れたみたいで、手持ちのビーズと糸で縫いとめていた。少しだけ他の部分と色が違うけど、丁寧に縫ってあって、僕はむしろ愛情を感じた。
「すごく綺麗に直してる」
「でも、本当に大切だったら、そもそも壊さないって言われ……壊さないと思うし」
「うーん、どうだろ? 注意してても失敗することはあるし、経年劣化もあるし。丁寧に手を掛けてるところに、僕は愛情を感じるけど」
「……新くんはそんな風に思ってくれるんだ」
僕の言葉を聞いて、若葉ちゃんは少しほっとしたような表情になった。
「いろんな人がいるし、いろんな感じ方があるよ。考え方が偏らないように、向井はなるべく自分とは違うタイプの人間と過ごすようにしてるんだって。なるほどなって思った」
「新くん、いいお友達ができてよかったね!」
「んー、まあ。確かに向井、思ってたよりも、いい奴だった」
僕は自分から行動しないから、これまでも友達を得る機会を逃してきたかもしれない。友達が多ければ多いほどいい、なんて、まるで思わないけど、今いる友達を大切にしようとは思う。
「これでよし!」
若葉ちゃんが裁縫道具を片づけ始めるので声を掛ける。
「メンテナンス完了?」
「完了!」
とびきりの笑顔が返ってきて、なんだかどきどきしてしまう。
「若葉ちゃん」
「なあに?」
「可愛い」
「突然どうしたの?」
首を傾げる若葉ちゃんがやっぱり可愛くて、思わず抱きしめる。
「新くん、つながりがよくわからないよ」
「愛でたい。直接ふれたい」
若葉ちゃんは顔を赤くしたけれど、ちゅっと僕の唇にキスをしてくれた。
「可愛い了承の印」
「うるさいなあ」
僕は若葉ちゃんの部屋に来ている。今日は水曜で、お互い木曜の授業は午後からだから、特に何もなければどちらかの家に泊まるようになっていた。週の真ん中を一緒に過ごすと、後半もなんとかがんばれる。充電。
一緒にいてもそれぞれ好きなように過ごすことはよくあって、今、若葉ちゃんは服と小物のメンテナンスをしている。繕ったり、磨いたり。
「私、そそっかしくて、転んだり、引っかけたりで、よく細かい部分を壊しちゃうから……」
直した部分を見せてもらう。スカートの飾りが取れたみたいで、手持ちのビーズと糸で縫いとめていた。少しだけ他の部分と色が違うけど、丁寧に縫ってあって、僕はむしろ愛情を感じた。
「すごく綺麗に直してる」
「でも、本当に大切だったら、そもそも壊さないって言われ……壊さないと思うし」
「うーん、どうだろ? 注意してても失敗することはあるし、経年劣化もあるし。丁寧に手を掛けてるところに、僕は愛情を感じるけど」
「……新くんはそんな風に思ってくれるんだ」
僕の言葉を聞いて、若葉ちゃんは少しほっとしたような表情になった。
「いろんな人がいるし、いろんな感じ方があるよ。考え方が偏らないように、向井はなるべく自分とは違うタイプの人間と過ごすようにしてるんだって。なるほどなって思った」
「新くん、いいお友達ができてよかったね!」
「んー、まあ。確かに向井、思ってたよりも、いい奴だった」
僕は自分から行動しないから、これまでも友達を得る機会を逃してきたかもしれない。友達が多ければ多いほどいい、なんて、まるで思わないけど、今いる友達を大切にしようとは思う。
「これでよし!」
若葉ちゃんが裁縫道具を片づけ始めるので声を掛ける。
「メンテナンス完了?」
「完了!」
とびきりの笑顔が返ってきて、なんだかどきどきしてしまう。
「若葉ちゃん」
「なあに?」
「可愛い」
「突然どうしたの?」
首を傾げる若葉ちゃんがやっぱり可愛くて、思わず抱きしめる。
「新くん、つながりがよくわからないよ」
「愛でたい。直接ふれたい」
若葉ちゃんは顔を赤くしたけれど、ちゅっと僕の唇にキスをしてくれた。
「可愛い了承の印」
「うるさいなあ」
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