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番外編・取り違えと運命の人 小話集
192 取り違えられた二人のその後 ② (その1 犯行の動機・2)
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「ジュリエッタ」
俺が声を掛けるとジュリエッタがびくりと動く。
「な、なんで……。ルーカ寝てるんじゃ……」
「なんではこっちの台詞だ。さんざんいろいろやって、味見もせずに捨てるとか」
「だって……見るからに、上手くできてないし……」
「やっぱり料理だったんだな。魔術じゃなく」
「…………っ」
犯人は口を堅く閉ざした。黙秘権か。
「料理は俺が作るから、別にする必要なんかねーじゃねーか」
「そうだけど……」
「材料もったいねーだろ」
「そ、だけど……」
ジュリエッタがなんだか泣きそうな顔で下を向いてしまったので、あわてて言う。
「別に責めようと思って言ったんじゃねーよ。悪い。なんで料理なんかしようとしてたのか、気になっただけだ」
「……ルーカに、いつもおいしいごはん食べさせてもらってて、嬉しいなあって、思って」
「そりゃどーも」
「私もルーカに、おいしいものを作ってあげたかったの……」
動機は、まさかの、俺か!!
ジュリエッタは掃除も料理もできないし、そのことを全然気にしてなかった。少なくとも自分のためにやろうとしたことはなかった。
でも、俺のために、何度も何度も。
「ルーカ! だめ! それ絶対まずい……!」
ジュリエッタが叫ぶように言う。俺が、捨てようとしていた残骸の一部をつまみ、口に入れようとしたから。
「死にはしねーだろ」
覚悟を決めて口に入れる。なんつーか、大変パンチのきいた味だ。それより食感が。噛みきれねーけど、なんとか飲み込む。
「ジュリエッタ、俺のためにがんばってくれてたんだな。ありがとな」
そう言って笑顔を作ると、ジュリエッタは涙をこぼしてしまう。
「お、おい。泣かせたくねーから食ったのに……」
「だって、絶対まずくて、私なら食べたくないもん」
「まずくはなかった。ほんとに」
正直、旨いとかまずいとか、超越していた。ひたすら破壊力があっただけで。
「お前が俺のために料理しようとしたり、旨いもの食わせたいと思ってくれてるなんて、想像もしてなかったけど……。嬉しいよ」
そう言うと、ジュリエッタが俺にしがみついてくる。
それは、本当に嬉しかった。ジュリエッタはおいしいものを作って喜ばせたかったみたいだけど、喜ばせるということに関しては完全犯罪成立だ。
「もう計画はバレたし、秘密の特訓は終わりだ。なんでも一足飛びに上手くはならねえんだから、俺の料理の手伝いから始めようぜ。な?」
そう言うと、ジュリエッタが俺の腰のあたりでうなずく。
よかった、これでもう材料は無駄にならない。事件は解決だ。
ちなみに、翌日トイレから離れられない運命にあることを、この時の俺はまだ知らない。
俺が声を掛けるとジュリエッタがびくりと動く。
「な、なんで……。ルーカ寝てるんじゃ……」
「なんではこっちの台詞だ。さんざんいろいろやって、味見もせずに捨てるとか」
「だって……見るからに、上手くできてないし……」
「やっぱり料理だったんだな。魔術じゃなく」
「…………っ」
犯人は口を堅く閉ざした。黙秘権か。
「料理は俺が作るから、別にする必要なんかねーじゃねーか」
「そうだけど……」
「材料もったいねーだろ」
「そ、だけど……」
ジュリエッタがなんだか泣きそうな顔で下を向いてしまったので、あわてて言う。
「別に責めようと思って言ったんじゃねーよ。悪い。なんで料理なんかしようとしてたのか、気になっただけだ」
「……ルーカに、いつもおいしいごはん食べさせてもらってて、嬉しいなあって、思って」
「そりゃどーも」
「私もルーカに、おいしいものを作ってあげたかったの……」
動機は、まさかの、俺か!!
ジュリエッタは掃除も料理もできないし、そのことを全然気にしてなかった。少なくとも自分のためにやろうとしたことはなかった。
でも、俺のために、何度も何度も。
「ルーカ! だめ! それ絶対まずい……!」
ジュリエッタが叫ぶように言う。俺が、捨てようとしていた残骸の一部をつまみ、口に入れようとしたから。
「死にはしねーだろ」
覚悟を決めて口に入れる。なんつーか、大変パンチのきいた味だ。それより食感が。噛みきれねーけど、なんとか飲み込む。
「ジュリエッタ、俺のためにがんばってくれてたんだな。ありがとな」
そう言って笑顔を作ると、ジュリエッタは涙をこぼしてしまう。
「お、おい。泣かせたくねーから食ったのに……」
「だって、絶対まずくて、私なら食べたくないもん」
「まずくはなかった。ほんとに」
正直、旨いとかまずいとか、超越していた。ひたすら破壊力があっただけで。
「お前が俺のために料理しようとしたり、旨いもの食わせたいと思ってくれてるなんて、想像もしてなかったけど……。嬉しいよ」
そう言うと、ジュリエッタが俺にしがみついてくる。
それは、本当に嬉しかった。ジュリエッタはおいしいものを作って喜ばせたかったみたいだけど、喜ばせるということに関しては完全犯罪成立だ。
「もう計画はバレたし、秘密の特訓は終わりだ。なんでも一足飛びに上手くはならねえんだから、俺の料理の手伝いから始めようぜ。な?」
そう言うと、ジュリエッタが俺の腰のあたりでうなずく。
よかった、これでもう材料は無駄にならない。事件は解決だ。
ちなみに、翌日トイレから離れられない運命にあることを、この時の俺はまだ知らない。
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