【R18】人の好みは説明できない

テキイチ

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第三章 カバーで本を判断するな

062 新たな友達とサーロイン ①

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 僕は若葉ちゃんの元彼のことを知っている。教職の授業で一緒だったからだ。

 といっても、僕は教員志望ではない。在学中に一つでも多く資格が取れるといいかな、と安易に登録した。そういう学生は一定数いる。だが、資格取得に必要な単位数が存外多く、出欠確認も厳しく、課外のミーティング等で拘束される時間もばかにならないため、軽い気持ちで登録した学生は、ひっそり離脱していくのだ。

 僕もそのクチで、一、二年で受講できる科目は登録し、単位も取ったけれども、三年からはすっぱり止めて一般企業の就職活動に集中しようと思っていた。幸い、教職科目は卒業に必要な単位への振り替えがきいたし、内容そのものは興味深かったので、損はしていない。

 若葉ちゃんの元彼は、本気で教職を狙っていた。
 何度かグループ討論で発言するのを見たけれど、みんなが黙っている時に率先して発言し、場をリードしていたように思う。正義感が強く、真面目で努力を尊ぶ、爽やかな青年。同世代の女子に好かれるというよりは、親世代から気に入られるタイプ。

 若葉ちゃんが元彼と付き合い始めたのを見た時、僕はまだ恋心を自覚していなかったけれども、ちょっと意外に思った記憶がある。彼女のアンテナに引っかかるのは、もっと違うタイプではないかと思っていたから。うまく言えないけど、広く世間に認められる訳ではなくても、自分の世界を持っているような。
 まあ、そういう僕も、凡庸なタイプであるけれど。

 元彼は人望があるように見えた。少なくとも、表面的には。男子達と楽しそうに話しているのをよく見かけたし、常に誰か一緒に行動している人間がいた。そう、例えば……

「渋沢。そのシャープペンシル、すごく格好いいな。鞄も。今まで物に思い入れなさそうだったのに、北村さんと付き合い始めた影響?」

 いつもノートを借りに来る、こいつとか。
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