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番外編・取り違えと運命の人 小話集
198 My Funny Valentine ②
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会合から数日後の今日はバレンタイン。平日だから遠出することはできないし、リカルドはなにを喜ぶかな? と考えたら、自然と、リカルドの好物を作って食べてもらうという方向性になった。ちょっと安易に餌付けしすぎかな?
結局、ローストビーフとサラダとパンとスープにしたけれど、スープは丁寧に出汁を取ったし、サラダもなるべくいろいろな種類の野菜を使ったから、リカルドはとても満足そうだった。
「今日のごはんもすっごくおいしかった!」
「そう? よかった。ちょっと待っててね!」
「え? なに?」
不思議そうな顔をしているリカルドをそのままにして、私はお皿を持って戻ってくる。
「じゃーん!」
「わあ! どうしたのこのケーキ!」
「作ってみたの! なんかね、今日、東方の国では、愛する人にチョコレートをあげるんだって! チョコレートケーキは冷たいくらいがおいしいって聞いたから、外で冷やしてたの!」
「すっごくおいしそう! 食べよう! 食べよう!」
リカルドにコーヒーを淹れてもらっている間に、私はケーキを切って小皿に盛り、クリームを泡立てて横に添えた。
コーヒーが温かくて、ケーキは冷たくて、チョコが甘くて、クリームが濃厚で、いろんな食感と味がとっても贅沢。でも、私にとって一番のごちそうはきっと、おいしそうに食べているリカルドの顔だ。もっとたくさんおいしいものを食べさせてあげたくなっちゃう。
ケーキも食べ終えて、いつものように二人で後片づけをした。私が食器を洗ってリカルドがすすぎをして、洗い終えた私が拭いてリカルドが棚に戻す。すっかり息の合った流れ作業。リカルドは自然に楽しんで家事を分担してくれるから、とても助かる。
「ケーキもほんとおいしかった! ありがとうジュリエッタ!」
「喜んでもらえてよかった!」
「おいしい食事とケーキのお礼に」
リカルドは愛用の袋を探って、包装された小さな箱を取り出し、そっと私へ差し出す。
「俺からも、はい!」
「え? なあにこれ?」
「開けてみて! 開けてみて!」
綺麗な包装紙を丁寧に外し、箱を開けると、紫色の石が嵌め込まれた銀細工の耳飾りが入っていた。
「わあ、綺麗……!」
「西方の国では、今日、愛する人に贈りものをするんだって!」
やっぱりバレンタインのこと、知ってたんだ。お礼なんて口実を作ってるところが、本当にリカルドらしい。
「ありがとう! 素敵ね、この耳飾り。もしかして誕生日にもらった髪飾りと同じデザインかな?」
「わからないけど、俺も似てると思ったし、なによりジュリエッタに似合いそうだから選んだ。つけてみて! つけてみて!」
リカルドが私に選んでくれるものはどれも、少し華やかさを感じさせる優美な大人の女性らしいデザイン。最初はなんだか照れてしまったけれど、身に着けているとみんなからも似合うと褒められるので、今はリカルドの見立てを全面的に信頼している。プレゼントに見合うような素敵な女性を目指せばいいのよね。
そんなことを思いながら、鏡の前でもらったばかりの耳飾りをつけた。
「……どう? 似合う?」
「うん! すっごく似合う!」
リカルドがにこにこ笑いながらとても嬉しそうに褒めてくれるので、私も余計嬉しくなる。
「それでね、耳飾りのプレゼントって」
リカルドは私の耳元に口を寄せる。
独占って意味があるんだって。今夜も俺にジュリエッタを独占させて?
いつもよりも少し低い声で囁かれて、なんだかどきどきした。
結局、ローストビーフとサラダとパンとスープにしたけれど、スープは丁寧に出汁を取ったし、サラダもなるべくいろいろな種類の野菜を使ったから、リカルドはとても満足そうだった。
「今日のごはんもすっごくおいしかった!」
「そう? よかった。ちょっと待っててね!」
「え? なに?」
不思議そうな顔をしているリカルドをそのままにして、私はお皿を持って戻ってくる。
「じゃーん!」
「わあ! どうしたのこのケーキ!」
「作ってみたの! なんかね、今日、東方の国では、愛する人にチョコレートをあげるんだって! チョコレートケーキは冷たいくらいがおいしいって聞いたから、外で冷やしてたの!」
「すっごくおいしそう! 食べよう! 食べよう!」
リカルドにコーヒーを淹れてもらっている間に、私はケーキを切って小皿に盛り、クリームを泡立てて横に添えた。
コーヒーが温かくて、ケーキは冷たくて、チョコが甘くて、クリームが濃厚で、いろんな食感と味がとっても贅沢。でも、私にとって一番のごちそうはきっと、おいしそうに食べているリカルドの顔だ。もっとたくさんおいしいものを食べさせてあげたくなっちゃう。
ケーキも食べ終えて、いつものように二人で後片づけをした。私が食器を洗ってリカルドがすすぎをして、洗い終えた私が拭いてリカルドが棚に戻す。すっかり息の合った流れ作業。リカルドは自然に楽しんで家事を分担してくれるから、とても助かる。
「ケーキもほんとおいしかった! ありがとうジュリエッタ!」
「喜んでもらえてよかった!」
「おいしい食事とケーキのお礼に」
リカルドは愛用の袋を探って、包装された小さな箱を取り出し、そっと私へ差し出す。
「俺からも、はい!」
「え? なあにこれ?」
「開けてみて! 開けてみて!」
綺麗な包装紙を丁寧に外し、箱を開けると、紫色の石が嵌め込まれた銀細工の耳飾りが入っていた。
「わあ、綺麗……!」
「西方の国では、今日、愛する人に贈りものをするんだって!」
やっぱりバレンタインのこと、知ってたんだ。お礼なんて口実を作ってるところが、本当にリカルドらしい。
「ありがとう! 素敵ね、この耳飾り。もしかして誕生日にもらった髪飾りと同じデザインかな?」
「わからないけど、俺も似てると思ったし、なによりジュリエッタに似合いそうだから選んだ。つけてみて! つけてみて!」
リカルドが私に選んでくれるものはどれも、少し華やかさを感じさせる優美な大人の女性らしいデザイン。最初はなんだか照れてしまったけれど、身に着けているとみんなからも似合うと褒められるので、今はリカルドの見立てを全面的に信頼している。プレゼントに見合うような素敵な女性を目指せばいいのよね。
そんなことを思いながら、鏡の前でもらったばかりの耳飾りをつけた。
「……どう? 似合う?」
「うん! すっごく似合う!」
リカルドがにこにこ笑いながらとても嬉しそうに褒めてくれるので、私も余計嬉しくなる。
「それでね、耳飾りのプレゼントって」
リカルドは私の耳元に口を寄せる。
独占って意味があるんだって。今夜も俺にジュリエッタを独占させて?
いつもよりも少し低い声で囁かれて、なんだかどきどきした。
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