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番外編・取り違えと運命の人 小話集
190 毎日新しい君と出会う ④
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「……いいにおい」
ジュリエッタが眠そうに瞼をこすりながら、つぶやくように言う。
「ごめんなさい。反省したのでお詫びに朝食作ってきました」
「反省?」
意味がわからないというようにジュリエッタが首をかしげる。
「その、我慢できなくて、好き勝手して、抱きつぶしちゃったから……」
はい、とミルクと蜂蜜をたっぷり入れた紅茶を差し出す。昨夜の最後の方、ジュリエッタの声が少しかすれていたから。
ジュリエッタは素直に受け取って、こくこくと飲む。
「甘くておいしい」
にこにこ笑ってくれて少しほっとする。
「朝食ってなあに?」
「サンドウィッチといり卵とサラダ」
「……お行儀悪いかな」
「? なにが?」
「一緒にここで食べない?」
「……うん。わかった」
予想外の提案だったけど、もしこぼしても洗濯すればいいし、と持ってくることにする。
「お待たせ」
「うわあ! おいしそう!」
ジュリエッタがほんとに嬉しそうにそう言ってくれる。
「ねえ」
「ん?」
「あーんして」
「ん??」
一瞬、ジュリエッタがなにを言ったのかよくわからなくて、思わず疑問符を飛ばしてしまう。
「……その、こういういちゃいちゃって、したことなかったなって思って」
そう言われて、たしかに、と思った。俺はジュリエッタの作るごはんが大好きだから、夢中で黙々と食べてしまうし、そもそもベッドでごはん食べることなんてなかったし。
ふとジュリエッタの方を見ると、ちょっと気まずそうな顔になっていたので、あわてて口をあける。
「んー」
ジュリエッタがそっとサンドウィッチを差し出してくれるので、噛みつく。
一切れ全部食べ終わると、ジュリエッタは嬉しそうににこにこしていた。
「ええと、じゃあ、次は俺がお返し。ジュリエッタも口あけて」
「え? うん」
ジュリエッタが口をあけてくれるので、俺もサンドウィッチをそっと差し出す。
ジュリエッタはゆっくりもぐもぐと味わって、ごくりと飲み込んだ。
「すごくおいしい」
そう言ってジュリエッタはやっぱりにこにこ笑う。なんだかいつもより幼く見えて可愛い。
残りのおかずもお互いに食べさせ合って、もう一度ベッドで横になる。
「こういうのもいいね」
「うん。こういうの、したことなかったもんね」
「でも、いきなり、どうしたの?」
「私達、出会ったその日に結婚だったから、最初っから生活でしょう。リカルドとの生活はとっても大切だし大好きだけど、いわゆる恋人っぽいことってそんなにしてなかったかもって思って」
そう言って、ジュリエッタはそっとキスしてくれる。
これは、ロマンティックさに欠けるという遠回しな指摘だろうか。最近ひたすらしてばっかりだったし……。ちょっといじわるすると余計感じるからなんだかやり方が雑になっていた気もするし……。道具みたいに扱われているとか勘違いされてたらどうしよう……。そんな風に反省している俺の表情を見て、ジュリエッタがあわてて言う。
「不満とかじゃないよ! その、私、そもそも彼氏がいたことなかったから、恋人らしいことっていうの自体があんまりわかってなくて。でも、リカルドは、デート計画立てたりするくらい、すごく憧れがあったみたいだし……。もっと、喜ばせてあげたいなあって」
そんなことしなくたって、君は俺の妻だし、最愛の女性だし、運命の恋人なんだから、一緒にいるだけで充分嬉しいのに。
「可愛いなあ」
そう言ってジュリエッタをぎゅっと抱きしめる。
「ほんととっても可愛い」
「……そんなに言われると恥ずかしい……」
「俺、毎日新しいジュリエッタを知れて嬉しいよ」
「私も、そう思ってるわ」
とりあえず、それからもたまにベッドで軽食をとりながらじゃれるみたいにいちゃいちゃするようになった。出会った頃と比べるとずいぶんエッチなことするようになったし、もちろんそういうのも好きだけど、もしかするといちゃいちゃしてる時の方がどきどきするかもしれない。
ジュリエッタが眠そうに瞼をこすりながら、つぶやくように言う。
「ごめんなさい。反省したのでお詫びに朝食作ってきました」
「反省?」
意味がわからないというようにジュリエッタが首をかしげる。
「その、我慢できなくて、好き勝手して、抱きつぶしちゃったから……」
はい、とミルクと蜂蜜をたっぷり入れた紅茶を差し出す。昨夜の最後の方、ジュリエッタの声が少しかすれていたから。
ジュリエッタは素直に受け取って、こくこくと飲む。
「甘くておいしい」
にこにこ笑ってくれて少しほっとする。
「朝食ってなあに?」
「サンドウィッチといり卵とサラダ」
「……お行儀悪いかな」
「? なにが?」
「一緒にここで食べない?」
「……うん。わかった」
予想外の提案だったけど、もしこぼしても洗濯すればいいし、と持ってくることにする。
「お待たせ」
「うわあ! おいしそう!」
ジュリエッタがほんとに嬉しそうにそう言ってくれる。
「ねえ」
「ん?」
「あーんして」
「ん??」
一瞬、ジュリエッタがなにを言ったのかよくわからなくて、思わず疑問符を飛ばしてしまう。
「……その、こういういちゃいちゃって、したことなかったなって思って」
そう言われて、たしかに、と思った。俺はジュリエッタの作るごはんが大好きだから、夢中で黙々と食べてしまうし、そもそもベッドでごはん食べることなんてなかったし。
ふとジュリエッタの方を見ると、ちょっと気まずそうな顔になっていたので、あわてて口をあける。
「んー」
ジュリエッタがそっとサンドウィッチを差し出してくれるので、噛みつく。
一切れ全部食べ終わると、ジュリエッタは嬉しそうににこにこしていた。
「ええと、じゃあ、次は俺がお返し。ジュリエッタも口あけて」
「え? うん」
ジュリエッタが口をあけてくれるので、俺もサンドウィッチをそっと差し出す。
ジュリエッタはゆっくりもぐもぐと味わって、ごくりと飲み込んだ。
「すごくおいしい」
そう言ってジュリエッタはやっぱりにこにこ笑う。なんだかいつもより幼く見えて可愛い。
残りのおかずもお互いに食べさせ合って、もう一度ベッドで横になる。
「こういうのもいいね」
「うん。こういうの、したことなかったもんね」
「でも、いきなり、どうしたの?」
「私達、出会ったその日に結婚だったから、最初っから生活でしょう。リカルドとの生活はとっても大切だし大好きだけど、いわゆる恋人っぽいことってそんなにしてなかったかもって思って」
そう言って、ジュリエッタはそっとキスしてくれる。
これは、ロマンティックさに欠けるという遠回しな指摘だろうか。最近ひたすらしてばっかりだったし……。ちょっといじわるすると余計感じるからなんだかやり方が雑になっていた気もするし……。道具みたいに扱われているとか勘違いされてたらどうしよう……。そんな風に反省している俺の表情を見て、ジュリエッタがあわてて言う。
「不満とかじゃないよ! その、私、そもそも彼氏がいたことなかったから、恋人らしいことっていうの自体があんまりわかってなくて。でも、リカルドは、デート計画立てたりするくらい、すごく憧れがあったみたいだし……。もっと、喜ばせてあげたいなあって」
そんなことしなくたって、君は俺の妻だし、最愛の女性だし、運命の恋人なんだから、一緒にいるだけで充分嬉しいのに。
「可愛いなあ」
そう言ってジュリエッタをぎゅっと抱きしめる。
「ほんととっても可愛い」
「……そんなに言われると恥ずかしい……」
「俺、毎日新しいジュリエッタを知れて嬉しいよ」
「私も、そう思ってるわ」
とりあえず、それからもたまにベッドで軽食をとりながらじゃれるみたいにいちゃいちゃするようになった。出会った頃と比べるとずいぶんエッチなことするようになったし、もちろんそういうのも好きだけど、もしかするといちゃいちゃしてる時の方がどきどきするかもしれない。
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