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第一章 人の好みは説明できない

009 私の彼氏は穏やかで素敵 ⑨

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 オーバル型、ウェリントン型、スクエア型、ラウンド型。眼鏡がたくさん置いてあって目移りする。

「こんなにある時点で、もう、どうしたらいいのかわからない」

 新くんが笑いつつも少し困った声でそう言うので、私は粛々と選定する。
 眼鏡そのものの主張が強い感じの癖があるものよりも、シンプルなものの方が新くんらしいし、彼の端整な顔立ちを際立たせる。そんな気がした。
 目についたものをとにかく掛けてもらう。眼鏡だけ見るのと実際掛けた感じは結構違うし、形そのものは似合っていてもサイズが合わないこともあるから。私が手渡すと新くんは素直に掛けてくれた。

 メタルフレームも悪くないけど、少し冷たい印象になる。セルフレームの方が彼の温かい人柄を表せるというか、よさを活かせそう。そう感じたので、セルフレームを中心に再びいろいろ掛けてもらった。

 ナイロールフレームがいい。下半分の縁が目立たない分、新くんの素顔の魅力がきちんと出せる。逆のアンダーリムだと、フレームの癖の強さの方が目立ってしまって、せっかくの新くんのよさが活きない気がした。

 形と同時に色も見る。
 薄い色だと少しぼやける気がするなあ。セルフレームで柔らかさは出せているから、濃い目の色で締めた方がいい。黒かダークグレイか濃紺か焦げ茶か、そこらへん。変に奇をてらったような珍しい色より、ベーシックな色の方が新くんの魅力を引き出せる。そんな気がする。

 オーバルとスクエアの中間くらいの形の、焦げ茶のナイロールフレームを新くんが掛けた瞬間。

「それ!」

 私は思わず声を上げてしまった。

 新くんは一瞬びっくりしたように目を見開いたけれど、すぐにやわらかい笑みを浮かべた。
 優しそうな温かい笑顔。
 その顔があまりにも素敵で。すっごくどきどきして、思わず見とれてしまって、それ以上声が出ない。

「わかった。これにする」

 新くんは明るい声でそう言ってくれた。
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