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第一章 人の好みは説明できない

015 私の彼氏は穏やかで素敵 ⑮

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 ラーメン屋さんから出て、すぐにお礼を言う。

「ごちそうさまでした!」

 新くんはにっこり微笑んで応えてくれる。

「こちらこそ、今日一日どうもありがとう。眼鏡と服はいいものを選んでもらえてとても助かったし、ラーメンもおいしかったし、すごく楽しかった」
「こちら、こそ……」

 楽しかったって。楽しかったって言ってくれた……!
 これ、今度はどこか遊びに行こうよって、軽い感じで誘ってみてもいいかな。でも、またラーメン食べに行こうって言ってくれたのも、社交辞令かもしれないしなあ。私はそういう言葉の裏みたいなのが、全然読めない。そして、なんだかんだで、自分から誘ったことがあんまりないから、何をきっかけにすればいいのかもよくわからない。個人のSNSと電話は教えてもらったから、帰ってからSNSでお礼と一緒に誘ってみようかな。

「若葉ちゃん」

 私が脳内で迷走しているのを止めるように、不意に名前を呼ばれて、ものすごくどきどきした。私の大好きな声で、名字ではなく、名前を。胸の鼓動が半端ない。

「な、なあに……?」
「僕は君のことが好きだよ。一年の頃から気になっていたんだ。彼女になってほしい」

 新くんの言葉に、すごくびっくりする。
 私が無理矢理付き合わせていただけだと思っていたのに。

「若葉ちゃん?」
「私の片想いかと……思ってた……」
「よかった。両想いだ」

 新くんはにっこり笑って続ける。

「僕はなんとも思っていない女の子と、二人きりで出かけたりしない」
「そうなんだ……」

 新くんの、そういう誠実なところが、また好きだなあ。
 新くんの顔を見て、とても大事なことを言っていないと気づく。

「私も付き合いたい! 彼女になりたいです!」

 思わず叫ぶみたいになってしまったけど、新くんはくすくす笑いながら、嬉しいと言ってくれた。

「無事、彼女になってもらえたから、わがまま言うけど。ほんとは、もう少し若葉ちゃんと一緒にいたい」
「私も!」

 つい、食いつき気味に返事してしまうと、新くんは声を上げてあははと笑った。

「明日、予定ある?」
「ないけど」

 新くんは返事を聞いて、私の右手を取った。初めてふれられてどきどきする。

「若葉ちゃん、一人暮らしだし、遅くなってもいいよね。今から、うちに来ない?」
「……! 行きたい!」
「おいで」

 そう言うと、新くんは私の右手に指を絡めて、恋人つなぎにした。
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