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後日譚・取り違えたその後の二人
149 リカルド日記(抜粋、一部実況) ③
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ガイアさんの動きが一瞬止まった。ほんの一瞬だったけど。でもやはりプロで、すぐにやっぱりにっこりと微笑んで、こう続けた。
「お相手がうらやましいわ。思いやりのお気持ちは充分伝わるはずなので、私からは少しだけ技術をお伝えすればいいのかしら」
「よろしくお願いします」
「実際に私の身体をさわって、反応、試されます?」
「たぶん、その方がわかりやすいんでしょうけど、あなたはとても魅力的で、きっとそのまましたくなってしまうので」
だって、童貞だし。極上のお姉様といたしてしまったら、夢中になって、神託の相手どころじゃなくなっちゃうかもしれないし。
「なんとなく、そうおっしゃる気がしたわ」
そう言って、ガイアさんはやっぱり微笑んでくれた。
少しお待ちくださいね、とガイアさんが部屋を出て行った。ほどなくガイアさんは小冊子を二冊手に戻ってきた。
「まず、こちらをどうぞ。お持ち帰りいただいてかまいません」
渡された一冊目をぱらぱらとめくってみる。
「……これ」
「ちょっと困ったお客様をあしらうための実例集です」
内緒ですよ、とガイアさんは唇に指をあてる。
「女性にふれずに、なにがだめかを学んでいただくには、これが一番かと思いましたの」
読み進むうちに顔面蒼白になる。モテ自慢のヤツがよく言ってる、ガンガン突くのとか、激しい手マンとか、淫語言わせるのとか、女子ドン引きってことじゃないか。そういうの、全然気が進まないけど、喜ぶならすべきなのかな、とか、実行する前でほんとよかった。
一冊目を読み終えると、ガイアさんが見計らったようにもう一冊を手渡してくれた。
「こちらもどうぞ。もちろん差し上げますから」
表紙をめくると、女性の感じる箇所が列挙されてる。どうさわればより効果的であるかも。
「これ……」
「愛撫が苦手なお客様の場合、自ら高めるために、知っておく必要がありますので」
なんていうか、そのプロ意識に、頭が下がります。
俺が貪るように読んでいると、ガイアさんがお茶とお菓子を出してくれた。
「ありがとうございます」
「こちらこそ。指名料お支払いいただいたのに、なにもしないのは、申し訳ないですもの」
そう言って、あとは文字を追う俺を放っておいてくれた。
ざっと目を通し終えると、ガイアさんがにっこり微笑みかけてくれる。
ふと疑問がわきおこる。風俗って、ある意味、客に夢を売る商売なんだから、これって。
「その、こんなに内情おうかがいしても、大丈夫なんですか?」
「もしまたおいでになったら、もちろん大歓迎いたしますけれど、きっとリカルドさんがこの店の門をくぐることは、もうないと思いますので」
そう言うと、ガイアさんは俺の額にキスを落としてくれた。
「お相手の方とうまくいきますよう、祝福を」
突然のキスに少し驚いたけれど、とても光栄だと思った。
「ありがとうございます。女神からの祝福があれば、きっとうまくいきますね」
「……ご存じでしたの?」
「大地と豊穣の女神ガイア、学校の先生から借りた神話の本に載っていました。あなたにぴったりのお名前だと思います。本日は、大変実り多き時間を、ありがとうございました」
「こちらこそ。本当に、お相手がうらやましいわ」
ガイアさんの最後の笑顔が少しさびしげに見えたのが、気のせいならいいな、と思った。とりあえず、悪友三人と女神のおかげで、心配が少し消えた。ありがたいことだ。
「お相手がうらやましいわ。思いやりのお気持ちは充分伝わるはずなので、私からは少しだけ技術をお伝えすればいいのかしら」
「よろしくお願いします」
「実際に私の身体をさわって、反応、試されます?」
「たぶん、その方がわかりやすいんでしょうけど、あなたはとても魅力的で、きっとそのまましたくなってしまうので」
だって、童貞だし。極上のお姉様といたしてしまったら、夢中になって、神託の相手どころじゃなくなっちゃうかもしれないし。
「なんとなく、そうおっしゃる気がしたわ」
そう言って、ガイアさんはやっぱり微笑んでくれた。
少しお待ちくださいね、とガイアさんが部屋を出て行った。ほどなくガイアさんは小冊子を二冊手に戻ってきた。
「まず、こちらをどうぞ。お持ち帰りいただいてかまいません」
渡された一冊目をぱらぱらとめくってみる。
「……これ」
「ちょっと困ったお客様をあしらうための実例集です」
内緒ですよ、とガイアさんは唇に指をあてる。
「女性にふれずに、なにがだめかを学んでいただくには、これが一番かと思いましたの」
読み進むうちに顔面蒼白になる。モテ自慢のヤツがよく言ってる、ガンガン突くのとか、激しい手マンとか、淫語言わせるのとか、女子ドン引きってことじゃないか。そういうの、全然気が進まないけど、喜ぶならすべきなのかな、とか、実行する前でほんとよかった。
一冊目を読み終えると、ガイアさんが見計らったようにもう一冊を手渡してくれた。
「こちらもどうぞ。もちろん差し上げますから」
表紙をめくると、女性の感じる箇所が列挙されてる。どうさわればより効果的であるかも。
「これ……」
「愛撫が苦手なお客様の場合、自ら高めるために、知っておく必要がありますので」
なんていうか、そのプロ意識に、頭が下がります。
俺が貪るように読んでいると、ガイアさんがお茶とお菓子を出してくれた。
「ありがとうございます」
「こちらこそ。指名料お支払いいただいたのに、なにもしないのは、申し訳ないですもの」
そう言って、あとは文字を追う俺を放っておいてくれた。
ざっと目を通し終えると、ガイアさんがにっこり微笑みかけてくれる。
ふと疑問がわきおこる。風俗って、ある意味、客に夢を売る商売なんだから、これって。
「その、こんなに内情おうかがいしても、大丈夫なんですか?」
「もしまたおいでになったら、もちろん大歓迎いたしますけれど、きっとリカルドさんがこの店の門をくぐることは、もうないと思いますので」
そう言うと、ガイアさんは俺の額にキスを落としてくれた。
「お相手の方とうまくいきますよう、祝福を」
突然のキスに少し驚いたけれど、とても光栄だと思った。
「ありがとうございます。女神からの祝福があれば、きっとうまくいきますね」
「……ご存じでしたの?」
「大地と豊穣の女神ガイア、学校の先生から借りた神話の本に載っていました。あなたにぴったりのお名前だと思います。本日は、大変実り多き時間を、ありがとうございました」
「こちらこそ。本当に、お相手がうらやましいわ」
ガイアさんの最後の笑顔が少しさびしげに見えたのが、気のせいならいいな、と思った。とりあえず、悪友三人と女神のおかげで、心配が少し消えた。ありがたいことだ。
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